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二人と一緒に生活すると決めたフィーリアは、お供を連れて街にくり出す。
第16話 生きるための助け合い(3)
しおりを挟む「ありがとう、ございます」
何に対するお礼なのか、自分でもきちんと言葉にできないけれど、無性に感謝したくなった。
零れそうになる涙をこらえてにっこりと微笑んだつもりだったのに、何かが頬を伝って落ちた。
慌てて涙を拭くけれど、驚いたおばさんが慌てて背中に沿えてくれた手の温かさに、更に目にジワリと熱が集まる。
「あー、そいつちょっと涙腺おかしくなってんだよ」
「よく泣くから、放っといていいんじゃない?」
呆れたような声の主は、泣き虫な私の経験者であるディーダとノインだ。
「えっ、そ、そうなのかい?」
「えぇ、大丈夫です……」
グスリと鼻を鳴らしながら目をグリグリと拭いていると「どこかが痛いとかいう訳じゃないんだね? っていうか、そんなに乱暴に擦ったら目の下が腫れちゃうんじゃないかい?」と心配までしてくれる。
優しすぎた。
ドバーッと涙が止まらなくなって、周りは慌てから苦笑に変わり、子供たち二人からは盛大なため息を貰う。
そうだ、いけない。ここには買い物をしに来たのだ。
皆を呆れさせている場合ではないと、私は自分を奮い立たせた。
「う、うぅ……ずびっ、おじさん、リンゴとプラムをください」
「お、おぉ、泣き止んでからでもよかったんだが、まぁいいちょっと待ってろ。オマケしておこうな」
「あ、ありがとうごさいま……ずびっ。それでお二人とも、何か他に食べたい物は――」
「肉」
「肉でしょ」
未だに私の号泣に戸惑う周りとは裏腹に、二人は動じずきっちりと己の主張をしてくる。わかった。それも買いましょう。
えぐえぐと言いながらそれぞれの店で食品を買い集めていった。
店員たちが当たり前のようにディーダとノインに品物を渡すので「持ちますよ?」と呼び止めてディーダに手を伸ばしたら「うっせぇ!」と突っぱねられてしまった。
「もう最初の店で買ったやつ持ってんだろ」
「でももう片方の手は残っていますし」
「そっちは顔拭くのに忙しいだろ!」
「う、それは……」
言い返せない。グッと言葉に詰まっていると、スッと私達の横をすり抜けていくノインが「まぁ、これだけの物をちゃんと買って堂々と街中を持ち歩くとか、早々できる事じゃないしね」通りがかりに言い置いて歩いて行ってしまった。
心なしかウキウキもしているように聞こえるので、まぁ良いのだろうか。
心中で「今日の晩御飯、腕によりを掛けて作ろう」と思いつつ、彼らの好意をありがたく受け取って、私たちは最後の目的地へと進んでいく。
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