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第一章:セシリア、10歳。ついに社交界デビューの日を迎える。
第10話 馬車に乗って
しおりを挟む馬車がオルトガン伯爵家から4つ、出発した。
王城へ向かう人数は、使用人や護衛を含めて16人。
その為、両親とマルクで一台、キリルとマリーシアとキリルの執事で一台、護衛騎士達で一台、その他の使用人達で一台とを使う事になった。
じゃぁセシリアはどれに乗るのかというと。
「セシリア、私達と同じ馬車に乗るか、キリル達の馬車に乗るか、どちらか選びなさい」
乗車前にそう言われた為、少し考える素振りを見せた。
そして「選べるならば」と口を開く。
「キリルお兄様達の馬車に乗りたいです。出来れば会場に着く前に、今日の朝の話について2人のお話を聞きたいので」
その声にワルターが「あぁそうだったな」と納得の声を上げた。
朝の話とは勿論、社交界デビューでの『やらかし』についてである。
あの後時間が取れておらず、まだ2人に何も話を聞けていない。
「2人の話をしっかり聞いてきなさい」
最後にはワルターにそう背中を押してもらって、セシリアは兄姉達の馬車に同乗する事になった。
そして、馬車が走り出して少し経ち、丁度馬車が速度に乗ってきた頃。
「キリルお兄様とマリーお姉様も、社交界デビューの時に何かあったんですか?」
セシリアは、そう話を切り出した。
すると2人は突然の話題振りに一瞬だけきょとんとしたが、すぐに納得顔になる。
「もしかして、お母様からお父様の話を聞いた?」
「いいえ、具体的にはまだ。しかし近い内にお話いただけるとの事です。それで……あの、お兄様とお姉様にも同じようなご経験が?」
そう尋ねてみると、マリーシアがまるで何かを思い出したかのような顔でクスクスと笑う。
「えぇ、勿論。まぁお父様程派手ではないけれど」
そんなの、当たり前だ。
だって、王族の絡んだ事件よりも大きな事件など、そうそうあっては堪らない。
逆にもし「お父様よりも派手だった」なんて言われたら、憂鬱な気持ちで会場に赴かなければならなくなってしまうだろう。
だってセシリアは、両親から暗に「『やらかす』のは血筋だ」と言われているようなものだ。
つまり2人の実例は「もしかしたら自分に降りかかるかもしれない火の粉」なのである。
だから「そうならなくて良かった」と、内心で安堵しつつ更に尋ねる。
「一体どんな事があったんですか? 私にも降りかかる内容かもしれないので、出来れば知っておきたいんですが……」
セシリアのそんな声に、キリルとマリーシアは互いに視線を合わせた。
マリーシアが無言のまま頷き、キリルが微笑む。
そしてまずはキリルが口を開いた。
「そうだね、じゃぁ簡単に話そうか。僕の場合は――」
こうしてキリル、マリーシアの順番にセシリアはそれぞれの『やらかし』について聞かされたのだった。
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