上 下
74 / 84

第74話 ハジメを内緒で強化計画

しおりを挟む
今回は、半分以上ミシェル達がメインです。



「素体がハジメだから、もしやと思ったがスライム想像以上に美味いな」

「っていうか、なんで私たちこんなに早く走れるの!?」

「きっとハジメさんの所持してた能力をそのまま引き継いでいるのよ、この新しい身体!」

「それって、反則のような気がする…」

ハジメと別れてから、早3ヶ月。
アーシュラさんから魔界1周1週間を最初言われた時は魂が抜け落ちそうになったが、今ではギリギリ走れる様になってきた。
それもハジメがこれまでに得てきたバカげた能力のお陰だが、アーシュラさんは俺たちがハジメと同じ能力を持っているだろうと予想していたらしい。

俺とソニアはお互いに近接の壁と攻撃の両方をこなせる様になり、キャシーはフレイムキャノンなどの強力な攻撃を手に入れたので攻撃の幅が広がった。

問題はアンナの方で全員が自己再生能力を持った所為か、出番がほとんど無くなり拗ねている。
それでもキャシー同様に攻撃手段を得たので、攻撃に参加出来る様になったからパーティーの殲滅力は向上していた。



そんなある日のこと、残り3時間で師匠(アーシュラ)が待つ城に到着した俺たちに師匠がある重要な任務を与えてくれた。

「あなた達が今、人として生きられるのは婿殿のお陰なのは理解しているわよね?」

「はいっ! 師匠」

「婿殿の為に今の内からやれることが有るのだけど、あなた達にそれが出来るかしら?」

いつになく真顔で聞いてくる師匠、だが俺たち4人の答えは最初から決まっている。

「あいつの役に立てるのなら、何でもしますよ。 ハジメと再融合しろって命令だろうとお受けします」

ミシェルの即答にアーシュラさんも満足そうに頷いた。

「最終的には、再融合してもらうかもしれない。 だけどその前にして欲しいのは、この魔界に住むさまざまなモンスターを食べ歩いてきて欲しいのよ」

「モンスターを食べ歩く?」

何故、俺たちがモンスターを食べるとハジメの役に立つのだろう?

「これはね、ある実験も兼ねているの。 既に気付いていると思うけど、あなた達は婿殿の身体を素体にしているお陰で婿殿の能力を使うことが出来る。 すなわち、モンスターを食べることで能力を得られる力も兼ね備えているの。 だから、魔界で婿殿がまだ食していないモンスターを食べることで婿殿にもその能力が備わるのか知りたいのよ」

つまり俺たちのやる事は、ハジメの奴がまだ食ってないモンスターを見つけ出して食う。
それがそのままハジメも習得出来れば大成功、仮に失敗しても再融合すればそれまでに貯めてきた能力を全て与える事が出来るって訳か。

「面白そうですね、その実験。 ぜひ俺たちにやらせてください」

「物分りが良くて助かるわ。 でははい、これが魔界に生息しているモンスターの分布図よ。 クリスタルゴーレムやダイヤモンドタートルはもちろん、レインボーヘッドドラゴンも入れておいたからよろしく頼むわね」

クリスタルにダイヤモンド!?
胃袋は大丈夫かもしれないが、歯が折れないかこれ?

「あの師匠、レインボーヘッドドラゴンとは一体?」

「ああ、レインボーヘッドドラゴンは文字通り7色の頭を持つドラゴンのことよ。 それぞれが色にちなんだ属性のブレスを吐くの、食べれば文句なく婿殿は最強の存在になれるわ」

(師匠! ハジメよりも先に俺たちが最強になってしまいますが!?)

