上 下
105 / 127
アツモリ、竜殺し(ドラゴンスレイヤー)と会う

第105話 俺様直々に説教してやるから感謝しろ!

しおりを挟む
「・・・・おーい!」

 いきなり遠くから聞き覚えのある声がしたから、ルシーダや敦盛だけでなく、傭兵風の男も声の方向を見たが、それはエミーナだった。しかもシルフィと一緒に駆け足でこっちへ向かっていたのだ。
 そのエミーナはルシーダの前で足を止めたけど、かなり長い距離を走って来たのか肩で息をしていたほどだ。
「・・・ちょ、ちょっとエミーナ、あんた、どこへ行ってたのよ!」
「仕方ないだろ?ボクは約束の時間に約束の場所へ行ったのに、誰もいないんだぜー。こっちが勘弁して欲しいよお」
「どうしてここが分かったの?」
「いやー、ホントに偶然なんだけど、シルフィがヒョッコリ顔を出したから、シルフィに頼んで『樹木の精霊ドライアード』の力でボクの頭の中を覗いてもらって、を描き出してもらって、それを使って風の精霊シルフに探せたら、ここにいるって教えてくれたから全力で走って来たって訳さ」
「ふーん、それは大変だったわねえ」
「勘弁して欲しいぞー。こーんなバカヅラがかと思ったら、ボクは恥ずかしくて人前を歩けないぞ」
 エミーナはそう言ったかと思ったら、傭兵風の男の足をいきなり踏みつけた。

 傭兵風の男は一瞬、顔を真っ赤にしたけど大声を上げなかったのは流石だ。
「おいおいー、それが兄に対する挨拶かあ?お前の方こそ礼儀知らずだぞ」
「フン!その言葉、『兄』という部分を『妹』に置き換えてソックリそのままお返しする」
「だいたい、お前の方こそ迎えに来なかったクセに何を言ってる!」
「はあ!?約束の時間は今日の午前6時、しかもファウナの西地区、国際航路の休憩所の前だって兄貴が自分から言ってたクセに、約束の時間の30分前に行ったにも関わらず来なかった奴に言われたくなーい」
「あれっ?俺様はお前にそんな約束をした?」
「ボクの言葉が信用できないというなら、『真実トゥルース』の呪文を使うか、そこにいるルシーダに『懺悔コンフェション』を使ってもらうか、好きな方を選べ!」
「へえー、この姉ちゃん、『ルシーダ』という名前なのかあ」
「話を逸らすなあ!」
「まあまあ、久しぶりの兄妹きょうだいの再開なんだから大目に見て欲しいなあ」
「兄貴はルーズ過ぎるんだよ!!」
 エミーナはそう言って傭兵風の男を睨んでるけど、傭兵風の男は「まあまあ」とエミーナを軽くあしらっていて全然反省した素振りを見せない。ルシーダだけでなく敦盛も満里奈も、それにココアも唖然とした表情でエミーナと傭兵風の男を交互に見ていたほどだ。シルフィは相変わらずだけどニコニコしたままだ。傭兵風の男のツレのうち、3人は「やれやれ」という表情で傭兵風の男を見てるけど、ただ一人、銀髪の女だけは冷たい目をしたままエミーナを見ていた。いや、のだ!

 ルシーダは「はーー」とため息をついたかと思ったら、エミーナの法服ローブの袖を強引に引っ張って引き寄せた。
「・・・ちょ、ちょっとエミーナ!」
「ん?ルシーダ、どうした?」
「どうしたもこうしたも無いわよ!あんたさあ、お兄さんがいるだなんて私に一度も言った事がなかったでしょ!」
「あー、その事か」
「『あー、その事か』じゃあないわよ!」
「わりーわりー」
「はーー、ところで、お兄さんの名前は?」
「ん?ユーノスだよ」
「ユーノス?私、超がつく有名人でユーノスという名前の人を知ってるけど、まさかねえ」
「うーん、多分、ルシーダは正解だよ」
 エミーナはそう言うと右手で持っていた杖でいきなり傭兵風の男の頭を『ゴツン』と叩いたから、その傭兵風の男は「痛いだろ!」とエミーナに文句を言ったけど、エミーナはあえて無視した。
「丁度いいや、アツモリたちにもボクの兄貴を紹介する」
「「「「「 兄貴? 」」」」」
「そう、兄貴。こいつの名前はユーノス。またの名を・・・」
 エミーナが言い出そうとした瞬間、エミーナの兄、ユーノスはエミーナの肩をグイッと引っ張ったかと思ったら前へ進み出た。
「・・・俺様の名前はユーノス!『熱血の勇者ユーノス』と言えば姉ちゃんたちも知ってるんじゃあないのか?」

 ユーノスはそう言って胸を張ったけど、当たり前だが敦盛も満里奈も、それにシルフィも何を言ってるのか全然分からないから首を傾げているだけだ。
 だが・・・ルシーダとココアは「えーーっ!」と声を上げたほどだ。
 ココアは興奮したような表情になったけど、逆にルシーダは緊張したような表情になった。

「・・・俺様はカリスト大陸冒険者ギルド、リーバイス王国のメルクリウス支部所属のユーノス。『熱血の勇者ユーノス』と名乗ってるけど、それ以上に『竜殺しドラゴンスレイヤー』ユーノスを知らない奴は俺様直々に説教してやるから感謝しろ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

腐れ外道の城

詠野ごりら
歴史・時代
戦国時代初期、険しい山脈に囲まれた国。樋野(ひの)でも狭い土地をめぐって争いがはじまっていた。 黒田三郎兵衛は反乱者、井藤十兵衛の鎮圧に向かっていた。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

蟲籠の島 夢幻の海 〜これは、白銀の血族が滅ぶまでの物語〜

二階堂まりい
ファンタジー
 メソポタミア辺りのオリエント神話がモチーフの、ダークな異能バトルものローファンタジーです。以下あらすじ  超能力を持つ男子高校生、鎮神は独自の信仰を持つ二ツ河島へ連れて来られて自身のの父方が二ツ河島の信仰を統べる一族であったことを知らされる。そして鎮神は、異母姉(兄?)にあたる両性具有の美形、宇津僚真祈に結婚を迫られて島に拘束される。  同時期に、島と関わりがある赤い瞳の青年、赤松深夜美は、二ツ河島の信仰に興味を持ったと言って宇津僚家のハウスキーパーとして住み込みで働き始める。しかし彼も能力を秘めており、暗躍を始める。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

闇に蠢く

野村勇輔(ノムラユーリ)
ホラー
 関わると行方不明になると噂される喪服の女(少女)に関わってしまった相原奈央と相原響紀。  響紀は女の手にかかり、命を落とす。  さらに奈央も狙われて…… イラスト:ミコトカエ(@takoharamint)様 ※無断転載等不可

処理中です...