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ナイトマーケット②
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「あまりはしゃぐな。怪我をする」
ハンスが制止するほど、俺のテンションは上がっていた。
だって昼間と全然違う光景が広がってるんだ!
ロウソクやランタンはマーケット全体を夜の暗闇から隠している。
クリスマスシーズン以外で見る光の芸術、行き交う人の流れ、焼き立て料理の匂い……。
ラムハリ王国はこんな祭りを毎日やってるのか!
光に照らされた店先の商品は一層魅力で、買い物は夜に行くのが正解だ。
小遣いはもらったから、好きな物を何でも買える。
腹は減ってないからな~。
俺は好奇心を原動力に、人混みをかき分けて店を見て回る。
はぐれないように、ハンスがその後ろを付いて来る。
「見ろよ、水晶の店だ! 王宮も水晶だらけだったよな」
「ラムハリ王国は別名『砂漠の氷』。良質な水晶は交易品として国に富をもたらしている。水晶が欲しいのか?」
綺麗だけど、俺が持ってもな……。
そうだ、ジュンのお土産にしよう!
「俺に良くしてくれる使用人がいてさ、お土産にどうかなって」
ハンスの反応は芳しくない。
「使用人が高価な物を持っていると、貴族から盗んだと疑いをかけられる。嗜好品より実用的な物が、その使用人のためになるのではないか?」
一連の会話を聞いていた店主が
「お客さんらは貴族かい? ならこれはどうだい?」
1枚の藍色のハンカチだ。
「水晶が採れる洞窟付近に、稀に一輪の花が咲くことがある。その花を集めて染料にしてできたのが、このハンカチさ」
俺がジュンくらいの年齢の時、ハンカチで喜ばなかったぞ?
こういう渋いのじゃなくて、流行りの物の方が良さそうだ。
「一見、普通のハンカチと思うだろ?」
店主は俺に購買意欲がないのに気付いている。
「だがラムハリの水晶の近くに咲いた花だ。水晶同様、不思議な力が備わっている。持ち主を守り、持ち主の願いを叶えてくれるはずだよ」
俺はスピリチュアルに興味はない。
しかしハンスはそうじゃないみたいだ。
店主の話に釘付けで、今お土産の相談をすれば、きっとこのハンカチを勧められる。
まあ、ハンカチだったらジュンが持ってても、怪しまれない。
「わかった。じゃあ、それ買うよ」
店主は満面の笑みで
「毎度! 100,000ポルクだよ」
俺にこの世界の通貨や相場は分からないが、オーケルマンからもらったのは5枚の紙幣。
日本円で5万円、あるいは5千円ってところだろう。
明らかに店主は、俺たちが地元民じゃないことをいいことにぼったくろうとしている。
「いくら何でも高すぎる」
やはりハンスもそう思ったんだ。
「滅多に咲かない花をたくさん集めて作ったレア物ですよ? 旦那ぁ、ワタシだって商売で家族を養っているんです。それとも何です? 家族に食わせるメシを犠牲に、あんたたち貴族様にこのハンカチを献上しろと?」
この店主食えない……。
これじゃあ、まるで俺たちがカツアゲしているみたいだ。
強気で押せば、裕福な貴族から金を引っ張るのは簡単だと思っている。
だが、甘いな!
俺は貴族じゃない。
今は王宮暮らしだが、生まれも育ちも庶民なもんでね!
「なあ、どうして、このハンカチだけ値札が付いてないんだ?」
店主はギクッとした。
「これっていくらでも値段をふっかけられるってことだろ?」
ビンゴ!
店主がどんどん居心地悪い顔になっていく。
「お嬢さんは抜け目ない人だねぇ。……仕方ない。75,000ポルク!! これ以上は無理だよ」
俺はお嬢さんじゃないぞ!
