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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第11話 仕掛けてきたレレナ(2)
しおりを挟むレレナは微笑みを以ってセシリアを見据えていた。
しかしその目の奥には相手の真意を見定めんとする気配が、僅かにだが確かに揺らめいている。
その事に気が付いて。
(――やはり流石は『革新派』を取り纏めるヴォルド公爵家の夫人)
人知れずキュッと両手を握り締めながら、セシリアはそう独り言ちた。
公爵本人はまるで「自分が全てを操っている」という顔をしているが、その実、派閥運営においては夫人に助けられている所が大きい。
公爵が派閥の顔、そして夫人が人心の掌握や新規派閥参入者の取り纏めなどの裏方を一手に担う。
そうやって二人三脚で運営しているのが、『革新派』という派閥である。
そしてそんな彼女だからこそ、周りからはかなり高い評価を受け、影響力が強い人物として知られている。
例えば、相手に対する交渉能力だけを比べれば、クレアリンゼの方が一歩先んじる。
それが、今のセシリアの中での評価だ。
しかし2人は『力』の行使に対する考え方に、大きな違いがある。
クレアリンゼは社交に、『爵位』によるゴリ押しを絶対に使わない。
それは彼女が持つ一種の矜持の様な物だ。
そして、他貴族達を纏める様な重責を背負う必要が無いクレアリンゼは、領地と領民の利益という『最低限』が守れば良い。
領地経営の手腕はワルターが、社交の手腕はクレアリンゼがそれぞれに優れている。
互いに得意分野へと力を注げば、領地と領民の利益を守るには十分だ。
だから『爵位』でゴリ押しをする等という無理をする必要性を感じない。
その為、彼女の周りには彼女個人を慕う者が多く集まる。
そしてそのお陰で『爵位』を使うまでも無く社交が上手くいく。
その好循環の中に、クレアリンゼは居るのだ。
対してレレナは、派閥筆頭の家に嫁いだ身だ。
派閥の維持の為なら、使える力は全て行使しなければならないし、そうすべきだ。
それが、レレナの信条である。
だからこそ、時と場合によっては社交に『爵位』を振りかざす事も厭わない。
だから、社交場に対する影響値を総合的に考えれば。
(レレナ様はお母様を超える影響力を持ってる。それどころか、社交における今の彼女は王族に匹敵する程の力さえある可能性が高い)
それがセシリアの、彼女に対する事前評価だった。
そしてこうして対峙してみると、その評価が決してセシリアの思い違いなどでは無かったという事がよく分かる。
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