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五、四
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俺とサンシン、松先輩は小さなライブハウスのある建物に赴いた。ライブハウスは地下にあり、一階はCDショップとなっている。ヴィジュアル系はあるようだが、ヒップホップであったりレゲエであったり国際色が強く、サンシンの好きなアニメはもちろんのこと、アイドル系はそろえられていないようだ。
表のスタンド看板のポスターにはメインとなるインディーズバンドの背徳感のあるダークな画像が載っていて、下の欄に川中島がいるバンド『えんじぇるす』があった。メインバンドの名前は何て読むのか、記号交じりで俺の語学力ではわからなかった。
「やっぱみんなこれ目的だろーな」
「当たり前だろ」
浮かれポンチなサンシンを尻目に、俺が先に階段を下りた。コンクリート壁の薄暗いフロア。ワンドリンク制だったため受付で五百円を支払う。レモンソーダがなかったため、代替でジンジャーエールにした。松先輩はミルクティー、サンシンはコーラだ。
映るのはどいつもこいつも毒々しくぶっ飛んだファッションだった。この日のためにこしらえたのか普段から決めているのか、ベルトとシルバーアクセサリー、スタッズを何個も取りつけた奴ばかり。俺たちのようにカジュアルな服装は少数派で場違いで居心地が悪い。
えんじぇるすをライブに招いたのは比較対照させるためだろう。川中島はこいつらにとって面白いに違いないと見込んで。カジュアルファッションの輩はおそらくえんじぇるすを応援しに来たのではないだろうか。しかし彼らは既に後悔の色を出していた。ドリンクをちびりちびりと飲みながら、取って食われるんじゃないかという具合に肩身が狭そうにしている。川中島が失笑の対象になると予想が済んでいるのだ。笑われるどころか興ざめになると俺は思っている。
俺たちは中央列まで進むことができた。松先輩の肩にぶつかると、彼女は感電したかのように肩を跳ね上げ、大袈裟に隙間を開けた。どのみち他の観客に押されて戻ってくるのだが。これから静かにしていなければならないのだと思ってか、数珠を鳴らすまいと右手をぎこちなく宙でさまよわせている。あの魔術を生み出す魅惑の手とは打って変わって、世渡りの苦手そうな人間じみているではないか。
「あー俺、緊張してきた! オギもこういうとこでやりゃあ良かったんになあ」
一方で左のサンシンは気持ちを高ぶらせている。何やら何か俺に何か言ったようだが何も聞こえなかったので無視する。松先輩の方はやがて緊張を失わせてぼんやりとステージを見るようになった。
彼女の横顔をこんなに間近で見ることは今までなかった。似非ソバージュからのぞかせる目鼻。いわゆる瓜実顔の範囲に入るのではなかろうか。体積のある似非ソバージュの方に気を取られがちだがけして悪くない顔立ちだし、背筋を伸ばして顎を引けばファッションはさておいてうんとスタイルは好ましくなるし顔色もよく見えるはずである。いくらテーブルマジックは手元が命とはいえ、マジシャンとて外見は大事だ。今までの大会ではどうしていたのか、その際はちゃんとした装いをして、ささくれも取り除いて手入れしているのか、気になってくる。
「窮屈じゃないっスか?」
「うーぅ」
平気そうだ。人が集まるにつれて場の温度が一度くらい上がったのではなかろうか。人生上あまり関わりのなかった部類による人混みで酔いそうになってきた頃、全体の照明が落とされステージのスポットライトがついた。奴の銀髪が眩かった。
えんじぇるすだ。周囲はざわつく。ポンチョを着た天使は後方で突っ立っていて、ボーカルよりも目立っていた。
「おい、見ろよ。天使だぜ」とか「いくらかかったんだろうな? あの翼」とか「何をリスペクトしてんだ?」とか。小馬鹿にした声が飛び交った。想像通りである。
「ハクトーさーん!」
サンシンが空気を読まずに手を振る。川中島も右手を上げてこいつに応えた。
ボーカルがマイクに手を添える。赤ヒョウ柄もなかなか派手であるはずなのに、結局は天使の存在感に負けてしまっているのがよろしくない。
「皆さん、初めまして、でしょうか。えんじぇるすです。ぼくはボーカルのトールといいます。それからキーボードのツカサ。ギターのタケ。そして同じくギターのハクトーさん」