この格好でその主張は無理があるか……。
うーん、安くはなったけど、多分足りないよな。
仕方ない、ここは俺がお嬢さんになってやりますか。
ハンスが制止するほど、俺のテンションは上がっていた。
だって昼間と全然違う光景が広がってるんだ!
ロウソクやランタンはマーケット全体を夜の暗闇から隠している。
クリスマスシーズン以外で見る光の芸術、行き交う人の流れ、焼き立て料理の匂い……。
ラムハリ王国はこんな祭りを毎日やってるのか!
光に照らされた店先の商品は一層魅力で、買い物は夜に行くのが正解だ。
小遣いはもらったから、好きな物を何でも買える。
腹は減ってないからな~。
俺は好奇心を原動力に、人混みをかき分けて店を見て回る。
はぐれないように、ハンスがその後ろを付いて来る。
「見ろよ、水晶の店だ! 王宮も水晶だらけだったよな」
「ラムハリ王国は別名『砂漠の氷』。良質な水晶は交易品として国に富をもたらしている。水晶が欲しいのか?」
綺麗だけど、俺が持ってもな……。
そうだ、ジュンのお土産にしよう!
「俺に良くしてくれる使用人がいてさ、お土産にどうかなって」
ハンスの反応は芳しくない。
「使用人が高価な物を持っていると、貴族から盗んだと疑いをかけられる。嗜好品より実用的な物が、その使用人のためになるのではないか?」
一連の会話を聞いていた店主が
「お客さんらは貴族かい? ならこれはどうだい?」
1枚の藍色のハンカチだ。
「水晶が採れる洞窟付近に、稀に一輪の花が咲くことがある。その花を集めて染料にしてできたのが、このハンカチさ」
俺がジュンくらいの年齢の時、ハンカチで喜ばなかったぞ?
こういう渋いのじゃなくて、流行りの物の方が良さそうだ。
「一見、普通のハンカチと思うだろ?」
店主は俺に購買意欲がないのに気付いている。
「だがラムハリの水晶の近くに咲いた花だ。水晶同様、不思議な力が備わっている。持ち主を守り、持ち主の願いを叶えてくれるはずだよ」
俺はスピリチュアルに興味はない。
しかしハンスはそうじゃないみたいだ。
店主の話に釘付けで、今お土産の相談をすれば、きっとこのハンカチを勧められる。
まあ、ハンカチだったらジュンが持ってても、怪しまれない。
「わかった。じゃあ、それ買うよ」
店主は満面の笑みで
「毎度! 100,000ポルクだよ」
俺にこの世界の通貨や相場は分からないが、オーケルマンからもらったのは5枚の紙幣。
日本円で5万円、あるいは5千円ってところだろう。
明らかに店主は、俺たちが地元民じゃないことをいいことにぼったくろうとしている。
「いくら何でも高すぎる」
やはりハンスもそう思ったんだ。
「滅多に咲かない花をたくさん集めて作ったレア物ですよ? 旦那ぁ、ワタシだって商売で家族を養っているんです。それとも何です? 家族に食わせるメシを犠牲に、あんたたち貴族様にこのハンカチを献上しろと?」
この店主食えない……。
これじゃあ、まるで俺たちがカツアゲしているみたいだ。
強気で押せば、裕福な貴族から金を引っ張るのは簡単だと思っている。
だが、甘いな!
俺は貴族じゃない。
今は王宮暮らしだが、生まれも育ちも庶民なもんでね!
「なあ、どうして、このハンカチだけ値札が付いてないんだ?」
店主はギクッとした。
「これっていくらでも値段をふっかけられるってことだろ?」
ビンゴ!
店主がどんどん居心地悪い顔になっていく。
「お嬢さんは抜け目ない人だねぇ。……仕方ない。75,000ポルク!! これ以上は無理だよ」
俺はお嬢さんじゃないぞ!
この格好でその主張は無理があるか……。
うーん、安くはなったけど、多分足りないよな。
仕方ない、ここは俺がお嬢さんになってやりますか。
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