13 / 35
第十二話 記憶
しおりを挟む
「王様、ですか。」
「はい、王様を目指してもらいます。もちろん候補として唯一な訳ではなく、即位するためには、他の候補者との競い合いに勝ってもらう必要があります。」
「なるほど」
わかったような、わからないような。
「以上で説明は終わりになります。 何か質問はありますか?」
すぐには思いつかなかった。
知らない話を長く聞きすぎたためか、上手く情報が処理しきれない。
「それでは、選択する機体が決まり次第、あちらの部屋へどうぞ」
シスターは一瞬だけ微笑みを見せたあと、いそいそと事務作業に戻ってしまった。
さて、どうしたものかな。
王様の件はとにかく、何をするかは大体わかった、とは思う。
王様のことは勝ち抜けたあとで考えることとしよう。どうせ一候補でしかない。
パンフレットからは、攻撃型と飛行型、そしてゴメスさんで実績証明済の炊飯器型、その3つが魅力的にうつった。
どんな戦闘かはわかっていないが、攻撃力が高くて困ることはなかろう。
どっしりとした大型ボディにこの中では一番大きい砲台がついているようだ。
何の数字かは読めないが、多分堆積火薬量と砲弾口径が最大、と記載されているようだった。
空を飛べる機体も魅力的だ。
細めの機体に、4つのプロペラがついている。
立派なパンフレットに記載された機体は、説明は読めなくとも、どれも魅力的に見えた。
実物を見たのは、タワー型(カスタマイズ済み)と、炊飯器型だけだ。
本当はちゃんと説明書を読んで決めるべきなんだろう。
ただ、少年が選択し直しも可能といっていたしな。
あまり迷っても仕方ないかもしれない。
よし、これに決めた。
俺は決めました、とシスターに伝えて奥の部屋へ進んだ。
礼拝堂を出ると、木製の長い廊下が続いていた。
俺はその雑巾掛けまでされていそうな綺麗な廊下を、まっすぐと進んだ。
廊下の終わりには、教会らしからぬ重厚な鉄製ドアがついていた。
分かれ道もなかったので、多分ここが目的地なんだろう。
ドア枠や壁までも鉄製になっており、防犯意識の高さが感じられる。
まるで銀行の金庫室からとってきたかのようなドアだ。
ドアノブを回す。
意外なことに鍵はかかっておらず、ドアと鍵が開く音がする。
なんのための厳重警備なのか。
俺はドアを力いっぱいひっぱる、子供の体にとっては、なかなかの重さだ。
壁に足をかけて体重ものせひっぱると、やっとドアが開いた。
開くと同時に中からは冷気と奇妙な音が溢れ出す。
ブァーーーーーー、と、何かの空調のような音が鉄製ドアの中から鳴り続ける。
中は暗い、地下への階段になっているようだが、ここからはあまり見えない。
中に入ってみる。
ひんやりとした空気が身を包み、オレンジ色の光が目についた。
光が、一般的な白熱球ではないことに気づく。
エジソン電球とでも言えばいいのだろうか、妙にレトロな風合いを感じる。
これがこの世界における最先端の電球な訳はないと思うのだが、俺はこの世界で電球を初めて見た気がしていた。
確かに、教会にもリリーの家にも馬車の中にも駅にも電球、夜に光を付けるための製品はなかったのだ。
炊飯器の小さいランプ(ご飯が炊けたことを示すようなランプ)はあったが、何か別枠な気がする。
俺は今すぐ何かを導き出すことは出来なかったが、この電球自体を何か、気になってしまってはいた。
なんだろう。 まぁいい。
おかげで暗い階段は転ばずに降りれるのだから。
もう少し電球の数が多ければ、もっと安全に降りられるんだが。
所々暗い階段には、たまにエジソン電球が配置されている程度で、俺はその中を降りていく。
雰囲気としては、実験室か、秘密基地。
それも完全に悪役サイド、もしくは味方でもマッド寄りのものに見えてしかたなかった。
3階分くらい降りただろうか、なかなかの運動量だが、一層と周りの寒さが強くなる。
