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行間10 あんたが1番!

第65話 カイインバンゴウ (前編)

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「「「「「「「「「「 義理の妹!? 」」」」」」」」」」
「そう、義理の妹」

 ここは『海の神ネプトゥーヌス

 一番大きな丸テーブルには11人が座っていたが、男は敦盛だけだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 敦盛たちはレクサス支部長との密談(?)を終えてギルドを出ようとしたのだが、ドアを開けようとした丁度その時、疾風イル ヴェントの5人がギルドに戻って来た。
 シエナは歓喜の表情で試合を申し込んだのだが、審判員全員が「もうすぐ定時ですから」と言ったから、明日の午後、試合をする事になった
 午前にバレンティノ教会のコペン高司祭に事情を説明し、その後に満里奈の装備を整えてやる必要があるからだ。

 シエナは「打ち上げと歓迎会をやろう」と言って敦盛を誘った。もちろん、シルフィにも誘った。
 シルフィは興味津々と言った表情で「いいよー」とアッサリ返事をしたし、エミーナやルシーダ、ココアは誘いを断る理由が無いから首を縦に振ったけど、満里奈だけは敦盛の袖をツンツンと引っ張った。

 敦盛は満里奈の方を振り向いたけど、満里奈は敦盛を強引に部屋の片隅に引っ張って行って
「ちょ、ちょっとお兄ちゃん!」
「・・・ん?どうした」
「いくら何でも非常識過ぎない?」
「何が?」
「ココアちゃんの仲間が仕事の途中に亡くなってるんでしょ?普通に考えたら不謹慎もいいところよ」
「あのさあ満里奈、たしかに俺たちの考えから言ったら満里奈の方が正論だ。だけど、あの人たちから見たら断るのが非常識だぞ」
「まじ!?」
「ああ。俺だって最初は戸惑ったよ。だけど、この世界の人にとっては『死者は大地に返す』というのが当たり前だ。母なる大地から肉体は生まれ大地に戻って行く。魂は神が与え、肉体が滅んだら魂はその束縛を逃れて神の元へ帰る。だから死を悲しむのは肉体を土に埋める時までで、これからやるのは『魂を神の元へ送り出す激励会』なんだよ」
「そんなモンなの?」
「だから、逆に俺たちの常識に拘ってると怪しまれるぞ」
「はーー・・・『郷に入っては郷に従え』という奴ですかあ?」
「そういう事だ」
 満里奈は渋々顔だけど承知し、そのまま敦盛と並んでギルドを出た。でも、何故かアキュラが「お先に失礼しまーす」とか言って敦盛についてきたし、さらにはステラとキャミ、ミニカの3人も敦盛について行ったから、総勢11人で『海の神ネプトゥーヌス』に押し掛けた形になった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 エポが全員の前に飲み物を置いた後、敦盛は自分の右に座った満里奈を紹介したのだが、その言葉を聞いてエポを含めた全員が一斉に声を上げたのだ。
 ただし、シルフィだけは『義理の妹』の意味が分かってない。

「ちょ、ちょーっと待ってくれ!という事は、アツモリの方が養子だというのかあ!?」
 シエナはそう言って顎が外れるんじゃあないかという位に口をアングリと開けているが、それはエミーナとルシーダも同じだった。
「・・・そうです。同じ阿佐家だけど、満里奈は本家の三女で、俺は東の分家の次男だ。本家に男子がいないから、東の分家の俺が本家の養子になったのは3歳の時だ。その時から満里奈は俺の義理の妹だ」
「い、いや、騎士の家で騎士職を継がせるために分家の男を養子に取るというのは、あたしも何例か知ってる。でも普通は婿養子の形だぞ!それを3歳の時に・・・」
「俺が以前、シエナさんと試合をした時に使った技『阿佐あさ揚羽あげは流』は男のみに受け継がれてきた一子相伝いっしそうでんだ。だから俺は『阿佐揚羽流』を受け継ぐ為に、3歳で養子に行ったと言えば分かりますか?」
「それなら納得だ。伝統工芸を継ぐ職人などで、秘密を守る為に最初から一人にしか教えないという話は、あたしも聞いた事がある」
「それと同じ意味ですよ」
 そう言うと敦盛はジンジャエールを口にしたが、いつ飲んでもギンギンに冷えてるジンジャエールは美味い!
 満里奈は「こんなところで冷えたジンジャエールが飲めるとは!」と感激してジンジャエールを口にして、早くも「お替り!」と言ってエポに催促したくらいだ。
 敦盛の左に座ったココアは「わたしのような人がここに座っていいんですか?」と遠慮気味だったけど、隣のシルフィが「別にいいんだよー」とか言ってノホホンとしてるから、何となくだが緊張が取れないまま座っている。
 因みにビールを飲んでるのはシエナ(当たり前だ!)とアキュラだけだ。シルフィはエルフらしく紅茶、それもストレートだ。ワインは事務局の3人で、残りは全員ジンジャエールだ。

「・・・はあい、お待たせしましたあ!」

 エポがテーブルの上にマルゲリータやペスカトーレ、ジェノベーゼやオルトナーラといったピザ、カルボナーラやペペロンチーノ、ボロネーゼやプッタネスカといったパスタを次々と並べていく。他にもロールパンやクロワッサンといったパンに加え、この地方の伝統的なパンであるフォカッチャやチャバタ、ロゼッタなどに加えチキンソテー、フライドポテトやジャガイモのサラダ、スープも並んでいる。菜食であるシルフィはサラダを個人的に注文しているが、オリーブオイルを全く使わないところがエルフらしい。

 あちらでは、隣に座ったシエナとアキュラの2人が互いにビールのお替りの杯数を競い合っている!ファウナ支部の冒険者ナンバー1酒豪のシエナと、裏方ナンバー1酒豪のアキュラが、どちらが真のナンバー1(?)かを競っているのだから、ステラたちが歓声を上げているほどだ。まさに『ザル王決定戦』(ザル女王決定戦の間違い?)の様相を呈している。

「・・・アツモリさーん、丁度いい機会だから、ついでに聞いてもいいですか?」

 ステラが右手を上げながら敦盛に声を掛けてきたが、顔が相当赤いという事は結構飲んでいるようだ。ただ、呂律はしっかりしている。
「ん?何?」
 敦盛は丁度マルゲリータを食べている最中だったが、手を止めてステラと視線を合わせた。敦盛も10人の可愛い子に囲まれて舞い上がっている状態だ。
「・・・パーティの登録名の『ニャンニャンクラブ』はエウロパ大陸だけでなく、ガニメデ大陸やイオ大陸、カリスト大陸でも聞いた事がない言葉らしいです」
「へー、俺、初耳」
「ですからー、名前の由来を教えてもらえませんかあ?」
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