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七、四
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おっさんが掃除をしている間、俺は無事だった和室に座布団を並べてから雉子を(翼に絡みついていた湿布をはがしてから)寝かせ、額には水で濡らしたタオルを置いた。
花御堂はフレンチトーストを作ってくれた。トッピングはきな粉と蜂蜜で茶トラのネコのアートだ。俺としては輪切りのレモンピールを乗せてチョコレートソースをぶっかけたところにバニラアイスを添えるのが最強だとひっそり思っているがいちゃもんはつけるまい。朝食の間はおっさんがうちわで雉子を扇いでいた。
「ワァーッ! ごめんなさいごめんなさい!」
唐突に目覚めた雉子はじたばたしながら虚空に謝る。「鷽姫様はいないですよ」とおっさんが落ち着かせると、雉子は正気を取り戻して息を整えた。「怖かった……」と胸を押さえて大きなため息。
「あの、何か、ありましたか……?」
「キジコは性懲りもない男だと言っていたぞ」
川中島が答えた。トーストだけでは飽き足らず、フレンチトーストまでお呼ばれしている。お前は食いしん坊か!
「そう……」
雉子は肩を落とし、目を伏せる。
「まだ何か隠しとるん?」
俺は頬張りながら問いかけた。
「隠してる……と言われても」
「キジコの夢はそんなに知られたくないのか?」
「夢……?」
自称天使の問いかけに、雉子は素朴な目をぱちくりとした。
「余程の悪だくみか?」
「悪だくみだなんて! そんな、とんでもないよ……」
「言ってみろ。馬鹿にはしない」
それでも雉子は「ウン……」と意気消沈して俯くだけ。
「まあまあ、雉子さん。あ、具合はどうですか? 今日畑に行くのやめときましょっか?」
「行きます」
おっさんの気づかいに雉子は首を伸ばす。
「畑って、田舎にあるっていう?」
俺はおっさんに尋ねる。
「そうそう。そこには僕の息子がいまして、一緒に野菜を」
「息子さんは鳥人間のことを知ってるんスか?」
「はい、もちろん。良ければ一緒に来ます? 川だってあるし。雉子さんは今日畑仕事じゃなくって飛ぶ練習しましょ。リハビリリハビリ」
雉子は「はい」と従順にうなずく。完全におっさんに懐いているようだ。
「おいオーギガヤツ。私は川に行きたいぞ」
「僕も行きたいです。地球ふしぎ大自然」
川中島と花御堂はウキウキの行く気満々で、俺は否応なしにピクニックに参加させられる羽目になった。
「じゃあ今日のトウキョウスカイホームはお休みということにしましょう!」
おっさんよ。自営業とはいえ、そのような調子でいいのかな?
ともかく、俺たちは準備をして三輪自動車に乗り込んだ。俺はもちろん助手席。バックミラーをのぞけば右から現地球人に自称天使に鳥人間と、とんでもない光景だ。仙人は……おそらく車上にでも寝そべっているだろう。
車を発進させたおっさんは例の言葉を発し、道を曲がった。
ここはどこなのだろう。青々とした山と田畑に囲まれていた。
「地面の上を直接走っているのを感じます」
タイヤをうっとりとのぞき込む花御堂。揺れながら農道を走る車。俺は『となりのトトロ』の出だしを思い出した。雉子はぼんやりと遠くを眺めていた。
「父さーん!」
男がトウモロコシ畑の中から手を振った。おっさんの息子、武彦は愛想も体格も良かったが、顔も声もおっさんに瓜二つだった。
「わぁ、ナスのようにいい顔をしてますね! いいツヤだぁ」
花御堂と対面してからの第一声に俺は笑いをこらえた。
東京親子が農作業をこなしている間、俺たちは自由行動を取った。川中島は小川で水遊びをし、花御堂は持ってきた立体映像の図鑑とにらめっこしながら生き物観察をした。俺は丘で寝そべった。