こうして、師匠発案の特訓第2弾。
魔界1周食い倒れツアー(別名、アーシュラ・ザ・イート・キャンプ)が始まった…。



ハジメの身体に異変が起きたのは、ミシェル達と別れてから3ヶ月が過ぎた辺りからだった。

「おかしいな」

「どうかしましたか、ハジメ?」

「いや、何故か知らないんだけど勝手に能力が増えているんだよ」

「道ばたに落ちてるカリントウに似たモンスターでも食べたのでは?」

口元に手を当てながら笑うセシリアに対して、ハジメの方はこめかみに青筋が浮かんでいた。

「誰が犬の○ンなんぞ食うか!」

早朝から夫婦漫才をしている2人の声で目覚めた他の4人も、続々と1階のリビングに下りてくる。

ルピナスに戻ってきてから1ヵ月後、ハジメは5人の女性と合同の結婚式を挙げた。
セシリア・ラン・ミリンダ・サリーネ・マリア。
親族の顔ぶれだけでも物凄い濃いメンバーとなったが、式自体は質素に行った。
ミリンダに配慮してのことだが、アーシュラさんが

「今日からはあなたも私の義理の娘、お義母様と呼んで良いのよ」

と言うと、即答で

「謹んで辞退します」

なんて答えるものだから、式が途中からミリンダとアーシュラさんの追いかけっこになってしまった。
しかしこれが、肉親に可愛がられた経験の無いミリンダの照れ隠しであることは全員承知している。
なのでアーシュラさんも本気で追いかけようとはしなかった、本気出したら最初の1歩目で捕まっていただろう。

こんな感じで新婚生活がスタートしているのだが、ミシェルの騒動以降システィナが何かをたくらんでいる様子は見受けられない。
力をさらに消費させることが出来たかも? と思ったが、アーシュラさんから釘を刺された。

「システィナの奴はミシェルに少しの加護を与えただけで、あとはフュージョンエティンを喰わせただけにすぎない。 まだ力は残っているはずだから、油断すると危険よ」

そんな中、次々と知らない能力が増えているのだ。
不安にならない筈が無かった。
一方その頃、ハジメを逆に不安にさせているとは知る由も無いミシェル達4人は奇策を用いてモンスターを食べ歩いていた。

バリバリボリボリ…。

「最初にダイヤモンドタートルで勝負をかけたのは正解だったな、凄い便利な能力が手に入った」

「ええ、ほんと。 まさか水晶で出来たゴーレムを噛み砕ける様になるなんてね…」

ミシェルはハジメに喰われなかったことで残った自分の能力【捕食融合】で、ダイヤモンドタートルを最初に喰ってしまったのだ!

そうして得た能力が【金剛膜】
任意の場所をダイヤモンドの膜でコーティング出来るというものだった。
ミシェル達はそれを使って、歯と歯ぐきをダイヤモンドでコーティング。
クリスタルゴーレムの関節を折ると、一斉に喰い始めたのだった…。






再び宣伝となりますが 契約を解除された元勇者、魔王からスカウトされる。 という作品を新たに投稿しております。

日本に突如異世界に通じるゲートが現れ多くの人が国営企業に冒険者として登録され派遣先で悪辣な行為を行い、政府はその稼ぎで更なる悪行を繰り返させていた。

そんな中、勇者として魔王四天王の1人と戦おうとしていた主人公は突如会社から契約解除され無職となる。
途方に暮れている主人公に声を掛けてきたのは、なんと契約期間中に倒すべき相手の魔王だった…というストーリーです。

冒険者とは名ばかりの犯罪者集団に成り果てている同じ日本人を相手に、主人公がどう向き合うのか描く予定です。
試しに読んで頂き、感想など貰えると嬉しいです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

