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第十七話 世紀末
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異世界なのに確かに男とばかり話している気はしていた。
少年、運転手、博士、トカゲじいさん、ネコ型ロボット(多分オス)。
なんとなくハーレムの空気がしないのは気になっていた。
この世界に女の子要素を求めていたことは否定出来ないかもしれないが、炊飯器から女の子ボイスがしても、ここまで嬉しくないものだろうか。
「早くぅ!いつまでポケッとしてるんですか。」
炊飯器が何を食べたいのかがわからない。
これが美少女の姿だったらまた違う感情だったんだろう。
「じゅ、充電とかすればいいの?」
「違いますわよ、おバカさんです。 レディの扱いもわからないのですか。」
声は可愛いが、言い方にはトゲがある。
一応俺のロボだ、最初は俺が受け答えしようかと思ったが、トンチンカンな受け答えだったのかもしれない。
もっとトカゲのじいさんに任せれば良かったか。
じいさんの方に目をやると、じいさんも固まっていた。
やはりこのお嬢様態度は異様なようだ。
こちらの視線に気づきおじいさんトカゲが尋ねる
「おぉ。オイル、潤滑油が欲しいのかの?」
「そ、さっさと持ってくるがいいわ。」
「う、うむ」
おじいさんがオイル瓶を手に戻ってくる。
炊飯器の潤滑油はボディ横に外付けする場所があったので、俺が瓶ごとセットする。
「んーーー、スッキリした。」
炊飯器ボディが伸びをするように動く。
一瞬、炊飯器が縦に少し伸びた気がする。
ボディの形を歪ませられるのか? そもそもこいつが動くのを初めて見た。
動くのにオイルが必要、ということだろうか。
炊飯器がおしゃべりを続ける。
「ありがとう。少し落ち着いたのです。」
「でも次はもう少し味の良いオイルを用意しておいてくれるかしら。」
「あとは、こんな殺風景な所じゃなく、もっと綺麗で緑がある場所が必要ね、それと音楽も、そうね、ピアノジャズか何か
突如爆発音と衝撃が後ろから聞こえ、炊飯器の声は遮られた。
積んである箱がバラバラと崩れる。
ネコ型ロボットは崩れた箱も気にせず、入り口側に向かって臨戦態勢に入っていた。
関節からは蒸気が出ていた。
入り口を振り返ると、窓にはヒビが入り、外は土煙で見えない。
「こっちじゃ」
じいさんが店の奥に手引きしている。
炊飯器を持っていこうとしたが止められた。
確かに手で持って逃げるには少し重かった。
炊飯器は固まって動かない。こいつもビビるか怖がるかしているのだろうか。
何も喋らないので、少し可哀想な気もした。
ネコは臨戦態勢のまま、1階に残るようだ。
俺達は入り口とロボ達を見ながらも奥へ向かう。
途中じいさんが操作したのか、店の入口のシャッターが閉まった。
普通のシャッターよりだいぶ分厚そうな作りに見えた。
俺達は奥の裏口から店の外に出て、周りを確認する。店後方には特に誰もいないようだ。
「あいつか」
家の影に隠れて店の正面側を探っていた少年が、何かを確認したようだ。
じいさんと俺も、少年と同じように家の影から土煙を見つめる。
「おめーら初心者だろぉー?! レーダーで丸見えなんだよなぁ!!」
土煙の奥で叫ぶ男の姿がうっすらと確認出来た。
しゃがれたガラガラ声だ。
よく見ると、黒いレザー服を世紀末ヒャッハーのように着こなしているようだ。
徐々に煙がおさまり、姿が見えてきた。
土色の保護色でだいぶ見えにくいが、ロボの姿も男の隣に確認できる。
こいつは、砲台型とか攻撃型とかいうやつがベースのようだ。
機体中央にでかい大砲がついている。
背丈は男の腰ほどだが、威力はこの土煙と衝撃だ、疑いようもない。
ロボの足周りはパンフレットでは貧弱なローラータイヤだったが、キャタピラに換装されていた。
突如、トカゲのじいさんから頭を撫でられる。
「ワシが、来い!と呼んだらすぐに走ってくるのじゃ」
気づくと、じいさんからはパキパキと音がしており、少し蒸気が出ている。
「出来るな」
じいさんの黄色い瞳に見つめられ、俺は頷いた。