やわらかそうな綿雲。スズメが飛んでいる。ヨモギの匂いがする。シロツメクサは真珠のように白く、バッタがその上から跳ねる。
手の甲がムズムズした。アリが一匹。指の間をウロチョロするのをしばらく観察して、フッと吹き飛ばしてやる。
「よし!」
雉子の気合の声に俺は顔を向けた。両翼を羽ばたかせながら丘を駆け下り、ジャンプ、ジャンプ。バランスを崩して転がっていく。
「ほれ、キジさん。がんばって」
農作業をしている腰の曲がったお婆さんが応援する。雉子は「どうも」と低くした頭をかく。鳥人間がいても平然として微笑みかけているお婆さんに、俺は不思議な気分だった。
化け鳥になった雉子。昔の暮らしに戻れず、人間世界にも解け込めない雉子。川中島や花御堂を見習おうとしても、人工物に覆われたあの場所で生きるのは酷なのだろうか。でもここならどうだ。ここは姿を隠す必要がない。あるがままに、自然体でいられる場所なのだ。
ここは本当に俺がいた泰京の街と同じ世界にあるのだろうか。おっさんの例の呪文で、実は違う世界に来てしまっているのではないだろうか。電車の音もバイクの轟々たる響きもなければ、選挙の演説も音楽も聞こえない。あまりにも平穏過ぎるのを肌身に感じて不安すら覚え、脳内にひとまず玉置浩二の『田園』が再生された。
雉子は練習を繰り返し、何度も転がり落ちた。彼は一息つきながら俺の隣に腰を下ろす。草の匂いがした。
「調子はどう」
「うん。良い調子」
草まみれなのに。モンキチョウが頭に止まったから失笑すると「えっ、何?」と顔を動かす彼。離れるモンキチョウ。
「あ、チョウだ」
捕まえる気もないのにつかむ仕草をする雉子。じゃれているように見えた。しばらくモンキチョウは彼の手の回りを逃げ回り、行ってしまった。
「……雉子の夢ってさ」
黄色い目玉がこちらを見下ろす。
「……やりたいことって何?」
「やりたいこと」
雉子は正面を向いて、遠くを見た。俺は言う。
「ここならさ、自由に飛べるだろうし。鷽姫様は高が知れてるなんて言ってたけど。故郷じゃなくってもここは自然いっぱいだし。別に奪う訳じゃあないんだから。共有っていう選択だってあるだろ。他に何があるげん?」
「鷽姫様が言っていたでしょう? ぼくは選ばれし雉なんだって。でもそうじゃないんだ。だって最初にぼくを選んでくれたのはあの人だもの」
あの人。
「鷽姫様や、他の上様方はとても偉大だし、尊敬するけど。……それでもぼくが最初に尊敬して、死んでも守りたいって思ったのはあの人だからね。だから他のためには死にたくないんだよね」
雉子は悲壮感を漂わせながら膝を抱え、遠い目をしたまま足元の影を見る。思い出しているのだ。
行きましょう 行きましょう
あなたについて何処までも
家来になって行きましょう
そんな風に。
「そんなに凄い人だったん?」
「うん。だからこんなこと、くちばしが取れても上様に言えないよ。怖かったなぁ、鷽姫様。死ぬかと思っちゃった」
雉子は足先をソワソワさせながら吐露して、冗談めかすように笑った。風が爽やかに吹く度に、彼にまとわりついていた草が飛んでいく。あ、四つ葉のクローバー。
「……また会えるんじゃないんかな?」
「え……そうかな?」
「ほら、なんて言うんだっけな? ソウルメイトってやつ」
「そおるめいと?」
「魂の繋がりってやつ」
「魂かぁ」
雉子はすんなりと納得してしみじみと空を仰いだ。
「見たらわかるかなぁ?」
「出会う運命にあるなら自然に距離が狭まってるもんだよ。地上に降りたのも一つのステップで。それは次に繋がってる」
「へえ……君はすごいや。達観しているよ」
「いや、それらしいことを言ってるだけやし。だって俺まだ生まれて間もないし、お前に比べりゃあ赤ちゃんみたいなもんやし。社会のことなんかこれっぽっちも知らねぇ甘ちゃんやぜ」
「魂に年齢は関係ないよ。年齢は肉体の問題だからね」
「なるほど」
「そおるめいとかぁ。うふふ、楽しみになっちゃった」
