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行間15 永遠に漂って・・・
第126話 絶対に見てはいけない物(前編)
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敦盛とユーノスが冒険者ギルドで試合をしていたのとほぼ同時刻・・・
その日、エウリュアレ海は雲1つない青空が広がり、風もなく、穏やかな日だった・・・
帆船は逆に風がないと苦労するけど、魔力船は風が無くても問題なく進む事が出来る。
でも、魔力船の動力源は魔晶石だ。魔力船といえどもそれは補助動力であって主動力は風の力だ。その魔晶石も最近は高騰しているから、風が無い日はわざと2倍から3倍の追加料金を取るくらいで、魔力船を嫌って普通の帆船の方が逆に人気があるくらいだ。
財宝発掘人たちは自前の船を持っている事が多いけど、船の維持費に金がかかるから大商人がバックについていて金を出している程だが、最近は魔王配下の魔物が『聖地』エウリュアレ海にも多く出没するようになったから、廃業する財宝発掘人が後を絶たず、港に係留されたままの船や『売り出し物件』などと看板をつけた船も多くなった。
財宝発掘人の船とはいっても、乗組員の半数以上は普通の船乗りたちであり、実際に海に潜る財宝発掘人たちのバックアップメンバーに過ぎないのだ。でも、海賊に襲われるのは日常茶飯事であるし、ましてや最近は魔物の襲撃も珍しくないから、彼らも結構忙しい。いや、報酬だけで言ったら財宝発掘人より多いくらいなのだ。それ位、海の上は危険が一杯だ。
でも、風が殆どなく、ましてや天候がいい日は見晴らしがいいから平穏に過ごせる。今日はノンビリムードが漂っていた。
そんな海上のノンビリムードが海面下にも伝わってくるのか、海に潜っていた8人組もノンビリムードだ・・・
海に潜っていたのは男ばかり8人だ。
いや、地上の遺跡荒らしの財宝発掘人は女も多いけど、エウリュアレ海の財宝発掘人に女はいないと言っても過言ではない。いや、女はエウリュアレ海で財宝発掘人をやってはならないと言われていているし、それを男も女も信じて疑わないのだ!
なぜなら・・・
8人の構成は、精霊使いが3人、古代語の魔術師が2人、『星空の番人ジョンストン』と『戦の守護者アルマーニ』の元神官、それとリーダーの盗賊だ。さすがに水中では剣士がいても剣を振り回すと水の抵抗がかかって動きが鈍る。そんな役立たずをつれていくより、魔法で相手を仕留めた方が早いから、剣士クラスは海上で海賊や魔物退治専門だ。もちろん、水中で呼吸できるのは精霊使いが水の精霊に命じているからに他ならない。当たり前だ、この世界には酸素ボンベや潜水服などといったものは存在しないのだから。
「・・・おーい、そっちはどうだ?」
水中用の魔法灯を片手に持った小男が大声で叫んだけど、もう一人の男は左手を上げながら叫んだ。
「全然ダメだー。何も残ってないぞー」
「くっそー。船が沈む間にバラバラになったから、荷物を探す手間が省けたのが逆に仇になって、先を越されたな」
「仕方ないだろー?ここ1週間ほど、海が荒れてたからなー」
「海中は荒れないからな。命知らずの連中が船に頼らずここまで来て回収して、後は海が静かになるのをギリギリまで待っていたんだろうな」
「はーーー・・・多分、それが正解だろうな」
小男はため息混じりにボヤいたけど、他の7人も同じ感想だった。
「・・・ダメ元で、もう少し探してみるか?」
「別にいいけど、この時期の海流の流れからいって、可能性があるとしたらあっちの方だぞ」
「だろうな。もうちょっとだけ行ってみよう。明かりを最大にしてくれ」
「りょーかい」
8人はトボトボと海底を歩いていったが、このあたりは海底といっても岩が多いから、歩くというよりは泳ぐといった表現が正しいかもしれない。光が全く届かない深海だけど、水の中では光の精霊が使えないから、各人が持つ魔法灯だけが頼りといっても過言ではない。
