壺の中にはご馳走を

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ユキちゃん

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 真也にはなかなか彼女ができないが、友人を作ることは非常に得意である。

 茉美との世間話には、多くの友人の名が挙がる。

「こんなに大学生活が楽しいなら、彼女なんていらないかな~」

 真也の半分本気で半分強がりの言葉に、茉美はまたいつものが出たと肩をすくめた。


 制服姿の女子高生が入ってきた。

 真也は、学生ならば授業中ではないのか、と頭に浮かんだが、及川エリカにはティサに用があるのだ。

 そしてそれは学校を早退するくらい大切なことだ。


「私の友達、ユキちゃんの話です。

 
 ユキちゃんは幼稚園の時からの友達です。

 先生の目を盗んでは、2人でおしゃべりをして遊びました。


 小学生の時、私はクラスの女の子グループにいじめられていました。

 ユキちゃんは

『私が助けてあげるからね』

 と言って、その子たちに仕返しをしました。


 1人は母親が入院し、1人は階段から落ちて骨折しました。

 一番いじめっ子だった里奈ちゃんは、会社が倒産して夜逃げしたと私の両親が話していました。


 私はユキちゃんに感謝し、一番の親友だよと言ってあげました。

 ユキちゃんは真っ白な肌をピンク色にして照れていました。

 それから何人もの友達ができたけど、それでも一番はユキちゃんでした。

 だって一番長く傍にいてくれたのはユキちゃんだから。


 中学生になると、私は勉強のことで悩むようになりました。

 ユキちゃんに相談したこともあります。

 このままだと志望校には合格できないって。

 すると、ユキちゃんはテストの答えを教えてくれるようになったのです。

 試験監督の先生が見ていない時に、耳元で答えを囁きます。

 そうやって、私は今の高校に合格することができました。


 高校入学後、私にも初めての彼氏ができました。

 隣のクラスの翼くんです。

 翼くんとたくさん遊んで、充実した高校生活を送っていました。


 でもユキちゃんは気に食わないようです。

 嫉妬しているのでしょうか。

 ある時、廊下で翼くんと話していると、遠くから睨むユキちゃんが見えした。


 ユキちゃんに分かって欲しくて話しかけても、私とは一緒にいたくないみたいです。

 最近は姿も見せてくれなくなりました。

 代わりにクラスの友達が、ユキちゃんの話をするようになりました」
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