目を細めて首をくねくねと曲げる。元気を取り戻したようでよかった。
「おいオーギガヤツ!」
川中島……? いやいやまさか。名前に“桃”が入っているだけではないか。俺は頭を振って否定する。
「見ろオーギガヤツ。ザリガニだ」
奴は丘をのしのしと上ってきて、泥だらけのザリガニを見せびらかす。ザリガニは大きなハサミで俺を威嚇する。泥臭い。
「見ろキジコ」
彼に近づける川中島。雉子はザリガニを凝視したかと思うと、パクリと食べてしまった。
「うおおおおおっ!? おろろろろろうおうおうおう食うんかい!」
俺は驚いて上体を起こした。バキバキむしゃむしゃ。川中島はザリガニをつかんでいた手をそのままに呆気に取られている。憐れザリガニ。
「また飛ぶ練習しなくちゃ」
精力をつけた雉子は「よいしょ」と立ち上がる。
「おい、手本見せてやれよ」
川中島に言う俺。
「私は翼で飛んでいるんじゃないぞ。これは飾りだからな」
「えっ、それは飾りなの?」
と、雉子。
「そうだ。これはこのポンチョにくっつけてあるのだ。ちゃんとここにだな、クリーニングする時のタグが」
「えっどこいね?」
俺も気になって翼を見る。
「ほらここだ」
「どこいね? 白くてよく見えねー」
「あ、コレだよ扇ヶ谷君」
「マジかよ!」
貴重な休日が嵐のように過ぎて、穏やかに失われていく。爽やかな風を感じながら新鮮なトウモロコシやトマトを食べ、川釣りを楽しむ。まあ、こんな日も悪くないと思った俺がいた。
……ところが、だ。アクベンスさんの言った嵐というのは過ぎ去るどころかまだ片足を突っ込んだばかりだったのである。
花御堂はフレンチトーストを作ってくれた。トッピングはきな粉と蜂蜜で茶トラのネコのアートだ。俺としては輪切りのレモンピールを乗せてチョコレートソースをぶっかけたところにバニラアイスを添えるのが最強だとひっそり思っているがいちゃもんはつけるまい。朝食の間はおっさんがうちわで雉子を扇いでいた。
「ワァーッ! ごめんなさいごめんなさい!」
唐突に目覚めた雉子はじたばたしながら虚空に謝る。「鷽姫様はいないですよ」とおっさんが落ち着かせると、雉子は正気を取り戻して息を整えた。「怖かった……」と胸を押さえて大きなため息。
「あの、何か、ありましたか……?」
「キジコは性懲りもない男だと言っていたぞ」
川中島が答えた。トーストだけでは飽き足らず、フレンチトーストまでお呼ばれしている。お前は食いしん坊か!
「そう……」
雉子は肩を落とし、目を伏せる。
「まだ何か隠しとるん?」
俺は頬張りながら問いかけた。
「隠してる……と言われても」
「キジコの夢はそんなに知られたくないのか?」
「夢……?」
自称天使の問いかけに、雉子は素朴な目をぱちくりとした。
「余程の悪だくみか?」
「悪だくみだなんて! そんな、とんでもないよ……」
「言ってみろ。馬鹿にはしない」
それでも雉子は「ウン……」と意気消沈して俯くだけ。
「まあまあ、雉子さん。あ、具合はどうですか? 今日畑に行くのやめときましょっか?」
「行きます」
おっさんの気づかいに雉子は首を伸ばす。
「畑って、田舎にあるっていう?」
俺はおっさんに尋ねる。
「そうそう。そこには僕の息子がいまして、一緒に野菜を」
「息子さんは鳥人間のことを知ってるんスか?」
「はい、もちろん。良ければ一緒に来ます? 川だってあるし。雉子さんは今日畑仕事じゃなくって飛ぶ練習しましょ。リハビリリハビリ」
雉子は「はい」と従順にうなずく。完全におっさんに懐いているようだ。
「おいオーギガヤツ。私は川に行きたいぞ」
「僕も行きたいです。地球ふしぎ大自然」
川中島と花御堂はウキウキの行く気満々で、俺は否応なしにピクニックに参加させられる羽目になった。
「じゃあ今日のトウキョウスカイホームはお休みということにしましょう!」
おっさんよ。自営業とはいえ、そのような調子でいいのかな?
