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第二章:初めての社交お茶会に出向く。
第8話 ご機嫌ななめ、どころではない(2)
しおりを挟むもしもこの珍しい待遇に『接待』という側面があったなら、きっと客人が部屋に入ってから主人を呼びに行くような事はしない。
私たちよりも早くこの部屋に居るか、私たちが屋敷に到着したのと同時に使用人が伝令に走るかの二択だっただろう。
しかし執事は今正に、当主を呼びに行っている。
この現状が、一体何を意味するのかというと。
「……はぁ」
セシリアはため息を隠さなかった。
その怒り様を見るに、彼女はおそらく此処に通された瞬間から、否、下手をするとその道中から、相手の本音を知っていたのかもしれない。
(まぁ理由が分かった所で、結局はどうにもならないんだけど)
完全に損ねたクレアリンゼの機嫌をどうにかする為には、少なくとも現状の変化が必要だ。
何故なら今のこの現状が、彼女の不機嫌の元凶なのだから。
だから『疑問』という名の好奇心をすっかり満たしたセシリアは、満足感と共にその議題を潔く放り捨て「それにしても」と、冷えた瞳で室内を見回した。
この応接室に置かれた、数々の調度品。
それらの存在に、セシリアは激しい胸焼けを覚えていた。
理由は、2つ。
まず。
(すごい圧迫感)
そう思ってしまう程に、この部屋の調度品は数が多い。
応接室に調度品をより多く飾る事は、自分の権威をの誇示に繋がる。
だから貴族界では、より多くの調度品を飾る事が一種のステータスになっているのだ。
しかし、何事にも限度というものは存在する。
まるで敷き詰めるかのように所狭しと飾されたそれらは、正直限度を大きく超えている。
(これじゃぁもう、展示を通り越してただの保管だよ)
そんな感想を抱くくらいに、この部屋の状態は悪い。
その上。
(色も酷いし)
この部屋に置かれている調度品は、そのほとんどが金、金、金。
しかも南の窓から差し込んでくる日差しが調度品達に反射して、輝く金が目に痛い。
調度品は、その家の裕福さを示す為の物だ。
そして富とは、一種の武器である。
例えば商談や社交などで相手の優位に立つ為には、一番手っ取り早い手だろう。
しかし限度を知らないそういう主張は、時に相手を不快にさせる。
応接室とは、本来は客人を迎える為の部屋だ。
それなのにこんなにも客にとって居心地が悪いというのは問題だろう。
相手に冨を示すにしても、高価な物を沢山集めて片っ端から並べれば良い、というものではないのだ。
(もし何も考えずに並べた結果がこれなんだったら、貴族としての品性が足りない。そしてもし考えた末でコレなんだったら、圧倒的にセンスが足りない)
どちらにしても、セシリア的には論外である。
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