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二人と一緒に生活すると決めたフィーリアは、お供を連れて街にくり出す。
第16話 生きるための助け合い(2)
しおりを挟む「煮物にするといいと思うけど、下処理がちょっと面倒でね。家に帰ったらなるべく早く、根元のこの固い部分と上のこの辺までを切り落として、皮をむいて、下茹でをしないといけないんだよ」
「下茹で、ですか?」
「あぁ、アクが強いからね。下茹でしないと、えぐみが出てあんまり美味しくない。せっかくなら美味しく食べないと損だろ?」
「アク……」
アクとは何だろう。
知らない単語に疑問を抱いていると、おそらく顔に出ていたのだろう。今度は驚いた顔をされる。
「あんた、料理するのに灰汁取りも知らないのかい?」
「すっ、すみません……」
条件反射で、謝罪の言葉が口から洩れた。思い出したのだ。「貴女、そのような事も知らないの?」と私を嘲笑うレイチェルさんの顔を。
一体何度、彼女から「何でこんな事も出来ないんだ」「分からないんだ」と言われた事か。
忘れていた怖れが、足元から這い上がってくる。きっとまた、私を、私の存在自体を否定され――。
「不思議な子だねぇ。でもまぁ良いさ。人ってのは、失敗したり教えてもらって少しずつ知っていくものだからね」
あっけらかんとした声に驚いて、彼女を見る。
彼女のカラリとした笑顔に、無性に鼻の奥がツンとした。
何故だろう。日に焼けた肌と赤毛のぽっちゃりとした彼女とは似ても似つかない筈なのに、何故か亡くなったお母様を思い出す。
「私も昔、お母さんから色々と教えてもらったものさ。誰もが一人じゃ生きちゃいないんだ。こういうのは助け合いだからね。あんたもいつか、誰かに教えてあげな。それでトントンさ」
そうだ。私が何か失敗をしてちょっとふさぎ込む度に「次頑張ればいいんだよ」と背中をトントンと優しく叩いてくれていたお母様は、いつだって私の味方だった。
責められなかった事に安堵して? それとも、他者の無知が許容できる彼女の心が温かくて?
分からない。両方かもしれないし。もっと他の感情なのかもしれない。自分の心が分からない。
ただ何故か、ここに居ていいのだと言ってもらえたような、私という人間を肯定して貰えたような気持ちをまた一つ貰えたような気分になった。
そう思うと、ダメだった。
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