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第11話 一体何を吹き込まれたのやら。(2)
しおりを挟む私のその声は、周りに大きな波紋を呼んだ。
「えっ、『籍は無くとも活動には従事できる』って一体どういう事だ?」
「つまり、名前は残らないタダ働きって事だろう?」
「それはちょっと非常識ではありません?」
「だな。エリザベート様を舐めてる証拠だ」
今までよりも少し声が大きかった為の、今のは誰が言ったのか特定できた。
言ったのは、全て生徒会活動を通じて知り合った方々だ。
(ちょっと認めてもらえた気分)
なんて舞い上がってしまうのは仕方がない事だろう。
彼らは助力を乞うたり調整相手だった者の中でも、特に手際の良かった方々だ。
そんな方々にこんな風に庇われて、嬉しくない筈が無い。
そしてそんな声のおかげもあり、周りの空気は「殿下の負け」へと傾きつつある。
それを彼も感じ取ったからか、彼はここから私へのネガティブキャンペーンへと話の舵を切り直した。
「聞いているぞ! お前、周りから俺を落とす為に色々な工作をしていたらしいな!」
「……工作、ですか?」
何の事か、いまいちピンと来ない。
そう思って尋ねれば、殿下がフンッと鼻を鳴らした。
「生徒会メンバーに気に入られようと度々話しかけ、時には差し入れなどもしていたらしいではないか!」
「それも婚約者としての義務に従っただけの事です。嫌でも一応はコミュニケーションを取る努力をすべきた、と思いまして」
本当はやりたく無かったという事は、もう隠すつもりがない。
それは私の中の確かな事実だし、今はもうそれから解放された身だ。
今後変に付き纏われたり頼りにされたりする事がない様に、きちんとここで突き放しておかねばならない。
「それに、差し入れは私がお菓子などを持参した時にたまたま室内にいらっしゃった方にあげただけですよ」
少なくとも、私が生徒会の誰かのためにラッピングして差し入れをした過去は無い。
ならば、彼が言うその差し入れは、きっとその事なのだろう。
実際には差し入れではなく、ただのお裾分けではあるが。
「っ! ど、どちらにしてもだ! 俺ではなく敢えて周りだけに振る舞うその行動が工作だと言っているのだ!」
「それは殿下、殿下が滅多に生徒会室へ来られないからでしょう」
殿下がいらっしゃれば、同じ様にお裾分けしましたよ。
私がそう言葉を続ければ、どこからともなく「ブッフォーッ!」と吹き出す声がした。
チラリと周りを見てみると、プルプルと笑いに耐えている姿がチラホラと。
そんなに面白かったですかね?
殿下のサボりが殿下の墓穴で露呈した事が。
まぁ私にとってはただの事実でしか無いので、特に笑えはしないですけど。
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