階段の終着点には、大きな部屋があった。
中には、3階建以上はありそうな、大きなプラントのような施設があった。
その中心には、パイプオルガンのように巨大な機械が聳え立っている。
その巨大な機械には、鉄製のパイプが何本も複雑に引き込まれており、この部屋の主役がその機械であることを印象付けていた。
空調音はここの部屋からしていたようだ。
この部屋を冷やしているのだろうか。
巨大な機械の近くで白衣の男が何かの作業をしている。
空調音のせいか、こちらには気づいていない。
あの人に指輪のことを話せば、パンフレットにあった機体をもらえるのだろう。
この巨大な機械のある部屋が、今回の旅の目的地であることを確信していた。
「すみません、登録に来たのですが。」
俺は男に近づき、指輪を見せながら声をかけた」
男は俺に気づくと指輪に目を向けてから言った。
「よく来たね。 おぉ、君は左手の薬指か。」
博士の年は30,40代だろうか。
色白で年齢がわからないタイプだ。
博士は真剣な眼差しで、こちらの顔をじっと見据えている。
「記憶を機械に食べられる覚悟は出来たかね?」
完全に初耳である。
「はい、王様を目指してもらいます。もちろん候補として唯一な訳ではなく、即位するためには、他の候補者との競い合いに勝ってもらう必要があります。」
「なるほど」
わかったような、わからないような。
「以上で説明は終わりになります。 何か質問はありますか?」
すぐには思いつかなかった。
知らない話を長く聞きすぎたためか、上手く情報が処理しきれない。
「それでは、選択する機体が決まり次第、あちらの部屋へどうぞ」
シスターは一瞬だけ微笑みを見せたあと、いそいそと事務作業に戻ってしまった。
さて、どうしたものかな。
王様の件はとにかく、何をするかは大体わかった、とは思う。
王様のことは勝ち抜けたあとで考えることとしよう。どうせ一候補でしかない。
パンフレットからは、攻撃型と飛行型、そしてゴメスさんで実績証明済の炊飯器型、その3つが魅力的にうつった。
どんな戦闘かはわかっていないが、攻撃力が高くて困ることはなかろう。
どっしりとした大型ボディにこの中では一番大きい砲台がついているようだ。
何の数字かは読めないが、多分堆積火薬量と砲弾口径が最大、と記載されているようだった。
空を飛べる機体も魅力的だ。
細めの機体に、4つのプロペラがついている。
立派なパンフレットに記載された機体は、説明は読めなくとも、どれも魅力的に見えた。
実物を見たのは、タワー型(カスタマイズ済み)と、炊飯器型だけだ。
本当はちゃんと説明書を読んで決めるべきなんだろう。
ただ、少年が選択し直しも可能といっていたしな。
あまり迷っても仕方ないかもしれない。
よし、これに決めた。
俺は決めました、とシスターに伝えて奥の部屋へ進んだ。
礼拝堂を出ると、木製の長い廊下が続いていた。
俺はその雑巾掛けまでされていそうな綺麗な廊下を、まっすぐと進んだ。
廊下の終わりには、教会らしからぬ重厚な鉄製ドアがついていた。
分かれ道もなかったので、多分ここが目的地なんだろう。
ドア枠や壁までも鉄製になっており、防犯意識の高さが感じられる。
まるで銀行の金庫室からとってきたかのようなドアだ。
ドアノブを回す。
意外なことに鍵はかかっておらず、ドアと鍵が開く音がする。
なんのための厳重警備なのか。
俺はドアを力いっぱいひっぱる、子供の体にとっては、なかなかの重さだ。
壁に足をかけて体重ものせひっぱると、やっとドアが開いた。
開くと同時に中からは冷気と奇妙な音が溢れ出す。
ブァーーーーーー、と、何かの空調のような音が鉄製ドアの中から鳴り続ける。
中は暗い、地下への階段になっているようだが、ここからはあまり見えない。
中に入ってみる。
ひんやりとした空気が身を包み、オレンジ色の光が目についた。
光が、一般的な白熱球ではないことに気づく。
エジソン電球とでも言えばいいのだろうか、妙にレトロな風合いを感じる。
これがこの世界における最先端の電球な訳はないと思うのだが、俺はこの世界で電球を初めて見た気がしていた。
確かに、教会にもリリーの家にも馬車の中にも駅にも電球、夜に光を付けるための製品はなかったのだ。
炊飯器の小さいランプ(ご飯が炊けたことを示すようなランプ)はあったが、何か別枠な気がする。
俺は今すぐ何かを導き出すことは出来なかったが、この電球自体を何か、気になってしまってはいた。
なんだろう。 まぁいい。
おかげで暗い階段は転ばずに降りれるのだから。
もう少し電球の数が多ければ、もっと安全に降りられるんだが。
所々暗い階段には、たまにエジソン電球が配置されている程度で、俺はその中を降りていく。
雰囲気としては、実験室か、秘密基地。
それも完全に悪役サイド、もしくは味方でもマッド寄りのものに見えてしかたなかった。
3階分くらい降りただろうか、なかなかの運動量だが、一層と周りの寒さが強くなる。
階段の終着点には、大きな部屋があった。
中には、3階建以上はありそうな、大きなプラントのような施設があった。
その中心には、パイプオルガンのように巨大な機械が聳え立っている。
その巨大な機械には、鉄製のパイプが何本も複雑に引き込まれており、この部屋の主役がその機械であることを印象付けていた。
空調音はここの部屋からしていたようだ。
この部屋を冷やしているのだろうか。
巨大な機械の近くで白衣の男が何かの作業をしている。
空調音のせいか、こちらには気づいていない。
あの人に指輪のことを話せば、パンフレットにあった機体をもらえるのだろう。
この巨大な機械のある部屋が、今回の旅の目的地であることを確信していた。
「すみません、登録に来たのですが。」
俺は男に近づき、指輪を見せながら声をかけた」
男は俺に気づくと指輪に目を向けてから言った。
「よく来たね。 おぉ、君は左手の薬指か。」
博士の年は30,40代だろうか。
色白で年齢がわからないタイプだ。
博士は真剣な眼差しで、こちらの顔をじっと見据えている。
「記憶を機械に食べられる覚悟は出来たかね?」
完全に初耳である。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
決戦の夜が明ける ~第3堡塁の側壁~
独立国家の作り方
SF
ドグミス国連軍陣地に立て籠もり、全滅の危機にある島民と共に戦おうと、再上陸を果たした陸上自衛隊警備中隊は、条約軍との激戦を戦い抜き、遂には玉砕してしまいます。
今より少し先の未来、第3次世界大戦が終戦しても、世界は統一政府を樹立出来ていません。
南太平洋の小国をめぐり、新世界秩序は、新国連軍とS条約同盟軍との拮抗状態により、4度目の世界大戦を待逃れています。
そんな最中、ドグミス島で警備中隊を率いて戦った、旧陸上自衛隊1等陸尉 三枝啓一の弟、三枝龍二は、兄の志を継ぐべく「国防大学校」と名称が変更されたばかりの旧防衛大学校へと進みます。
しかし、その弟で三枝家三男、陸軍工科学校1学年の三枝昭三は、駆け落ち騒動の中で、共に協力してくれた同期生たちと、駐屯地の一部を占拠し、反乱を起こして徹底抗戦を宣言してしまいます。
龍二達防大学生たちは、そんな状況を打破すべく、駆け落ちの相手の父親、東京第1師団長 上条中将との交渉に挑みますが、関係者全員の軍籍剥奪を賭けた、訓練による決戦を申し出られるのです。
力を持たない学生や生徒達が、大人に対し、一歩に引くことなく戦いを挑んで行きますが、彼らの選択は、正しかったと世論が認めるでしょうか?
是非、ご一読ください。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる