11 / 77
腰抜けの右手
しおりを挟む
「お探しの物はその中か? 残念だったな」
このイケメンは、ハンス・ユーホルト!?
近くで見ると、色々とすげぇ。
背が高くて、顔は小さくて、モデルじゃん。
悪事が発覚したにも関わらず、芸能人を生で見た時のような感想しか出てこない。
「宝物庫の鍵が開いているからおかしいと思って来てくれば、……お前はオーケルマンの男娼か? ハッ、とんだ泥棒ネコだな」
「俺は男娼じゃない!!」
イケメンだからって、調子に乗りやがって。
脊髄反射で言い返してしまった。
ハンス・ユーホルトの表情はより一層侮蔑の色を濃くした。
「盗人猛々しいとは、まさにこのことだな。オーケルマンに囲われ、民の苦しみも知らず、その上国宝まで欲しがるとは……。恥知らずの男娼には、己の罪の重さすら分からないようだ」
確かに俺はロマーリア王国にとって損失を被ることを企てた。
だが、ここまで罵っておきながら、王の前では命を捧げるだ何だと澄まし顔で言うコイツもおかしいだろ。
「他人ののっぴきならない事情を知らないのに、恥知らずとか決め付けんな。かっこいい鎧を纏って戦うだけが仕事じゃない! 腹くくってる人間を馬鹿にして良い身分なんてないんだ!!」
ハンス・ユーホルトは表情一つ変えずに、服を脱ぎ始めた。
何で上半身裸になる!?
パンプアップされた美しい肉体。
コイツは着痩せるタイプのようだ。
俺とは違って控えめな乳首に目が行ってしまう。
これじゃあ、俺が変態みたいじゃないか。
半裸のハンス・ユーホルトは、俺ににじり寄って
「俺がここの鍵を持っていると言ったらどうする?」
コイツが最後のキーパーソン!?
俺たちの距離は確実に近づいていき、ついに扉を背に追い詰められた。
ハンス・ユーホルトの右腕が俺の頭の上あたりで、ドンッと打ち付けられた。
俺は今、かつて全ての女子が憧れたという「壁ドン」をされている。
「どうって……」
ああ、そういうことか。
コイツにとって俺は男娼なんだ。
勇猛果敢な騎士様は、きっとあっちの方もお盛んなんだろう。
2秒、いや3秒見つめ合った。
こんな形でコイツの目の色を把握することになろうとは。
色素の薄いグレーの瞳は、俺を逃がしてくれない。
俺はハンス・ユーホルトの唇を目指して、ゆっくりと背伸びをした。
ハンス・ユーホルトは体をかがめ、俺たちを隔てる距離がどんどん短くなる。
オーケルマンとは大違いの良い香り。
香水とかじゃない。
甘くクラクラするような強者にしか出せない強い男の香りだ。
唇が触れる直前、俺の太ももにゴリっとした感触!
俺は咄嗟に頭を後ろに逸らし、ハンス・ユーホルトを見た。
コイツ、今わざと……!?
ハンス・ユーホルトの男の色気に耐えられなかった。
「ハッ、何を怖気づいている? 腹をくくっていると、お前が言ったんだぞ。今日はこれで勘弁してやる。さっさとおウチへ帰れ」
勝者が敗者に浴びせる言葉は、いつだって冷たい。
視界を塞いでいた体が移動し、帰り道が示された。
俺は走って逃げようと、足を前に出した。
が、力なくその場に崩れ落ちただけだった。
過度な緊張感のせいで、全身をガクガク震わせている。
早く逃げたいのに!
何やってんだよ、動けよ!!
ハンス・ユーホルトは服を着替えながら
「ご期待に添えず申し訳ないが、俺は鍵を持ってはいない。次は俺が王宮を空けた時に狙うんだな」
ようやく立てるようになった俺は、言い返すこともできずに敗走した。
あれほどきれいだった宝も、今は俺を嘲笑うように下品な輝きを放つ。
天の声、オーケルマン、宝の山、真実の愛、そしてハンス・ユーホルト。
全てが俺を手のひらで弄んでいる――!
自室に戻ると、服を返して欲しいジュンが待っていた。
「マヤ様! どうでしたか?」
「ごめん、ちょっと一人にして欲しいんだ。今はそういう気分じゃないから」
ジュンの前では優しい兄ちゃんでいたいのに。
俺は服を脱ぎ、ジュンに雑に突き返した。
「あっ、失礼しました……」
ジュンはきっと傷ついただろう。
まともに顔を見ることができなかった。
子供に裸体を見せるのが悪影響だからか?
それは半分正解。
偽善であり、建前なんだ。
俺はその場に座り、今にもはち切れんとするソレを力任せにしごいた。
「うっ……うぅ……っ」
泣きながら、嗚咽と吐息を漏らしながら、治まらない熱を一人で慰めた。
このイケメンは、ハンス・ユーホルト!?
