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お引越し
閑話3 熾烈なベッド決定戦(2)
しおりを挟む「そうなの! あれだけ大きければ幾らゴロゴロしても落ちないの! 二人で転がれば楽しいの!!」
目をキラキラと輝かせてそう言った彼女は、もしかしたらゴロゴロしまくる夢でも心に秘めていたりするんだろうか。
「却下だよ」
「えー?!」
「えーじゃない。二人サイズにしたってあんな大きさ要らないだろ? あと二人で一つのベッドはダメ」
そもそも二人寝に慣れていない俺が寝れる筈が無いし、クイナだって今こそ一人で寝るのが寂しいみたいだけどいずれは一人部屋を持つだろう。
年頃なんだし同年代の友達も増えた。
これからコイツは視野も広がり、すぐに独り立ちするだろう。
子供の成長速度なんて分からないが、クイナは今8歳。
2年もすれば、貴族ならば社交界デビュー。
大人の仲間入りをする歳だ。
「いざ俺離れの時が来て『ベッド真っ二つに切り分けないといけなくなる』とか嫌だからな」
せっかく既製品を買うんだから、可能な限り原形のまま使っていきたいと思うのは道理だろう。
するとクイナは「ムーッ」と頬を膨らませる。
「でもアルド、他のも却下してきたの!」
「だってそうだろ? お前が次に選んだのって……」
「このワイルドボアのベッドなの!」
そう、次にクイナが選んだのは、ワイルドボアの毛皮でベッドをコーティングした代物だ。
ベッドフレームはフッサフサ。
が、問題はそこじゃない。
「このベッドの側面にニョキッと出てる、ワイルドボアの牙」
「うんなの! これがカッコいいの!」
そう言って、耳をピピーンとさせている。
かなり嬉しそうに語っているが……。
「ダメだ」
「えーっ?!」
「えーじゃない。危ない」
問題は、クイナが気に入っているその牙だ。
先端は一応やすりを掛けてるようだが、夜中にベッドの横をすり抜ける時にうっかりぶつかったり引っかけたりしたらどうするのか。
こんなにニョキッと出てたら危ない。
その部分をへし折ったらまぁアリだけど、正にお気に入りポイントみたいだからアウトである。
「その次に選んだのは、確かこのブラックホースのベッドだったか」
「うんなの! これは下のお布団部分が全部馬さんの皮で可愛いの!」
尻尾フリフリしながらこれまた、嬉しそうにプレゼンしてくる。
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