上 下
15 / 21

第11話 一体何を吹き込まれたのやら。(2)

しおりを挟む


 私のその声は、周りに大きな波紋を呼んだ。

「えっ、『籍は無くとも活動には従事できる』って一体どういう事だ?」
「つまり、名前は残らないタダ働きって事だろう?」
「それはちょっと非常識ではありません?」
「だな。エリザベート様を舐めてる証拠だ」

 今までよりも少し声が大きかった為の、今のは誰が言ったのか特定できた。
 言ったのは、全て生徒会活動を通じて知り合った方々だ。

(ちょっと認めてもらえた気分)

 なんて舞い上がってしまうのは仕方がない事だろう。
 彼らは助力を乞うたり調整相手だった者の中でも、特に手際の良かった方々だ。
 そんな方々にこんな風に庇われて、嬉しくない筈が無い。


 そしてそんな声のおかげもあり、周りの空気は「殿下の負け」へと傾きつつある。
 それを彼も感じ取ったからか、彼はここから私へのネガティブキャンペーンへと話の舵を切り直した。

「聞いているぞ! お前、周りから俺を落とす為に色々な工作をしていたらしいな!」
「……工作、ですか?」

 何の事か、いまいちピンと来ない。
 そう思って尋ねれば、殿下がフンッと鼻を鳴らした。

「生徒会メンバーに気に入られようと度々話しかけ、時には差し入れなどもしていたらしいではないか!」
「それも婚約者としての義務に従っただけの事です。嫌でも一応はコミュニケーションを取る努力をすべきた、と思いまして」

 本当はやりたく無かったという事は、もう隠すつもりがない。
 それは私の中の確かな事実だし、今はもうそれから解放された身だ。
 今後変に付き纏われたり頼りにされたりする事がない様に、きちんとここで突き放しておかねばならない。

「それに、差し入れは私がお菓子などを持参した時にたまたま室内にいらっしゃった方にあげただけですよ」

 少なくとも、私が生徒会の誰かのためにラッピングして差し入れをした過去は無い。
 ならば、彼が言うその差し入れは、きっとその事なのだろう。
 実際には差し入れではなく、ただのお裾分けではあるが。

「っ! ど、どちらにしてもだ! 俺ではなく敢えて周りだけに振る舞うその行動が工作だと言っているのだ!」
「それは殿下、殿下が滅多に生徒会室へ来られないからでしょう」

 殿下がいらっしゃれば、同じ様にお裾分けしましたよ。
 私がそう言葉を続ければ、どこからともなく「ブッフォーッ!」と吹き出す声がした。
 チラリと周りを見てみると、プルプルと笑いに耐えている姿がチラホラと。
 
 そんなに面白かったですかね?
 殿下のサボりが殿下の墓穴で露呈した事が。

 まぁ私にとってはただの事実でしか無いので、特に笑えはしないですけど。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください

カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」 真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。 エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。 家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。 彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。 オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。

嘘はあなたから教わりました

菜花
ファンタジー
公爵令嬢オリガは王太子ネストルの婚約者だった。だがノンナという令嬢が現れてから全てが変わった。平気で嘘をつかれ、約束を破られ、オリガは恋心を失った。カクヨム様でも公開中。

何故恋愛結婚だけが幸せだと思うのか理解できませんわ

章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のファラーシャは男爵家庶子のラーケサに婚約者カティーブとの婚約を解消するように迫られる。 理由はカティーブとラーケサは愛し合っており、愛し合っている二人が結ばれるのは当然で、カティーブとラーケサが結婚しラーケサが侯爵夫人となるのが正しいことだからとのこと。 しかし、ファラーシャにはその主張が全く理解できなかった。ついでにカティーブもラーケサの主張が理解できなかった。 結婚とは一種の事業であると考える高位貴族と、結婚は恋愛の終着点と考える平民との認識の相違のお話。 拙作『法律の多い魔導王国』と同じカヌーン魔導王国の話。法律関係何でもアリなカヌーン王国便利で使い勝手がいい(笑)。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿、自サイトにも掲載。

婚約破棄していただきます

章槻雅希
ファンタジー
貴族たちの通う王立学院の模擬夜会(授業の一環)で第二王子ザームエルは婚約破棄を宣言する。それを婚約者であるトルデリーゼは嬉々として受け入れた。10年に及ぶ一族の計画が実を結んだのだ。 『小説家になろう』・『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。

ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後

オレンジ方解石
ファンタジー
 異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。  ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。  

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

悪役令嬢ですか?……フフフ♪わたくし、そんなモノではございませんわ(笑)

ラララキヲ
ファンタジー
 学園の卒業パーティーで王太子は男爵令嬢と側近たちを引き連れて自分の婚約者を睨みつける。 「悪役令嬢 ルカリファス・ゴルデゥーサ。  私は貴様との婚約破棄をここに宣言する!」 「……フフフ」  王太子たちが愛するヒロインに対峙するのは悪役令嬢に決まっている!  しかし、相手は本当に『悪役』令嬢なんですか……?  ルカリファスは楽しそうに笑う。 ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

婚約破棄?それならこの国を返して頂きます

Ruhuna
ファンタジー
大陸の西側に位置するアルティマ王国 500年の時を経てその国は元の国へと返り咲くために時が動き出すーーー 根暗公爵の娘と、笑われていたマーガレット・ウィンザーは婚約者であるナラード・アルティマから婚約破棄されたことで反撃を開始した

処理中です...