男装バレてイケメン達に狙われてます【逆ハーラブコメファンタジー】

中村 心響
ファンタジー
☆タイトル「天地を捧げよ~神剣伝説~」から変更しました。改稿しなければならない箇所多数ですが、手間がかかる為、どんどん更新致します。修正は完結後に。 ・中世を舞台に繰り広げられるハチャメチャ逆ハーラブコメファンタジー! 「お前、可愛いな? 俺様の情夫になれよ……」 強引なレオに狙われたアルは一体どうなってしまうのかーー * 神に見初められし者だけに与えられ、その者だけに使い熟すことのできる剣ーー。 今や伝説さえも忘れさられ、語り継がれることもなくなった「神剣レイブレード」それを手にする者が現れた時、悪しき者が天地を紅く染める……。 [あらすじ] 生き延びるために故郷の村を出たアル達が辿り着いたのは王都ルバール大国だった……。生きて行く生活費を稼ぐために、アルはその国で開催される拳闘技大会の賞金を狙って出場を申し込みに行くが…… 笑い、感動逆ハーラブコメファンタジー! どんな展開になるのか著者も予想出来ません。 著者の書きたい放題ファンタジーでございます。 一部…出会い編 二部…闘技会編 三部…恋愛編 四部…伝説編 五部…冒険編 女子向けラブファンタジー ※空白効果や、記号等を多々利用して書いてあります。読み難い箇所、誤字脱字は後から修正致します。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

うちの娘が悪役令嬢って、どういうことですか?

プラネットプラント
ファンタジー
全寮制の高等教育機関で行われている卒業式で、ある令嬢が糾弾されていた。そこに令嬢の父親が割り込んできて・・・。乙女ゲームの強制力に抗う令嬢の父親(前世、彼女いない歴=年齢のフリーター)と従者(身内には優しい鬼畜)と異母兄(当て馬/噛ませ犬な攻略対象)。2016.09.08 07:00に完結します。 小説家になろうでも公開している短編集です。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

おっさん、勇者召喚されるがつま弾き...だから、のんびりと冒険する事にした

あおアンドあお
ファンタジー
ギガン城と呼ばれる城の第一王女であるリコット王女が、他の世界に住む四人の男女を 自分の世界へと召喚した。 召喚された四人の事をリコット王女は勇者と呼び、この世界を魔王の手から救ってくれと 願いを託す。 しかしよく見ると、皆の希望の目線は、この俺...城川練矢(しろかわれんや)には、 全く向けられていなかった。 何故ならば、他の三人は若くてハリもある、十代半ばの少年と少女達であり、 将来性も期待性もバッチリであったが... この城川練矢はどう見ても、しがないただの『おっさん』だったからである。 でもさ、いくらおっさんだからっていって、これはひどくないか? だって、俺を召喚したリコット王女様、全く俺に目線を合わせてこないし... 周りの兵士や神官達も蔑視の目線は勿論のこと、隠しもしない罵詈雑言な言葉を 俺に投げてくる始末。 そして挙げ句の果てには、ニヤニヤと下卑た顔をして俺の事を『ニセ勇者』と 罵って蔑ろにしてきやがる...。 元の世界に帰りたくても、ある一定の魔力が必要らしく、その魔力が貯まるまで 最低、一年はかかるとの事だ。 こんな城に一年間も居たくない俺は、町の方でのんびり待とうと決め、この城から 出ようとした瞬間... 「ぐふふふ...残念だが、そういう訳にはいかないんだよ、おっさんっ!」 ...と、蔑視し嘲笑ってくる兵士達から止められてしまうのだった。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

隷属の勇者 -俺、魔王城の料理人になりました-

高柳神羅
ファンタジー
「余は異世界の馳走とやらに興味がある。作ってみせよ」 相田真央は魔王討伐のために異世界である日本から召喚された勇者である。歴戦の戦士顔負けの戦闘技能と魔法技術を身に宿した彼は、仲間と共に魔王討伐の旅に出発した……が、返り討ちに遭い魔王城の奥深くに幽閉されてしまう。 彼を捕らえた魔王は、彼に隷属の首輪を填めて「異世界の馳走を作れ」と命令した。本心ではそんなことなどやりたくない真央だったが、首輪の魔力には逆らえず、渋々魔王城の料理人になることに── 勇者の明日はどっちだ? これは、異世界から召喚された勇者が剣ではなくフライパンを片手に厨房という名の戦場を駆け回る戦いの物語である。

処理中です...