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第三章:クイナとシンの攻防戦!
第40話 水、爆発!
しおりを挟むちゃんと「その辺のものを何でも口に入れちゃいけません」って言っとかないとなぁー……はぁ。
万が一お腹が痛くなるといけないからコッソリ『解毒』の魔法を掛けながら「じゃぁあとは魔法の練習な」と言って、クイナの隣に腰を下ろす。
「もう水球《ウォーターボール》は出来るんだから、ちょっとコツを掴めば魔法で水やりも出来るかもしれないぞ?」
「やってみるの! ……どうしたら良いの?」
「そうだなぁ。まず、『水よ』」
実演という事で、まず掌の上にポヨンと一つ水を出す。
「で、この水の中から外に向かって小爆発させる」
「ばくはつ……」
「こんな風に、『破裂』」
そう唱えると、水がパンッと弾けて水が地面にバラバラバラと落ちていく。
地面は良い感じにしっとりとして、良い感じだ。
「という感じだ」
「分かったの!」
クイナは元気よくそうお返事し、立ってテテテッと散歩歩いてから畑に向かって手をかざす。
その横顔は、真剣そのもの。
ちょっと眉間にしわを寄せながら掌に内包魔力を集めて。
「『水よ』」
ぽよよよよよよんっと、沢山の球体が畑の頭上に現れた。
シンの「おぉ」という感心声が聞こえてくるが、驚くのはまだ早い。
クイナはちゃんと魔法で水やりも出来――。
「『爆発』!」
「え」
詠唱を間違った。
それだけならまだ良かった。
が、魔法において詠唱が普及しているのは、言葉が持つイメージがどんな魔法を発動するのかという脳内イメージの補完になるからなのである。
つまり、魔法は詠唱《言葉》に引っ張られるのだ。
その結果、水たちはものすごい勢いで弾け、否、弾け飛び。
パパパパパパパパァンッ。
「うわっ、冷てっ!」
「おやおや」
「……」
「あー……」
大人たちは、四者四様に反応を示す。
そしてクイナは。
「……アルド! 爆発したの!!」
キラッキラの笑顔を向けてくる。
「うん、したな」
「とってもびっちょんこになったの!」
「あぁそうだなぁ」
よく分からないが、水を被ってどうやら楽しかったらしい。
まぁ良いか、クイナが楽しそうなんだったら。
そんな甘い事を考えながら、火と風の魔法を併用して5人の水気を温風をで吹き飛ばす。
クイナは今や、これを受ける事にも慣れてしまっているし、シンについてもそれは同様。
軽く「サンキュー」と言うだけだったし、セイスドリートに至っては「流石はアルド殿」とニコリ顔で一言。
そんな中、たった一人の部外者・ノーチが「信じられない」と言いたげな顔で目を剥いた。
「オイこれ魔力調整がかなりシビアなやつだろう……」
後に彼に言わせれば「例えば騎士団の連中が同じように魔法を使えば、十中八九服を焦がすか冷たい風にくしゃみするかのどちらかだ」という事らしい。
思い返せばこの魔法はレングラムに教えてもらった訳じゃなく、自力で習得した魔法だった。
が、そんな事などつゆ知らず、俺は「さて」と口を開く。
「とりあえずこれで水やりは出来たし、そろそろ晩飯食べに行くか」
「行くのーっ!!」
元気いっぱいに両手を上げて大歓迎のクイナ。
そんな彼女に「クイナさんがそれほど喜ぶ晩御飯ですか、楽しみですね」と微笑むセイスドリート。
そんな二人を後ろから眺めていると、肩を叩かれ横を向く。
「どこに行くんだ?」
「『天使のゆりかご』っていう所」
「あぁそれってお前が当分お世話になってた」
「よく覚えてたな」
ちょっと驚いて答えると、「手紙に良く出てきてたからな」なんて言われた。
「そんなに話に出していたかな」などと思いつつ、しかし確かにお世話にはなった場所なので、もしかしたら無意識に書き連ねていたのかもしれないと思い直す。
「あそこ食堂での飲食だけでも大丈夫だから。店主がまずいい人だし、女将さんも可愛い人だよ」
「おぉ、お前が女性をそんな風に褒めるのって、俺初めて聞いた気がする」
……流石は幼馴染というべきか、妙に勘が鋭いシンである。
「楽しみだなぁ~……って、何してるノーチ、ほら行くぞ?」
庭から出る直前で、まだ一人庭の前に棒立ちになっているノーチに気付いたシンが言う。
その声に「あ、あぁはい」と答えて小走りで続いた彼も連れて、俺達は『天使のゆりかご』へと向かったのだった。
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