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第二章:初めての社交お茶会に出向く。

第10話 流石に上手い(1)

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 しかしそんな風に悠長に呆れていられるのも、その時までだった。

 ふと隣をチラ見したセシリアは、次の瞬間全身の汗腺からドッと汗が吹き出てくるのを感じ取った。

(元々燃えていた火に余計な油を注いだせいで、お母様の怒りが……)

 今までも母のその様子から、セシリアは明らかな感情の燻りを感じ取っていた。
 しかしこれは、先ほどまでの比じゃない。

 クレアリンゼの心中は今正に、轟々と燃え滾っている。

 彼女の持つ鉄壁の『社交の仮面』のお陰で、辛うじて相手にはソレを悟られずに済んでいる。

 そんな状態だ。


 しかし。

(このままでは、お母様の『笑顔のブリザード』が相手に降り注ぐのも時間の問題なんじゃない……?)

 もしもそうなれば、本気で怒ったクレアリンゼが相手に手加減などする筈がない。

 そして彼女の怒りの分だけ相手を貶める方法を、セシリアは現時点で2つほど思い浮かんでいる。

 セシリアよりもよほど『貴族相手』に慣れており長けている彼女の事だ。
 もしかしたらそれよりも多くの、より効果的な方法を思い付いているかもしれない。

 そうなれば、待つのは間違いなく『大惨事』である。

(それが『面倒』に繋がる可能性がある以上、できれば避けたいけど……)

 そうは思いつつも、セシリアには彼女の感情もこの状況も、どうにかする事はできない。


 一方、ヴォルド公爵はというと。

「いやいや、まだまだ若いのだ。クレアリンゼ『嬢』と呼ぶ事に問題は無いだろう」

 相手方の心情などまるで理解していない様だ。
 だからこそ、彼は更に油をドボドボと注ぐ様な真似ができる。

「そもそも従兄弟殿がクレアリンゼ嬢の事を気に入ったというから、私は仕方が無く身を引いたのだぞ? あちらで娶らないのなら私が貰ってやっても――」

 その言葉を聞いて、セシリアは思わず頭を抱えたい衝動に駆られた。

(折角暗喩に留めていた自分の心の内を、まさかここで吐き出すなんて……)

 彼は馬鹿なのだろうか。

 10歳の少女が、大の大人を捕まえてそんな風に独り言ちる。

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