よし、とじいさんはうなずき、トカゲの顔で、にっこり笑った。
「待てよじぃさん戦う気かよ!! 腰痛めてんじゃねぇのかよ。」
少年が蒼白な顔でおじいさんトカゲの肩を掴んでいる。
「大丈夫じゃよ。それに店は守らなきゃいかんからなぁ。」
「でも、じいさん一人じゃ!」
少年は少し泣きそうに見えた。
「ちょっと離れておれ」
じいさんのパキパキ音が激しくなり、姿勢が低くなる。もう地面に手をつきそうだ。
ガキンボキン!と音がなり、パキパキ音と蒸気が止まった。
じいさんは、フッ!と息を吐くと、男に向かって何の躊躇もなく歩き出した。
少しして、男がじいさんに気付く。
「やっと出てきやがったか!!! 店ぶっ壊される前にてめぇの指輪を出しやがれ。」
世紀末レザーがじいさんに怒鳴る。
じいさんも指輪をしていたのだろうか。
トカゲの姿に気を取られて気づかなかった。
じいさんトカゲは何も答えずに男の方へ歩みを進める。
緊張のせいか、あるいは腰が痛いのだろうか。先ほどよりぎこちない歩き方をしている。
「てめぇ!それ以上近づくと打つぞ!!」
まだ距離があるので、男は大声で叫び続ける。
じいさんトカゲは歩みを止めない。
「聞こえてねぇのかよ!!ぶっ殺されてぇのか!」
「撃てぇ!!」
男が二本の指でじいさんを指し、男のロボが大砲を発射した。
爆発音と、すごい衝撃があたりを支配する。店の中で感じたよりも大きな爆発に感じる。
俺と少年は姿勢を低くして吹き飛ばされないようにしていた。
最初の砲撃より土煙は少ない。
大砲はじいさんから見て前方右側に着弾したこともなんとか視認できた。
最初のは煙幕効果もあったのだろうか。
「次は当てるぞ!!」
じいさんトカゲは衝撃にたじろぎもせずに、ただ男に向かって歩き続けていた。
何か死を覚悟したまま近づいていくような、不気味な雰囲気を感じる。
男も同じことを思ったのだろうか。
「しゃーねぇ、指輪だけ壊れんなよ! 撃てぇ!!」
衝撃が再度あたりを支配し、顔を腕で衝撃から守った。
次に目を開けた瞬間、歩き続けていたじいさんは見当たらなかった。
土煙は今度もそこまで多くない。
じいさんがいた場所には、砲撃で出来たクレーターだけが残っていた。
少年、運転手、博士、トカゲじいさん、ネコ型ロボット(多分オス)。
なんとなくハーレムの空気がしないのは気になっていた。
この世界に女の子要素を求めていたことは否定出来ないかもしれないが、炊飯器から女の子ボイスがしても、ここまで嬉しくないものだろうか。
「早くぅ!いつまでポケッとしてるんですか。」
炊飯器が何を食べたいのかがわからない。
これが美少女の姿だったらまた違う感情だったんだろう。
「じゅ、充電とかすればいいの?」
「違いますわよ、おバカさんです。 レディの扱いもわからないのですか。」
声は可愛いが、言い方にはトゲがある。
一応俺のロボだ、最初は俺が受け答えしようかと思ったが、トンチンカンな受け答えだったのかもしれない。
もっとトカゲのじいさんに任せれば良かったか。
じいさんの方に目をやると、じいさんも固まっていた。
やはりこのお嬢様態度は異様なようだ。
こちらの視線に気づきおじいさんトカゲが尋ねる
「おぉ。オイル、潤滑油が欲しいのかの?」
「そ、さっさと持ってくるがいいわ。」
「う、うむ」
おじいさんがオイル瓶を手に戻ってくる。
炊飯器の潤滑油はボディ横に外付けする場所があったので、俺が瓶ごとセットする。
「んーーー、スッキリした。」
炊飯器ボディが伸びをするように動く。
一瞬、炊飯器が縦に少し伸びた気がする。
ボディの形を歪ませられるのか? そもそもこいつが動くのを初めて見た。
動くのにオイルが必要、ということだろうか。
炊飯器がおしゃべりを続ける。
「ありがとう。少し落ち着いたのです。」
「でも次はもう少し味の良いオイルを用意しておいてくれるかしら。」
「あとは、こんな殺風景な所じゃなく、もっと綺麗で緑がある場所が必要ね、それと音楽も、そうね、ピアノジャズか何か
突如爆発音と衝撃が後ろから聞こえ、炊飯器の声は遮られた。
積んである箱がバラバラと崩れる。
