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第三章:クイナとシンの攻防戦!

第47話 その恩恵、伝説級

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 しかし、三分の一。
 そう考えて「あっ」と思い出す。

「確かクイナが水をやったのがこの手前の三分の一……!」
「あー、確かにそうだったなぁ」
「という事は、これはクイナさんの力で?」

 そう言いながら、セイスドリートがキャロの隣にしゃがんでいるクイナに目を向ける。
 呼ばれたクイナは振り返るが、キョトン顔で「うん? なの?」と言いながら小首を傾げる。

「因みにクイナちゃんは何で水をやったんですかぁ~?」
「あぁえっと、先日俺があげたじょうろで。先日キャロさんにも立ち会っていただいたソルドさんの所の商談相手・デュラゼルさんの所のお店で買ったヤツなんですけど」

 そう言って近くに置いてあったじょうろを渡すと、少しの間まじまじと見た後「普通のじょうろみたいですねぇ~」と言う。
 もしかして『作物が多く実るじょうろ』みたいなのが、存在したりするのだろうか。


 しかし、じょうろじゃないと後は何が……と考えて、俺は一つ思い出した。
 クイナの恩恵は少し特殊だったのだという事を。

「あの、実は――」

 既に見られてしまっているのだし、キャロは信用における人物だという事で、俺は彼にクイナの恩恵について話をした。
 冒険者ギルドでは『採集』として登録しているが、本当は『豊穣』という名の恩恵である事。
 そして、どうやら『豊穣』は『採集』の上位互換であるらしい事を。

 すると彼は納得したような顔になる。

「多分原因、それですよぉ~。しかし本当にあったんですねぇ~、『豊穣』の恩恵なんてぇ~」
「え?」
「いやぁ~、農業界隈ではその恩恵ぃ伝説級ですからねぇ~。僕も生まれてこの方300年、初めて出会いましたよぉ~」

 さ、さんびゃくねん……。
 まぁエルフなのだから長寿なのは分かっていたが、まさかそんなに生きているとは。
 いやしかしちょっと待て、確かエルフは千年以上生きると聞いた事がある。
 そう考えるとまだまだ若者の部類に入る……のか?

 などと考えていると、依然としてキョトン顔のクイナに対し、キャロがふわりと微笑んで「クイナちゃんの恩恵がとってもスペシャルだ、というお話をしていたんですよぉ」と説明してあげていた。
 顔をパァーッと紅潮させて喜ばせている彼女に対し「しかしスペシャルすぎるので、今日のこの庭の事も含めて他の方には秘密にしておいた方が良いでしょうねぇ~」ときちんと釘をさしてくれる。
 
 この庭について他の人に自慢できない事がどうやら若干不服の様子なクイナに、俺は「知ってるか?」と声を掛けた。

「『能ある鷹は爪を隠す』っていう言葉があって、すごい力は隠していてこそカッコいいっていう意味なんだぞ?」
「カッコいい、なの……」

 嘘とホントを絶妙に織り交ぜた俺の言葉を、クイナは当たり前のように信じる。
 するとここですかさずセイスドリートが。

「おやクイナさん、もともとそんなに可愛らしいのに『カッコいい』まで手に入れたなら、それはもう『最強』なのでは?」
「最強なの?!」

 クイナの耳がピピンッとなった。
 喜んでいる、間違いなく。

 流石はセイスドリート、もうこんなにもクイナを御してしまうなんて。
 そんな事を思っていると、「ふふふっ」と笑う声がした。
 どうやらキャロもクイナを微笑ましく見てくれているようだ。

「あ、あとぉ、出来ている好みは全て食べ頃ですぅ~。今日の内に収獲してしまうのがぁ、最もおいしく食べられるでしょう~。食べられなければ他の所に流通させるしかありませんがぁ~……」
「あぁそれについては心当りがあります」
「そうですかぁ、なら良かったぁ~。ところで収獲、僕もお手伝いしましょうかぁ~」

 そう言われ、思わず「えっ、良いんですか?!」と声を上げてしまう。
 だってそうだろう、正直言ってこの数を、どう見ても素人5人でそうすぐに取り終えられる気がしない。
 頭数も増える上にプロともなれば、こっちとしては藁にも縋る思いである。

「今日しなければならない事はないですしぃ、クイナちゃんにはいつも頑張ってもらっていますしねぇ~」
「ありがとうございます、助かります」
「皆さんも一緒に収穫するのでぇ~?」
「あー……手伝ってくれるか?」
「良いぜ!」
「収穫に使う軍手やハサミなんかはお持ちでぇ~?」
「あ、無い」
「じゃぁ持ってきますねぇ~」
「すみません、ありがとうございます」

 という事で、突然『大収穫会』……はじまります!

 
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