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第2話 毒舌な私の両親。

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「という訳で、先ほど婚約破棄を了承して参りました」

 あの後すぐに帰宅して、事の一部始終を両親へと話して聞かせた。
 すると母はティーカップを傾けてから「あぁそうなのね」とため息を吐いた。

「王妃様から『どうしても』と言われたから殿下の婚約者にる事を了承したのだけど……そう、やっぱりアレはダメでしたか」
「王族の手前表立っては言わなかったが、アレの態度は最初から悪かったからな」

 大人になれば改善するかと思っていたのだが。
 そう溢したお父様の言葉で、少しだけ思い出す。
 

 殿下とは婚約が決まった後に初対面を果たしたのだが、最初から何かと突っかかってくる様な人間だった。
 どうやらその前から事ある毎に王妃様がまるで自慢するかの様に私の話をしていたらしい。

 早い話が凄い凄いと母親に言われる私に、殿下はヤキモチと対抗意識を燃やしたという事なのだが、正直言って――迷惑だった。

 だってそうだろう。
 勝手に競ってきては、毎回負けて八つ当たりされるのだ。
 何一つとして良い事が無い。

 しかもここ1、2年は「一々鼻にかけやがって」と言われる始末。
 普通にしているだけなのにそう言われるのだから困る。

「大体アレは、自分の影響力が分かっていない」

 テーブルに頬杖を突いてまるで不貞腐れた様なそう言ったお父様に私は思わず苦笑いになる。


 確かに殿下は、周りが全く見えていない。
 自分の言葉が周りへの印象操作になってしまっていた事になど、全く思い至っていないのだろう。

「婚約者に立ってしまった良くない評判は、自分にとってもマイナスになるのいうのに」
「現状でさえ見えていないのだから、未来が想像できる筈が無いわよね」

 婚姻後の個人の社交的評判は、どうしても嫁ぎ先の評価に集約される。
 簡単に言えば「あの家はあんな方を妻にして……」という感じで嘲笑われる。
 つまり今までの殿下の言動は、自ら墓穴を取っているも同然だったという訳だ。

「それでエリザベート、この婚約は正式に破棄してしまって良いのね?」
「はい、構いません」

 あまりの速さで即答したからか、お父様が吹き出した。
 思わず首を傾げると、クツクツと笑いながら「いやまぁ何だ、分かったよ」と答えてくれた。

 何だか良く分からないが、取り敢えず「先方と正式な婚約破棄は私がしておこう」という事なので、お言葉に甘えてお父様にお願いする事にした。



 後で使用人から聞いた話だが、私が部屋を出た後、お父様とお母様はどうやらこんな会話をしていたらしい。

「……くくっ! それにしても『歯牙にも掛けない』とは正にこの事だな。アレ如きの為に我が娘が心を痛めずに済んだ事は、うちとしては喜ばしいが」

「あれだけ社会的に有望な立場にあって、それでも何一つとして未練を持たせられないのだから、きっと男の甲斐性が全く無いんだわ」

「いやまぁうちの娘に限って金や権力に目が眩むような事は無いと思うが……まぁ贈り物が花一辺倒な辺りがなぁ」

「そうでしょう?」

 それはそれは楽しそうだった。
 そんな風にあの場にいたメイドが後で耳打ちしてくれた。
 
 その話を聞いて、私は思わず「何ともお父様とお母様らしい辛辣さだな」なんて思った。
 そして私は、パーティー前に読みかけていた本の続きをゆっくりと開き、黙々と読み進めるのだった。


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