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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第12話 横暴と意趣返し(1)
しおりを挟む数秒間、セシリアとレレナは互いに見つめ合っていた。
しかしそのこう着状態は、レレナのクスリという笑みに崩される。
その笑みと共に、彼女はセシリアから視線を外した。
そしてクレアリンゼを見据えて、こう言う。
「クレアリンゼ様はやはり子育てが上手なのね。流石だわ」
「そんな……私はただ、子供達を見守ってきただけですよ」
暗に「別に私は何もしていないですけれど」と答えたクレアリンゼは、今や笑顔で完全武装している。
その警戒様を見るだけでも、クレアリンゼにとって彼女がどれだけ気の抜けない相手かという事が分かるというものだ。
そして、何よりも。
(表情から心の内が全く読めない……。でも、レレナ様が私が考えうる限りの最善を行った事だけは確かだ)
表情からその心情は読めなかったが、今し方クレアリンぜに対して彼女が使った言葉、そしてそれに対するクレアリンゼの警戒様。
それらを見る限り、彼女が『罠』の存在に気が付いた事は間違いない。
そしてその場合の対処法として最も正しいのは、直接的に『罠』についての指摘や苦言を避け、勝「『罠』には気付いたぞ」と仄めかす事でこちらを牽制する事である。
彼女はそれを、見事に成したのだ。
結局セシリアは、彼女の事を警戒すべきだと認識できはしたが、それ以上の土産を持たせてはもらえなかった。
貰えたのは、精々参加賞といった所だろう。
一方、そんな女達の心理戦があった事に果たして気付いているのだろうか。
ヴォルド公爵が口を開く。
「さて。お茶会ももう始まるし、早々に本題に入ろう」
それは、女達の戦いの直後にはあまりに似合わない軽快さの声だった。
それを合図にする様に、セシリアはヴォルド公爵夫人に向けていた視線を公爵の方へと戻した。
彼の言う所の『本題』。
「今はそちらの方が大切だ」というのはそもそもソレを目的にこの社交に参加しているセシリアには、今更である。
レレナが警戒対象だと分かった今、揚げ足を取られる事の無い様に、細心の注意が必要だ。
他の事に脳内リソースを割いている暇は無い。
「君達をお茶会会場では無く先にこちらに通したのは、事前に話を通しておきたかったからだ」
彼はそう言うと、クレアリンゼを見据えてニヤリと笑う。
「幾らどちらの派閥にも所属していないとはいえ、まさか君も私達に敵対したい訳じゃ無いのだろう? ならば今日はきっと、君にとって非常に良い機会になる」
そう前置きをした上での、この言葉だ。
「……君も社交界で今どんな噂が立っているかは知っているだろう?」
これで察しろ。
それは、まるでそう言っているかのような言動だった。
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