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第16話 ダンジョン初挑戦と寝てる間に起きた珍事

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レーメルという謎の女性との遭遇の翌日、ようやくウィルはアーレッツに到着した。イスタブの神殿跡の場所を確認していたお陰で到着が遅れてしまった。アズシエルに仕えていた騎士達さえ余裕で捕らえていたウィルの攻撃を軽くかわせる実力を持つ謎の女性レーメル。

(闇の女王やオークを召喚したのが仮に嘘だったとしても、俺の攻撃を簡単に避けれるだけのステータスは持っていると考えておくべきだ。最強の存在になったと慢心していたかもしれない、初心に戻ってレベルを上げてステータスを向上させていこう)

そういう訳で修行に励むべく、ダンジョンの場所を先に確認していた訳なのだがダンジョンの中に現れるモンスターはステータスが強化されているらしく打たれ強く硬いと以前カサッポの村を訪れていた冒険者のパーティーが言っていた。

「パーティーを組んだ方が良いのかな?あ、でもシェルナーグを出る時に作ったスキル【光の群像】が有るからそれで分身と組めばいいんだ!?」

そうと決まれば、町の市場へ向かいダンジョンの中で寝泊りする為の準備を始める。水と食料は勿論だが寝袋と松明も一応予備も含めて購入しておいた。腐る心配も無いから多く買ってしまっても全く困らない、1か月分近く購入してそれを全て収納したので周囲の人達は驚いていた。

この日は早めに寝て翌朝日が昇る前にアーレッツを出てイスタブの神殿跡に向かった、昼前にダンジョンの入り口に着くと入り口では冒険者ギルドの簡易出張所が設けられ入る事の出来る人間を制限していた。

「止まれ!ここから先はダンジョンの入り口となっている、中級冒険者から上の者・LV50以上・集団武功もしくは単身武功C以上の者しか入る事を許可されていない。それ以下の者は即刻引き返し腕を磨き直して来い!!」

ウィルは少し威圧的な係員にカードを差し出して確認させた。

「初級冒険者でLV30、貴様舐めてるのか? って単身武功がBだと!?あなたは一体何者ですか?」

言葉遣いが途中から変わりだした、自分よりも上の人間だと判断すると態度を改める小物臭がする。

「単身武功はきっとシェルナーグを襲っていたオークを倒したのが原因だと思うよ」

「それじゃあ、あなた様がシェルナーグを単身で救った冒険者なのですか!?」

係員が大声でその事を言うもんだから、周囲のパーティーの連中がウィルの顔をまじまじと見てきて何だか恥ずかしくなってきた。

「ダンジョンに入っても問題無いなら、通らせてもらうけどいい?」

「パーティーを組まれる相手は先に中に入られているのですか?」

「えっ?1人で中に入るつもりなんだけど」

「1人はちょっと厳しいですよ、あなた様が倒したオーク達よりも高レベルのモンスターがゴロゴロ居ます。この周辺を探せばあなたの武名でパーティーに入れてくれる所も簡単に見つかる筈ですよ」

見れば、周囲のパーティーの連中が俺に声を掛けようとウズウズしだしていた。残念だけど当初の予定通り1人で入るから万が一声を掛けてきたら丁重に断らないといけないな。

「大丈夫、今は1人だけどすぐに6人になるから」

やった!? 周囲に居る連中はウィルが声を掛けてパーティーに入れてもらおうとすると勘違いをするが、次の瞬間係員も含め度肝を抜かされた。

「【光の群像】歩兵3弓兵2」

ウィルを囲む様に突然光の兵士が5人浮かび上がり、その内の3人が剣と盾・残り2人は弓と短剣を装備していた。

「こういう訳で1人でパーティー組めますので、それじゃあ行ってきま~す!」

すたすたとダンジョンに潜っていくウィルと呆然と眺めている係員と冒険者達。何とか正気に戻った冒険者の1人が係員に問い詰めだした!

「おい!あんな召喚のスキル聞いた事がねえぞ、一体ありゃあ何てスキルだ!?」

「わ、分かりません。自分も初めてみました」

「くそっ!詳しく聞いておけば良かった」

「どうしたんだ、そんなに慌てて?」

「あいつのスキルの情報を国王の側近に売れば、ぼろ儲け出来たじゃねえか!?」

係員と冒険者達は目の前に大金が転がっていたのに拾い損ねた事をしばらく後悔し続けるのだった。その頃ダンジョンに入ったウィルと分身の一行は壁自体が光り松明が不要だったダンジョンの作りに驚かされていた。

「うわぁ!?壁自体が淡く光るお陰で松明の必要なんて無かったよ。それじゃあ、ちょっとMAPを確認してみようかな?」

MAPを開いたウィルは最初目を疑ってMAPを閉じる、再び開いても同じ画面だったのでようやく確信した。

(マッピングの必要無いぞ、コレ)

マッピング、ダンジョンの中は入り組んでいて迷いやすい。それを防ぐ為に通ったルートを記録しておいて後日迷わない様にするのがマッピングである。無駄な戦闘や食料の消費を減らす意味でも大切な冒険者の必須作業なのだが地域安全安心MAPに映し出された映像はその階の詳細な地図となっていた。宝箱の場所や罠が設置されている場所など初見なのに最短ルートを通る事が出来る。索敵可能半径が5kmの為ダンジョン丸ごと調べてくれている様だ。

けれども、この便利なMAPの問題点も分かった。ダンジョンの中はモンスターで一杯、それら全てが敵性反応を示す為にアラームが鳴ってしまうのである。そして折角呼び出した光の分身達が敵性反応を示したモンスターを自動攻撃する為にウィルの傍を離れてしまったのである。

「あっこら!持ち場を離れちゃ駄目だろ!!ダンジョンのマッピング不要なのは嬉しいけど、この事態は想定していなかった」

だが不思議な事に、分身達が離れてしばらくしてから分身を通して経験値とお金が入りだした。

(どうやら、分身達がモンスターを倒し始めた様だ。しかし朝早く出てきた所為か眠くなってきたな。分身達は自動で攻撃してくれるから大丈夫みたいだし少しだけ仮眠を取るとするか)

ウィルは保管庫の中から寝袋を1つ取り出した、そしてその中に入るとダンジョンの中にも関わらず通路上で寝始めた。寝てる間もMAP上で敵性反応を示すモンスターを駆り続ける分身達。仮眠のつもりが、結局8時間程ウィルは寝てしまっていた。

「う~ん、よく寝た。ってあれ何これ!?」

ウィルの目の前には大量の装備と素材類が所狭しと並べられていた、分身達が戦闘した後にウィルが必要とするかもしれないと持ち帰っていたのだ。

「分身さん、有難う。これだけドロップが有るって事はレベルも1つ位は上がっているかな?」

ウィルはドキドキしながら、自分のレベルが上がっているのかどうか確かめた・・・。

「レベル42・・・寝てる間に12もレベルが上がってるよ」

分身達は物凄い勢いで最初の階層のモンスターを倒していたらしい。
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