そんな状態で8人は海流の流れに導かれるまま、2時間くらい、海底を泳いでいたのだが、その時、先頭を泳いでいた精霊使いの男が前方に奇妙な物を見付けた。
「・・・おーい、あれ、何だと思う?」
その日、エウリュアレ海は雲1つない青空が広がり、風もなく、穏やかな日だった・・・
帆船は逆に風がないと苦労するけど、魔力船は風が無くても問題なく進む事が出来る。
でも、魔力船の動力源は魔晶石だ。魔力船といえどもそれは補助動力であって主動力は風の力だ。その魔晶石も最近は高騰しているから、風が無い日はわざと2倍から3倍の追加料金を取るくらいで、魔力船を嫌って普通の帆船の方が逆に人気があるくらいだ。
財宝発掘人たちは自前の船を持っている事が多いけど、船の維持費に金がかかるから大商人がバックについていて金を出している程だが、最近は魔王配下の魔物が『聖地』エウリュアレ海にも多く出没するようになったから、廃業する財宝発掘人が後を絶たず、港に係留されたままの船や『売り出し物件』などと看板をつけた船も多くなった。
財宝発掘人の船とはいっても、乗組員の半数以上は普通の船乗りたちであり、実際に海に潜る財宝発掘人たちのバックアップメンバーに過ぎないのだ。でも、海賊に襲われるのは日常茶飯事であるし、ましてや最近は魔物の襲撃も珍しくないから、彼らも結構忙しい。いや、報酬だけで言ったら財宝発掘人より多いくらいなのだ。それ位、海の上は危険が一杯だ。
でも、風が殆どなく、ましてや天候がいい日は見晴らしがいいから平穏に過ごせる。今日はノンビリムードが漂っていた。
そんな海上のノンビリムードが海面下にも伝わってくるのか、海に潜っていた8人組もノンビリムードだ・・・
海に潜っていたのは男ばかり8人だ。
いや、地上の遺跡荒らしの財宝発掘人は女も多いけど、エウリュアレ海の財宝発掘人に女はいないと言っても過言ではない。いや、女はエウリュアレ海で財宝発掘人をやってはならないと言われていているし、それを男も女も信じて疑わないのだ!
なぜなら・・・
8人の構成は、精霊使いが3人、古代語の魔術師が2人、『星空の番人ジョンストン』と『戦の守護者アルマーニ』の元神官、それとリーダーの盗賊だ。さすがに水中では剣士がいても剣を振り回すと水の抵抗がかかって動きが鈍る。そんな役立たずをつれていくより、魔法で相手を仕留めた方が早いから、剣士クラスは海上で海賊や魔物退治専門だ。もちろん、水中で呼吸できるのは精霊使いが水の精霊に命じているからに他ならない。当たり前だ、この世界には酸素ボンベや潜水服などといったものは存在しないのだから。
「・・・おーい、そっちはどうだ?」
水中用の魔法灯を片手に持った小男が大声で叫んだけど、もう一人の男は左手を上げながら叫んだ。
「全然ダメだー。何も残ってないぞー」
「くっそー。船が沈む間にバラバラになったから、荷物を探す手間が省けたのが逆に仇になって、先を越されたな」
「仕方ないだろー?ここ1週間ほど、海が荒れてたからなー」
「海中は荒れないからな。命知らずの連中が船に頼らずここまで来て回収して、後は海が静かになるのをギリギリまで待っていたんだろうな」
「はーーー・・・多分、それが正解だろうな」
小男はため息混じりにボヤいたけど、他の7人も同じ感想だった。
「・・・ダメ元で、もう少し探してみるか?」
「別にいいけど、この時期の海流の流れからいって、可能性があるとしたらあっちの方だぞ」
「だろうな。もうちょっとだけ行ってみよう。明かりを最大にしてくれ」
「りょーかい」
8人はトボトボと海底を歩いていったが、このあたりは海底といっても岩が多いから、歩くというよりは泳ぐといった表現が正しいかもしれない。光が全く届かない深海だけど、水の中では光の精霊が使えないから、各人が持つ魔法灯だけが頼りといっても過言ではない。
そんな状態で8人は海流の流れに導かれるまま、2時間くらい、海底を泳いでいたのだが、その時、先頭を泳いでいた精霊使いの男が前方に奇妙な物を見付けた。
「・・・おーい、あれ、何だと思う?」
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