もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

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第6話 ……うん? どういう事ですか?(1)

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 向かった先は、思った通り生徒会室だった。

 この学校には『生徒会』という自治組織がある。
 主に年に数度ある校内行事の、裏方仕事を主に行う。

 一見地味な仕事だが、その分生徒達への統率力が試される。
 その為生徒会には、主に将来国を背負って立つ者達が入る。
 それこそ王子や王女、そしてその側近などだ。


 実は私も、先日まで『王子の婚約者』として生徒会に席を置いていた。
 しかしそれは、例の一件を経て初めての登校日の朝に、教員室で籍を抜いてもらっている。

 その上、その教師には殿下達にその通達をお願いしている。
 きちんと直接通達してくれたかは、あとで教師に確認したので間違いない。

 つまり、今や生徒会も私にとって何の関係もない場所なのである。


 見慣れた扉の前で止まり、『殿下の右腕』がしっかりと扉をノックする。

「エリザベート嬢を連れてきました」
「入れ」

 そんなやり取りの後に扉が開かれた。
 と同時に、甘い香りが鼻腔を掠める。


 室内に居たのは、これまた見知った顔だった。

 殿下に、殿下の近衛騎士隊長の息子、殿下の腰巾着の侯爵家子息。
 これに私の道案内をした宰相の第三子息が加わった5人、否、今は私を抜いた4人が、生徒会のメンバーだ。

 しかし、この部屋にはもう1人。

「エリザベート様、やっといらしたのですね。私少し待ちくたびれちゃった」

 そう言って楽しげに笑う殿下の愛しの人・リズリーが、何故かこの場所に居る。

「早く座れ。気が利くリズリーが持ってきてくれた紅茶と菓子を、仕方がないからお前にもやろう」

 『気が利く』という所を殿下が強調した所で、室内が小さな笑いに包まれた。

 笑ったのは、勿論私以外の全員だ。
 リズリーに至っては「えー? 私はただ当然の事をしただけですよぅ」などと、形だけの謙遜を嬉しそうにしていたりする。

(別に対抗する気はないけれど……私だってそのくらいは用意してたわ。そしてそれを、貴方達は何も気にせずお礼も言わずに飲み食いしてたじゃない)

 これはただの事実である。
 つまり彼女がしている事は、何のことはない普通の事だ。

 しかしまぁ、彼らが楽しそうなので「まぁ良いか」と放っておく事にする。
 そして代わりに、殿下付きの執事が淹れてくれたソレを申し訳程度に口に付けて、内心でだけ思わず顔を顰めてしまった。

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