近くで見ると、色々とすげぇ。
背が高くて、顔は小さくて、モデルじゃん。
悪事が発覚したにも関わらず、芸能人を生で見た時のような感想しか出てこない。
「宝物庫の鍵が開いているからおかしいと思って来てくれば、……お前はオーケルマンの男娼か? ハッ、とんだ泥棒ネコだな」
「俺は男娼じゃない!!」
イケメンだからって、調子に乗りやがって。
脊髄反射で言い返してしまった。
ハンス・ユーホルトの表情はより一層侮蔑の色を濃くした。
「盗人猛々しいとは、まさにこのことだな。オーケルマンに囲われ、民の苦しみも知らず、その上国宝まで欲しがるとは……。恥知らずの男娼には、己の罪の重さすら分からないようだ」
確かに俺はロマーリア王国にとって損失を被ることを企てた。
だが、ここまで罵っておきながら、王の前では命を捧げるだ何だと澄まし顔で言うコイツもおかしいだろ。
「他人ののっぴきならない事情を知らないのに、恥知らずとか決め付けんな。かっこいい鎧を纏って戦うだけが仕事じゃない! 腹くくってる人間を馬鹿にして良い身分なんてないんだ!!」
ハンス・ユーホルトは表情一つ変えずに、服を脱ぎ始めた。
何で上半身裸になる!?
パンプアップされた美しい肉体。
コイツは着痩せるタイプのようだ。
俺とは違って控えめな乳首に目が行ってしまう。
これじゃあ、俺が変態みたいじゃないか。
半裸のハンス・ユーホルトは、俺ににじり寄って
「俺がここの鍵を持っていると言ったらどうする?」
コイツが最後のキーパーソン!?
俺たちの距離は確実に近づいていき、ついに扉を背に追い詰められた。
ハンス・ユーホルトの右腕が俺の頭の上あたりで、ドンッと打ち付けられた。
俺は今、かつて全ての女子が憧れたという「壁ドン」をされている。
「どうって……」
ああ、そういうことか。
コイツにとって俺は男娼なんだ。
勇猛果敢な騎士様は、きっとあっちの方もお盛んなんだろう。
2秒、いや3秒見つめ合った。
こんな形でコイツの目の色を把握することになろうとは。
色素の薄いグレーの瞳は、俺を逃がしてくれない。
俺はハンス・ユーホルトの唇を目指して、ゆっくりと背伸びをした。
ハンス・ユーホルトは体をかがめ、俺たちを隔てる距離がどんどん短くなる。
オーケルマンとは大違いの良い香り。
香水とかじゃない。
甘くクラクラするような強者にしか出せない強い男の香りだ。
唇が触れる直前、俺の太ももにゴリっとした感触!
俺は咄嗟に頭を後ろに逸らし、ハンス・ユーホルトを見た。
コイツ、今わざと……!?
ハンス・ユーホルトの男の色気に耐えられなかった。
「ハッ、何を怖気づいている? 腹をくくっていると、お前が言ったんだぞ。今日はこれで勘弁してやる。さっさとおウチへ帰れ」
勝者が敗者に浴びせる言葉は、いつだって冷たい。
視界を塞いでいた体が移動し、帰り道が示された。
俺は走って逃げようと、足を前に出した。
が、力なくその場に崩れ落ちただけだった。
過度な緊張感のせいで、全身をガクガク震わせている。
早く逃げたいのに!
何やってんだよ、動けよ!!
ハンス・ユーホルトは服を着替えながら
「ご期待に添えず申し訳ないが、俺は鍵を持ってはいない。次は俺が王宮を空けた時に狙うんだな」
ようやく立てるようになった俺は、言い返すこともできずに敗走した。
あれほどきれいだった宝も、今は俺を嘲笑うように下品な輝きを放つ。
天の声、オーケルマン、宝の山、真実の愛、そしてハンス・ユーホルト。
全てが俺を手のひらで弄んでいる――!
自室に戻ると、服を返して欲しいジュンが待っていた。
「マヤ様! どうでしたか?」
「ごめん、ちょっと一人にして欲しいんだ。今はそういう気分じゃないから」
ジュンの前では優しい兄ちゃんでいたいのに。
俺は服を脱ぎ、ジュンに雑に突き返した。
「あっ、失礼しました……」
ジュンはきっと傷ついただろう。
まともに顔を見ることができなかった。
子供に裸体を見せるのが悪影響だからか?
それは半分正解。
偽善であり、建前なんだ。
俺はその場に座り、今にもはち切れんとするソレを力任せにしごいた。
「うっ……うぅ……っ」
泣きながら、嗚咽と吐息を漏らしながら、治まらない熱を一人で慰めた。
1
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
番だと言われて囲われました。
桜
BL
戦時中のある日、特攻隊として選ばれた私は友人と別れて仲間と共に敵陣へ飛び込んだ。
死を覚悟したその時、光に包み込まれ機体ごと何かに引き寄せられて、異世界に。
そこは魔力持ちも世界であり、私を番いと呼ぶ物に囲われた。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる