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第4話 『本当に悪い』のは、一体どちらなのでしょう(2)

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 それは、確かに私の言い分への回答だった。

 しかし彼女は、その言葉を貴族達へと聞かせている。
 そう、ちょうど演説か何かの様に。


 それが示す答えは、ただ一つ。
 彼女は今、演説によって周りの空気を操り周りの賛同を刑執行の根拠にしようとしているのだ。

(王妃様にとっては、コレが罪であるかどうかは問題ではないのですね)

 彼女が発するのは刑の執行という結果だけだ。
 そう理解し、そしてだからこそ私は決めた。

(ならば貴女と同じフィールドで、堂々と無罪を勝ち取ってみせます。貴女が軽んじている事の正否を操って)

 それこそが、きっと最も『悪役』らしい勝ち方だ。
 私はそう思ったのだ。

「貴女は大人達が目溢ししている程度の事を論い、周りを『次期王妃』という権力で縛ろうとした。それは『次期王妃』に相応しくない行いです」

 部を弁えなさい。
 彼女の言葉は、少なくとも私にはそう聞こえた。

(つまり王妃様は、私が彼女以上に貴族達への影響力を持つ事を嫌ったのですね。しかしそれは――)

 限りなく、自己中心的な考え方だ。


 その上、彼女の理屈は穴だらけ。

 そして、それでも彼女が「刑を執行できる」と信じて疑わないのは。

(きっと今までの私が、彼女の言いなりでい続けたからなのでしょうね。与えられた理不尽全てを、「相手は尽くすべき王族だから」という理由で)

 しかしそんな足枷は、今やどこにも存在しない。
 だって私の足枷は、もう『悪役』が引きちぎってくれたのだから。


「王妃様のその認識は、やがてこの国を貶めるでしょう」
「なっ、なんて事を……!」

 演説のボリュームで告げられた私の言葉に、王妃様は震える声で怒りを沸々とさせた。

 しかしそんな彼女を前にして、尚。

「だって本当の事ではありませんか」

 私は高慢で余裕の笑みを顔に浮かべた。

「私たちはこの国の次世代を担う存在なのですよ? つまり私たちの品位が、すなわちこの国の未来の品位を作るのです」

 だというのに。

「それを損なっている現状を前に、何一つ指摘をしない。ソレは即ち――」

 そこまで言うとすまし顔から一転、王妃様に強い敵意を向けた。

「国の品位を自らの手で貶めているのと、何ら変わりはありません」

 周りが言わないから、私も言わなくていい。
 本当にそうだろうか?

 誰も言わないが、誰かが言わねばならない。
 そういう性質の物も、確かにあるのではないか。

「言いたいけど言えない、やりたいけどできない。そういう事を率先して行う事こそ、国の上に立つ者の役目なのではないですか?」

 だから私は、外野達(みんな)に問うのだ。

「それらを行わなければ、この国の未来は一体どうなるでしょう? そうして積み上げられた品位の負の結晶に、もしも外国からの使者が気付いたら?」

 両手を広げ、この場の全員を「さぁ考えろ」と追い立てる。


 そして。

「この国を侮る為の材料を、リボン付きで他国に手渡す。そんな愚行は、次期王妃であった当時の私には……とても出来ませんでした」

 そう言葉を締め括ると同時に、私は確かな手応えを感じた。

 私側に、周りの空気が傾いた。
 それはまさに、私の演説スキルが王妃様のソレに勝った事の現れだった。



 王妃様の方を、こっそり確認した。
 するとそこには案の定、仄暗い瞳がある。

 彼女も理解したのだ、自分自身の敗北を。

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