ともかく、俺たちは準備をして三輪自動車に乗り込んだ。俺はもちろん助手席。バックミラーをのぞけば右から現地球人に自称天使に鳥人間と、とんでもない光景だ。仙人は……おそらく車上にでも寝そべっているだろう。
車を発進させたおっさんは例の言葉を発し、道を曲がった。
ここはどこなのだろう。青々とした山と田畑に囲まれていた。
「地面の上を直接走っているのを感じます」
タイヤをうっとりとのぞき込む花御堂。揺れながら農道を走る車。俺は『となりのトトロ』の出だしを思い出した。雉子はぼんやりと遠くを眺めていた。
「父さーん!」
男がトウモロコシ畑の中から手を振った。おっさんの息子、武彦は愛想も体格も良かったが、顔も声もおっさんに瓜二つだった。
「わぁ、ナスのようにいい顔をしてますね! いいツヤだぁ」
花御堂と対面してからの第一声に俺は笑いをこらえた。
東京親子が農作業をこなしている間、俺たちは自由行動を取った。川中島は小川で水遊びをし、花御堂は持ってきた立体映像の図鑑とにらめっこしながら生き物観察をした。俺は丘で寝そべった。
やわらかそうな綿雲。スズメが飛んでいる。ヨモギの匂いがする。シロツメクサは真珠のように白く、バッタがその上から跳ねる。
手の甲がムズムズした。アリが一匹。指の間をウロチョロするのをしばらく観察して、フッと吹き飛ばしてやる。
「よし!」
雉子の気合の声に俺は顔を向けた。両翼を羽ばたかせながら丘を駆け下り、ジャンプ、ジャンプ。バランスを崩して転がっていく。
「ほれ、キジさん。がんばって」
農作業をしている腰の曲がったお婆さんが応援する。雉子は「どうも」と低くした頭をかく。鳥人間がいても平然として微笑みかけているお婆さんに、俺は不思議な気分だった。
化け鳥になった雉子。昔の暮らしに戻れず、人間世界にも解け込めない雉子。川中島や花御堂を見習おうとしても、人工物に覆われたあの場所で生きるのは酷なのだろうか。でもここならどうだ。ここは姿を隠す必要がない。あるがままに、自然体でいられる場所なのだ。
ここは本当に俺がいた泰京の街と同じ世界にあるのだろうか。おっさんの例の呪文で、実は違う世界に来てしまっているのではないだろうか。電車の音もバイクの轟々たる響きもなければ、選挙の演説も音楽も聞こえない。あまりにも平穏過ぎるのを肌身に感じて不安すら覚え、脳内にひとまず玉置浩二の『田園』が再生された。
雉子は練習を繰り返し、何度も転がり落ちた。彼は一息つきながら俺の隣に腰を下ろす。草の匂いがした。
「調子はどう」
「うん。良い調子」
草まみれなのに。モンキチョウが頭に止まったから失笑すると「えっ、何?」と顔を動かす彼。離れるモンキチョウ。
「あ、チョウだ」
捕まえる気もないのにつかむ仕草をする雉子。じゃれているように見えた。しばらくモンキチョウは彼の手の回りを逃げ回り、行ってしまった。
「……雉子の夢ってさ」
黄色い目玉がこちらを見下ろす。
「……やりたいことって何?」
「やりたいこと」
雉子は正面を向いて、遠くを見た。俺は言う。
「ここならさ、自由に飛べるだろうし。鷽姫様は高が知れてるなんて言ってたけど。故郷じゃなくってもここは自然いっぱいだし。別に奪う訳じゃあないんだから。共有っていう選択だってあるだろ。他に何があるげん?」
「鷽姫様が言っていたでしょう? ぼくは選ばれし雉なんだって。でもそうじゃないんだ。だって最初にぼくを選んでくれたのはあの人だもの」
あの人。
「鷽姫様や、他の上様方はとても偉大だし、尊敬するけど。……それでもぼくが最初に尊敬して、死んでも守りたいって思ったのはあの人だからね。だから他のためには死にたくないんだよね」
雉子は悲壮感を漂わせながら膝を抱え、遠い目をしたまま足元の影を見る。思い出しているのだ。
行きましょう 行きましょう
あなたについて何処までも
家来になって行きましょう
そんな風に。
「そんなに凄い人だったん?」
「うん。だからこんなこと、くちばしが取れても上様に言えないよ。怖かったなぁ、鷽姫様。死ぬかと思っちゃった」
雉子は足先をソワソワさせながら吐露して、冗談めかすように笑った。風が爽やかに吹く度に、彼にまとわりついていた草が飛んでいく。あ、四つ葉のクローバー。
「……また会えるんじゃないんかな?」
「え……そうかな?」
「ほら、なんて言うんだっけな? ソウルメイトってやつ」
「そおるめいと?」
「魂の繋がりってやつ」
「魂かぁ」
雉子はすんなりと納得してしみじみと空を仰いだ。
「見たらわかるかなぁ?」
「出会う運命にあるなら自然に距離が狭まってるもんだよ。地上に降りたのも一つのステップで。それは次に繋がってる」
「へえ……君はすごいや。達観しているよ」
「いや、それらしいことを言ってるだけやし。だって俺まだ生まれて間もないし、お前に比べりゃあ赤ちゃんみたいなもんやし。社会のことなんかこれっぽっちも知らねぇ甘ちゃんやぜ」
「魂に年齢は関係ないよ。年齢は肉体の問題だからね」
「なるほど」
「そおるめいとかぁ。うふふ、楽しみになっちゃった」
目を細めて首をくねくねと曲げる。元気を取り戻したようでよかった。
「おいオーギガヤツ!」
川中島……? いやいやまさか。名前に“桃”が入っているだけではないか。俺は頭を振って否定する。
「見ろオーギガヤツ。ザリガニだ」
奴は丘をのしのしと上ってきて、泥だらけのザリガニを見せびらかす。ザリガニは大きなハサミで俺を威嚇する。泥臭い。
「見ろキジコ」
彼に近づける川中島。雉子はザリガニを凝視したかと思うと、パクリと食べてしまった。
「うおおおおおっ!? おろろろろろうおうおうおう食うんかい!」
俺は驚いて上体を起こした。バキバキむしゃむしゃ。川中島はザリガニをつかんでいた手をそのままに呆気に取られている。憐れザリガニ。
「また飛ぶ練習しなくちゃ」
精力をつけた雉子は「よいしょ」と立ち上がる。
「おい、手本見せてやれよ」
川中島に言う俺。
「私は翼で飛んでいるんじゃないぞ。これは飾りだからな」
「えっ、それは飾りなの?」
と、雉子。
「そうだ。これはこのポンチョにくっつけてあるのだ。ちゃんとここにだな、クリーニングする時のタグが」
「えっどこいね?」
俺も気になって翼を見る。
「ほらここだ」
「どこいね? 白くてよく見えねー」
「あ、コレだよ扇ヶ谷君」
「マジかよ!」
貴重な休日が嵐のように過ぎて、穏やかに失われていく。爽やかな風を感じながら新鮮なトウモロコシやトマトを食べ、川釣りを楽しむ。まあ、こんな日も悪くないと思った俺がいた。
……ところが、だ。アクベンスさんの言った嵐というのは過ぎ去るどころかまだ片足を突っ込んだばかりだったのである。
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