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第三章:オルトガン三兄妹、報告ティータイムに興じる。

第3話 ズルい兄の友人とチョコレートカヌレ(2)

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「一見軽そうに見えますが、その実あの方は、ご自分が『学生会』の一員であることに誇りを持っています。それこそ、未来の学校運営に想いを馳せるくらいにまで」

 その声は、敬愛とまでは行かないにしても確かにそれに準じる何かを持っていた。
 普段何かと毒舌気味な彼女にしては珍しい部類に入るだろうその態度を「それほどまでにケント・ドルンドという人間は優秀なのか」と受け取りながら、セシリアは与えられた議題について思考を走らせる。

 そして。

「……つまりケント様は、近い将来『学生会』という立場に収まるだろうクラウン様の伸びた鼻を、今のうちにへし折っておこうと考えたのですね?」
「正解」
「よくできました」

 セシリアがそんな答えを出すと、兄姉は2人揃って満足顔で頷いた。


 『学生会』は学校を仕切るメンバーだ。
 そしてその人選は、バランスを加味して各派閥から1人づつ選ばれる。
 しかし加味されるバランスの例外が『爵位』だ。

 つまり『学生会』とは、余程の不適格さがない限りはその年の各派閥の最高権力が選ばれる事になる。
 そして丁度セシリア達の年代で言えば、『革新派』の最高権力は侯爵家、つまりクラウンという事になるのだ。

 そんな人間が、下の者への見下した態度と権力によるごり押しを『正当な権利』だと認識してしまったら。
 なまじ権力があるが故に面倒な事になる。

 勿論それは『社交界』という枠組みでも言える事だろう。
 しかしマリーシアの言を聞くに、ケントはどうやらそちらよりも『学生会』もしくは学校運営への影響を心配しているようだった。

「まぁ今期は特に、エドガー様が居るからね」
 
 そこで苦労してるから、似たような片鱗が見える相手を放っておくことができないんだろう。

 そう言って、キリルが笑う。

 少なくともセシリアには、そんな兄の笑顔の裏に『友人を自慢したい気持ち』が見えて。
 
(キリルお兄様は、本当にケント様と仲が良いんだなぁ)

 そう思えば、少し2人の関係性が羨ましく思えてしまった。
 

 そして同時に、ケントの学校ないし『学生会』への愛を、改めて痛感した。

 しかし。

「それでは結局、矢面に立つのは私達ではないですか!」

 セシリアは「ズルい」と言って、語気を荒げる。


 暗躍することで、彼らは不利益を被ることなく利益だけ得られるだろう。
 しかし噂の渦中にあるセシリアは、そうはいかない。

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