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第三話

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 私たちの婚約はつつがなく解消された。
 本人同士が了承しているのが大きな決め手だったらしい。
 しかし意外だったのは、現国王と王妃があっさりと婚約の解消に賛成したことだった。

 私をマティス王子の婚約者にと強く望んだのはあの二人なのだ。

 まぁ、あの王子と婚約が解消出来たなら何も不満は無い。
 辛い王妃教育も終わったし、これで私も学園生活を謳歌することが出来る。

 学園の広場にあるベンチに座ってぐっとのびを下時だった。

「あ、マリア姉さん?」

 後ろを振り返ると、第二王子のロマン・ジュレミーがいた。
 黒目黒髪のマティスと違い、ロマンは流れるような金髪と理知的な青い瞳。そして整った顔はいつも優しげな笑みを浮かべている。
 

 マティスとは違う母親から産まれた異母兄弟だ。
 ロマンとマティスは三ヶ月の差で産まれたため歳は一緒で、学園でも同じ学年なのだが、ロマンは私のことを『姉様』と昔の名残から呼んでいた。

 マティスが王教育をサボり遊んでいる間、ロマンは私が王妃教育をうける隣で一緒に教育を受けていた。
 そのため、付き合いは長く、私達は姉弟のように仲が良かった。

「あれ、ロマンじゃない」

 本当はこんな砕けた口調で王家に接してはいけないのだが、ロマンがお願いしたので私はこの口調で接していた。

「姉さん、聞いたよ。マティス兄さんとの婚約を解消したんだって?」

「ええ、真実の愛を見つけたらしいわよ」

 私は呆れた口調でため息をつく。
 それを聞いていたロマンはいきなり真剣な表情で頭を下げた。

「姉さん、本当にごめんなさい」

「え? ちょっと、ロマン?!」

 突然のことに私は慌てる。
 いくら私達の仲が良くても、王族が貴族にやっていいことではない。

「ロマン! 顔を上げて!」

「本当にごめん、僕が兄さんをちゃんと諌めることができなかったばっかりに……」

「いいのよ、私もちゃんと見ていなかった私も悪いんだし……それより顔を上げて、ね?」

「いえ、僕がしっかり責任を取ります」

「だから別に気にしないで。あなたが罪悪感を感じる必要は無いのよ?」

 私はが罪悪感を感じる必要はないと否定するが、ロマンは頑なにそれを否定する。

「いえ、僕が責任を取ります! お願いします!」

「分かった! 分かったから!」

 しきりに頭を下げているのと、いきなり詰め寄られたことで慌てた私はつい承諾してしまった。
 私が承諾するとロマンはなぜか嬉しそうに頷いた。

「はい! 任せてください! それでは用事ができたのでこれで!」

「え、ええ……」

 ロマンはそれだけ残すと早足でどこかへ向かって行った。

「な、何だったの……」

 残された私はポツリと呟いた。
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