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第3話 言い逃れは出来ません(2)
しおりを挟む場所は、私たち貴族が通う学園の教室。
昼下がりの木漏れ日が差し込む窓際に、5人の令嬢達の姿があった。
部屋の外から中を覗くようなアングル。
そんな映像の中で、彼女達は何やら密談を交わしていた。
「下民のくせに殿下に色目を使って……全く浅ましいったら」
「元が下民だから貴族の気品が皆無なのよ、見苦しい」
「いやぁねぇ? これだから下民は」
「やはり私たちが『教育』をしてあげなきゃぁ」
侮蔑、憤慨、蔑み、嘲笑。
そんな言葉のオンパレードだった。
まるで貴族社会の縮図のようにも見えるが、それでも貴族達がソレに大きく揺れたのは、それに気が付いていないからなのか。
それとも映された面子に驚いたのか。
まぁ確かに彼女達は、普段は素敵な淑女ばかりだ。
裏の顔を見て驚いたところで、別に何の不思議も無い。
「これで少しは自重するでしょう」
「そうかしら? 学習する頭をきちんと持ち合わせていれば良いけれど」
だって、下民ですもの。
そう言って、少女達はまたクスクスと笑い合う。
そして。
「エリーゼ様、これはいかがしますか?」
「あぁソレは……確か死んだ母親から貰ったブローチだとか言ってましたわね」
尋ねた方の手元が、陽の光を反射してきらりを光った。
よく見れば、それはオレンジ色の石がはめ込まれた年代物のブローチだとすぐに判別できた。
画面の中のエリーゼは、ほんの2秒の間だけソレを眺めた。
そして、こう言い捨てる。
「目障りだからさっさと壊してしまいなさい」
「分かりました」
サラリと残酷な事を告げたエリーゼに従い、1人の少女がソレを手の中に握り込み振りかぶる。
その手が振り下ろされると同時に、パキッともパリンッとも聞こえる音が響いた。
そしてそのすぐ後を、令嬢達の笑い声が追いかける。
――映像はここでプツリと途切れた。
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