訛りの抜けきれていないぎこちないメンバー紹介をすると、誰かが「エンジェル伝説ハクトー」と言い出して観客から笑いが起きた。トールははにかむ。俺の顔はたちまち火照った。
「初めてのライブハウスで、えー緊張しております。ちょっと予定を変更することになりまして、一曲しか披露できません、ご了承ください」
「一曲で十分だぞー」
冷やかされてもトールは柔和に笑顔を絶やさない。ステージに立つ以上、彼は彼で予測はしていて覚悟していたのだろうか。それにしても、なぜ一曲しか歌えなくなったのだろうか。裏で問題でも起きたのだろうか。
「そこでぼくらは、ハクトーさんがメンバーに加わって初めてセッションした思い出の曲、堀内孝雄さんの“君のひとみは10000ボルト”をやらせていただきます」
「自分の曲をやんねぇのかよー」
「黙れ。呪うぞ」
松先輩が声を押し殺して隣の男を脅し萎縮させる。空恐ろしいくらいに目に物言わす彼女の蛇のにらみの方が毒々しいかもしれない。
すると、川中島はおもむろにまた右手を上げた。
「私はこの曲が好きだぞ。華がある。トールとツカサとタケが私のために選んだ曲だ」
奴がしゃべりだした途端、しんとなった。奴の分のマイクはなかった。それなのに明徴に声が届いたのはフロアの構造上によるものだと思う。
「私は三人の演奏が好きだぞ。初めて会った頃に比べると、タケもうまくなった」
苦笑するタケ。
「私は三人が好きだからな。だから私がいなくなってもちゃんと曲を聞いてくれるファンがたくさんできるように私は協力する。私は天使だからな」
ニッと口角を吊り上げた。神聖さが感じられない不敵な笑みだった。「よっ、ハクトーさん!」とサンシンの合いの手が響いた。川中島は上げていた片手をタケに向けた。タケもうなずき、アコギのボディーをタン、タンと叩く。そして彼、トール、キーボード村谷はスッと息を吸った。
三人はアカペラでいきなりサビを歌った。タケが高音、キーボード村谷が低音でハモらせた。
サビの終わりに本来の前奏は始まった。川中島がサイドギターだった。タケのロックテイストのギターに折り重なるようにして、キーボード村谷のポップなキーボードに身を任せるようにして。それでいて奴が二人をまとめ上げ、トールを後押ししているように思えた。
奥の人まで聞こえるようにトールはAメロを歌う。まあまあできたアレンジだった。タケは左右にリーゼントごと体を揺らしてリズムを取り、時に「へい!」と盛り上げた。
トールの力んだ歌声に触発され、一部の観客がつられてサビを口ずさんでいく。曲のタイトルを何度も歌う。タケのハイトーンボイス自体はクリスタルキングの田中昌之を彷彿とさせたが、トリオでハモるとTHE ALFEEが脳裏によぎるのだ。東京のおっさんが応援しているのもわかる気がした。
終盤に近づくにつれ、トールの目が潤沢に光る。チャラそうな外見の男の、感性豊かな涙にやられて「トール!」と知らない女が感極まる。これだから、バンドは女にモテると思われるのだろうか。
三人は『君のひとみは10000ボルト』を歌い上げた。トールは頭を下げる。
「聞いてくれて、ほんまにありがとうございました……っ! おおきにです!」
鼻をすする音をマイクが拾った。タケもキーボード村谷も満足そうだった。「よし、ずらかろう」とトールが仲間に振り向いた。
「アンコール!」
サンシンの万歳に俺は戦慄した。嘘であってほしかった。トールとタケとキーボード村谷は豆鉄砲を食らったかのような顔をして、川中島はまた不敵な笑みを浮かべている。
「お、おいサンシン」
「アンコール! アンコール!」
俺は口を塞ごうとしたが馬鹿力にはかなわず、サンシンはアンコールを求め続けた。
「アンコール! アンコール!」
おっさんの声だ。
「もう一曲歌っちゃいましょう!」
花御堂も同伴だ。仕事から抜け出してきたらしい。事情があって一曲しか歌えないというのに。前座でアンコールなんて、俺は聞いたことがない。
「アンコール。アンコール」
俺は寒気が止まらなかった。これは元宇宙人の洗脳に違いない。“アンコール”という宇宙の呪文によって毒電波を頭皮から発し、人間に手拍子をやるよう命令しているのだ。トールらは湧き上がってきたアンコールに呆然としている。
「おい、オーギガヤツ。アンコールしないか」
また川中島が人前で俺を呼ぶ。
「ほら、あなたも」
松先輩が俺にアンコールを促した。俺は舌打ちする。手拍子を始めてやる。毒電波の影響を受ける前に自分の意思でやるのだ。ああ、かわいそうに。みんな被害者だ。あとでなんであんなことをしてしまったのだろうって後悔するのだ。