ネコ型ロボットは崩れた箱も気にせず、入り口側に向かって臨戦態勢に入っていた。
関節からは蒸気が出ていた。
入り口を振り返ると、窓にはヒビが入り、外は土煙で見えない。
「こっちじゃ」
じいさんが店の奥に手引きしている。
炊飯器を持っていこうとしたが止められた。
確かに手で持って逃げるには少し重かった。
炊飯器は固まって動かない。こいつもビビるか怖がるかしているのだろうか。
何も喋らないので、少し可哀想な気もした。
ネコは臨戦態勢のまま、1階に残るようだ。
俺達は入り口とロボ達を見ながらも奥へ向かう。
途中じいさんが操作したのか、店の入口のシャッターが閉まった。
普通のシャッターよりだいぶ分厚そうな作りに見えた。
俺達は奥の裏口から店の外に出て、周りを確認する。店後方には特に誰もいないようだ。
「あいつか」
家の影に隠れて店の正面側を探っていた少年が、何かを確認したようだ。
じいさんと俺も、少年と同じように家の影から土煙を見つめる。
「おめーら初心者だろぉー?! レーダーで丸見えなんだよなぁ!!」
土煙の奥で叫ぶ男の姿がうっすらと確認出来た。
しゃがれたガラガラ声だ。
よく見ると、黒いレザー服を世紀末ヒャッハーのように着こなしているようだ。
徐々に煙がおさまり、姿が見えてきた。
土色の保護色でだいぶ見えにくいが、ロボの姿も男の隣に確認できる。
こいつは、砲台型とか攻撃型とかいうやつがベースのようだ。
機体中央にでかい大砲がついている。
背丈は男の腰ほどだが、威力はこの土煙と衝撃だ、疑いようもない。
ロボの足周りはパンフレットでは貧弱なローラータイヤだったが、キャタピラに換装されていた。
突如、トカゲのじいさんから頭を撫でられる。
「ワシが、来い!と呼んだらすぐに走ってくるのじゃ」
気づくと、じいさんからはパキパキと音がしており、少し蒸気が出ている。
「出来るな」
じいさんの黄色い瞳に見つめられ、俺は頷いた。
よし、とじいさんはうなずき、トカゲの顔で、にっこり笑った。
「待てよじぃさん戦う気かよ!! 腰痛めてんじゃねぇのかよ。」
少年が蒼白な顔でおじいさんトカゲの肩を掴んでいる。
「大丈夫じゃよ。それに店は守らなきゃいかんからなぁ。」
「でも、じいさん一人じゃ!」
少年は少し泣きそうに見えた。
「ちょっと離れておれ」
じいさんのパキパキ音が激しくなり、姿勢が低くなる。もう地面に手をつきそうだ。
ガキンボキン!と音がなり、パキパキ音と蒸気が止まった。
じいさんは、フッ!と息を吐くと、男に向かって何の躊躇もなく歩き出した。
少しして、男がじいさんに気付く。
「やっと出てきやがったか!!! 店ぶっ壊される前にてめぇの指輪を出しやがれ。」
世紀末レザーがじいさんに怒鳴る。
じいさんも指輪をしていたのだろうか。
トカゲの姿に気を取られて気づかなかった。
じいさんトカゲは何も答えずに男の方へ歩みを進める。
緊張のせいか、あるいは腰が痛いのだろうか。先ほどよりぎこちない歩き方をしている。
「てめぇ!それ以上近づくと打つぞ!!」
まだ距離があるので、男は大声で叫び続ける。
じいさんトカゲは歩みを止めない。
「聞こえてねぇのかよ!!ぶっ殺されてぇのか!」
「撃てぇ!!」
男が二本の指でじいさんを指し、男のロボが大砲を発射した。
爆発音と、すごい衝撃があたりを支配する。店の中で感じたよりも大きな爆発に感じる。
俺と少年は姿勢を低くして吹き飛ばされないようにしていた。
最初の砲撃より土煙は少ない。
大砲はじいさんから見て前方右側に着弾したこともなんとか視認できた。
最初のは煙幕効果もあったのだろうか。
「次は当てるぞ!!」
じいさんトカゲは衝撃にたじろぎもせずに、ただ男に向かって歩き続けていた。
何か死を覚悟したまま近づいていくような、不気味な雰囲気を感じる。
男も同じことを思ったのだろうか。
「しゃーねぇ、指輪だけ壊れんなよ! 撃てぇ!!」
衝撃が再度あたりを支配し、顔を腕で衝撃から守った。
次に目を開けた瞬間、歩き続けていたじいさんは見当たらなかった。
土煙は今度もそこまで多くない。
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