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第二章 第一節:王さまに会いに行ってみる
第7話 怖い顔のやさしい王さま(3)
しおりを挟む「何かこいつに言いたい事は」
こちらを見下ろしてくる切れ長な目に、「言え」と言われているのだと気がついた。
わたしはちょっと考える。言いたいことは……うん、二つある。
立ち上がり、王さまの隣まで行って騎士の人に向き直った。そしてまずはキッパリと一言。
「何があっても、相手を蹴るのはダメだと思います!」
自分がされて嫌なことは、他人にやってはダメよ? お母さまはそう言っていた。
だけど、だからこそもう一つ。
「でも尻尾を引っ張っちゃったのは、ごめんなさい」
きちんとペコリと、頭を下げる。
まさか尻尾が神聖なものだなんて、まったく思いもしなかった。咄嗟だったし、他に彼を止める方法も思いつかなかったんだから、ああして彼を止めたことは今も後悔してはない。
でも、たとえば髪の毛を引っ張られたら、わたしだってとても嫌だもん。相手が嫌がることをしちゃったのは、わたしだって同じだった。
言いたいことが言えてスッキリした。
鼻からフンスと息をはきながら隣の王さまを見上げると、どうしたんだろう。目を見開いた王さまと目が合った。
そんな顔をされる理由が分からない。思わず首をかしげると、王さまは一瞬ハッとして、気でも取り直すかのようにコホンと一つ咳払いをした。
辺りを見渡す。そこにいたのは、さっきからわたしたちをずっと見ている通りかかりの人たちだ。
「改めて言う。この娘を傷をつけることは、何人たりとも許さん」
静かな断言だったのに、彼の声は廊下中にとてもよく通った。
まるで王さまの揺るがない気持ちが、そのまま声に影響したみたい。
――王さまが、ちゃんと『王さま』だ。
思わずそんな感想が、心の中でポロリと漏れる。
どんなに頑張ってもまだ一人で生きていくのが難しいわたしにとって、『王さま』な王さまはとても心強い存在だ。
でもそれ以上に嬉しかった。だって、こんなにハッキリと守ってもらったのは、お母さま以外では初めてだったから。
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