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第二章:初めての社交お茶会に出向く。

第19話 新たな『武器』を見つけて(1)

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 セシリアの声に、その場に居合わせた全ての視線が一斉に動いた。
 指し示すその先は、勿論セシリアだ。

 しかし、大人達の視線が突き刺さって尚、セシリアは全く物怖じした様子がない。
 それどころか母譲りの完全武装の微笑みを浮かべ、その言葉を向けた相手をただ見つめる。

「っ! お前、俺の言葉を途中で遮るなんて……」

 体をワナワナと震わせながら唸るようにそう言うと、彼は「無礼だろうっ!」と高い声を上げた。

 苛立たしげなその声には「折角謝罪をしてやろうとしたのに、その言葉を遮られた」という不満がありありと浮かんでいる。

 しかしそんな声にも一層キツくなった睨みにも、セシリアは全く怯まない。
 それどころか、寧ろわざわざ煽るような言葉を選んで口を開く。

「だってクラウン様、謝罪がひどくお嫌そうだったので」

 こちらは気を使ったのですよ。
 セシリアはそう言うと、ここで一度言葉を切った。

 そして、頬に手を当て軽く首を傾げ。
 限りなく100%に近い純度を装った瞳で相手の目を真っ直ぐに見つめながら、柔らかい声色でこんな言葉を発する。

「それに、『中身の無い謝罪』に一体何の意味があるというのでしょう」

 その声に、クラウンは思わずグッと押し黙った。
 そして、真っ直ぐ突きつけられたその視線に、彼はカァッと顔を赤らめてもいた。
 つい今し方腹を立て声を荒げたとは思えないほどの変わり様だ。



 愛想の良い笑顔と、傾げられた首。
 そして、演じ切った瞳と声色。
 それら全てが『計算された美』だった。

 つまり、彼女がしたのは『美による発言のゴリ押し』である。


 社交パーティーで自分の持つ『武器』の存在に気付いた時から、セシリアは「いつかこの手が使えるのではないか」と思っていた。

 まさかこんなに早く使うことになるとは思わなかったが、どうやら効果はてきめんの様である。

(良かった、これで『無駄な時間』を短縮できる)

 嫌々される謝罪など、無意味どころか最早ただの時間の無駄でしかない。

 そんな言葉に時間を割く暇があるのなら、一刻も早くお茶会に出たい。
 セシリアがそう思うのは、何も不思議な事ではない。 

(仕草1つで話を強制進行させられるのなら安いものよ)

 これは、最低限の労力で最良のパフォーマンスを発揮する。
 その為の効率的な手段を、セシリアが新発見した瞬間だった。



 一方、押し黙ってしまったクラウンに内心で慌てたのはレレナだ。

 侯爵や夫に「何故セシリアの言に意見しないのか」と抗議の視線を向ければ、大の大人が2人してセシリアの『武器』の被害を受けている。

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