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第6話 ……うん? どういう事ですか?(2)

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(この茶葉、保存状態がとても悪い)

 この執事が淹れた紅茶は、ここで私も数度飲んだ事がある。
 別に腕が悪い訳ではない。
 尚且つ、今回私のだけにそういうイタズラをした可能性も無い。
 私のと同じポットで、案内の彼の紅茶も一緒に淹れていた。
 私のだけ不味く入れるのは、物理的に不可能だ。

 となれば、この場の全員の茶葉がおそらくコレなのだろう。
 
(この部屋に持ってきて以降は、茶葉の管理は使用人職の方が行う。ならばここに持ち込まれて以降の劣化は限りなく最小限だと言っていい)

 彼らはみんな、プロである。
 そんな彼らが初歩中の初歩とも言うべき茶葉の扱いが出来ないとは思えない。

 ならば答えは一つしかない。

(元々この状態だった茶葉を持ってきたのね……)

 そしてそれを持ってきたのはリズリーだ。
 今正に褒めそやされて嬉しそうにしていたのだから、間違いはない。

 ちなみに周りの人達は。

「うん、美味しいよリズリー」
「嬉しいです。私、この紅茶が1番好きなんですよ!」

 その反応に、私はまた内心で驚愕した。

 殿下が、味の違いに全く気が付いていない。
 なまじ嘘では無いと分かるから、一層驚愕も深い。

(今までずっと、良質な物だけを口にしてきてる筈なのに)

 これに気が付かないとか……そうか、殿下の舌はバカだったのか。
 1人そんな事を思う。
 
 
 一方、殿下の言葉に喜ぶ彼女は「好きなもの、殿下とお揃いですねっ!」と言ってはしゃいでいる。
 そのはしゃぎ様は、どう見ても伯爵令嬢には見えない。

 しかし、それもその筈。
 つい2週間前まで彼女は男爵令嬢で、その上8ヶ月前にはまだ平民だったのだ。
 ある程度のチグハグさが出るのは仕方がない。
 しかし、努力の跡が全く見えないのは流石にいただけない。


 私は別に元平民だとか下級貴族だとかで、差別する気は全く無い。
 ただ、各家には家格に沿って相応の振る舞いが求められ、彼女のソレは伯爵家には達していない。
 そう思っているだけである。



 マナーとして「出されたものには、一口だけでも口を付ける」という物がある。
 しかし出されたお菓子のクッキーは、見るからに水分奪いそうな出来だった。
 水分の補給源が残念な今、選択すべきは即時撤退だ。

 どうやらそんなマナーを気にする暇は、彼女達には無いようでもある。
 この不幸中の幸いを是非とも神に感謝したい。
 もしかしたら、両親の祈りはここに効果を発揮したのかもしれなかった。



 さて。
 しかしどうしたものか。
 元婚約者の前で幸せを満開に撒き散らす彼女達のせいで、全く本題に行く気配が無い。

 お茶が不味くてお菓子も食べられなくて、その上楽しくないのだから、早くお暇したいものだ。

 故に、仕方が無く私が尋ねる。

「それで殿下、お呼びだったとお聞きしましたが」
「あぁ、生徒会の仕事の事だ。早く進めてもらわねば困る」

 ……うん?
 どういう事だろう。

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