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第3話 ゲロ甘国王、だったらしい。(1)

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 例の騒動の翌日。
 夕食の席で、両親から「陛下と話は付けてきた」と聞かされた。

 まさかの電撃解決だが、面倒な事は早めに終わらせるに限る。
 私は素直に、驚きつつもお礼を述べた。

「案の定、昨日の一騒動は周りの良い話の種になっていた」

 呆れ声で、お父様が言う。

 少し疲労も混じっているので、少なからず気疲れしてしまったのだろう。
 幾ら自分達に非が無い事を知っていても、人の視線を受け続ける事はそれなりの疲労を伴うのである。

「私でさえあれだったのだ、お前はもっと疲れるだろう。社交場への出席は当分控えなさい」
「分かりました。というか、願ってもない事です。そもそも社交場には『王族の婚約者の義務』として参加していたに過ぎませんから」

 そんな私の言葉に対し、お母様が「そうよね」と相槌を打ってくれる。

「婚約以前も公爵家として度々社交場には参加していたけど、婚約してからは特に頑張っていたもの」

 王族教育としてだけではなく、それ以外にも沢山の場に参加し、その上で自分主催のお茶会も今まで多く開催してきた。
 しかしそれらは、別に好きでしていた事ではないのだ。
 その為「休め」と言われて安堵するのは、当たり前の事だろう。

「それで、旦那様? 今回の破棄について、結局どの程度絞れたのですか?」

 そう尋ねたのはお母様だ。

(まぁ確かにこちらは大した落ち度も無く一方的な破棄を通達されたのですから、何かしらの譲歩をもらう事は適切でしょうけど)

 そもそもこの婚約は、王妃様たってのご希望……もとい半ば強引なゴリ押しから始まったのだから尚更だ。

 つまり私は、強引に婚約させられた上に破棄されたのだ。
 故意的に私の経歴に傷をつける様なその行為に、両親が怒らない筈が無い。
 その上に『公爵家としてのメンツを潰された』という言い訳さえ出来るのだから、こちらが優位で無い筈が無い。

(これだけ揃っていれば、絞りたいだけ絞れたのではないかしら)

 なんて想像するのは簡単だった――のだが。

「それがなぁー……アレが何やら面倒な事を言っているらしい」
「面倒な事、ですか?」

 いまいち思い当たらなくてそんな風に聞き返すと、お父様が苦笑する。

「私が陛下と破棄について話していたら、一体どこから聞きつけたのか。殿下がいらっしゃってだな、『最愛の人を傷付けられたのだから、破棄は正当なものである。自分の方に落ち度は無い』と主張したのだ」
「その言い方だと、殿下が乱入してきた様に聞こえますが……」
「その通りだ」

 余程面倒だったのだろう。
 先程感じ取ったお父様の疲れの理由には、もしかするとこの件も含まれているのかもしれない。

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