「オリジナル、あるんだろー?」
「歌えよ! 聞いてやるから!」
次々と誰かが言う。集団心理が働きだして、冷やかしすらアンコールの強要を助長させた。帰りたかった。
「どうする?」
トールが鼻を手の甲でこすり、嬉しそうに仲間に確認した。ああ、これはもうだめだ。ステージ上にまで感染してしまった。
「ここはやるだろ?」
キーボード村谷がウインクした。メンバー同士の相談が終わり、トールはジーパンの後ろポケットからハーモニカを取り出した。
「では、季節にはまだ早いですが。聞いてください。“君の頭にはヒマワリが咲いている”」
笑う観客。キーボード村谷は落ち着いたテンポで、優しくしっとりとしたメロディーを流す。トールは息を整え、静かに口を開けた。
表のスタンド看板のポスターにはメインとなるインディーズバンドの背徳感のあるダークな画像が載っていて、下の欄に川中島がいるバンド『えんじぇるす』があった。メインバンドの名前は何て読むのか、記号交じりで俺の語学力ではわからなかった。
「やっぱみんなこれ目的だろーな」
「当たり前だろ」
浮かれポンチなサンシンを尻目に、俺が先に階段を下りた。コンクリート壁の薄暗いフロア。ワンドリンク制だったため受付で五百円を支払う。レモンソーダがなかったため、代替でジンジャーエールにした。松先輩はミルクティー、サンシンはコーラだ。
映るのはどいつもこいつも毒々しくぶっ飛んだファッションだった。この日のためにこしらえたのか普段から決めているのか、ベルトとシルバーアクセサリー、スタッズを何個も取りつけた奴ばかり。俺たちのようにカジュアルな服装は少数派で場違いで居心地が悪い。
えんじぇるすをライブに招いたのは比較対照させるためだろう。川中島はこいつらにとって面白いに違いないと見込んで。カジュアルファッションの輩はおそらくえんじぇるすを応援しに来たのではないだろうか。しかし彼らは既に後悔の色を出していた。ドリンクをちびりちびりと飲みながら、取って食われるんじゃないかという具合に肩身が狭そうにしている。川中島が失笑の対象になると予想が済んでいるのだ。笑われるどころか興ざめになると俺は思っている。
俺たちは中央列まで進むことができた。松先輩の肩にぶつかると、彼女は感電したかのように肩を跳ね上げ、大袈裟に隙間を開けた。どのみち他の観客に押されて戻ってくるのだが。これから静かにしていなければならないのだと思ってか、数珠を鳴らすまいと右手をぎこちなく宙でさまよわせている。あの魔術を生み出す魅惑の手とは打って変わって、世渡りの苦手そうな人間じみているではないか。
「あー俺、緊張してきた! オギもこういうとこでやりゃあ良かったんになあ」
一方で左のサンシンは気持ちを高ぶらせている。何やら何か俺に何か言ったようだが何も聞こえなかったので無視する。松先輩の方はやがて緊張を失わせてぼんやりとステージを見るようになった。
彼女の横顔をこんなに間近で見ることは今までなかった。似非ソバージュからのぞかせる目鼻。いわゆる瓜実顔の範囲に入るのではなかろうか。体積のある似非ソバージュの方に気を取られがちだがけして悪くない顔立ちだし、背筋を伸ばして顎を引けばファッションはさておいてうんとスタイルは好ましくなるし顔色もよく見えるはずである。いくらテーブルマジックは手元が命とはいえ、マジシャンとて外見は大事だ。今までの大会ではどうしていたのか、その際はちゃんとした装いをして、ささくれも取り除いて手入れしているのか、気になってくる。
「窮屈じゃないっスか?」
「うーぅ」
平気そうだ。人が集まるにつれて場の温度が一度くらい上がったのではなかろうか。人生上あまり関わりのなかった部類による人混みで酔いそうになってきた頃、全体の照明が落とされステージのスポットライトがついた。奴の銀髪が眩かった。
えんじぇるすだ。周囲はざわつく。ポンチョを着た天使は後方で突っ立っていて、ボーカルよりも目立っていた。
「おい、見ろよ。天使だぜ」とか「いくらかかったんだろうな? あの翼」とか「何をリスペクトしてんだ?」とか。小馬鹿にした声が飛び交った。想像通りである。
「ハクトーさーん!」
サンシンが空気を読まずに手を振る。川中島も右手を上げてこいつに応えた。
ボーカルがマイクに手を添える。赤ヒョウ柄もなかなか派手であるはずなのに、結局は天使の存在感に負けてしまっているのがよろしくない。
「皆さん、初めまして、でしょうか。えんじぇるすです。ぼくはボーカルのトールといいます。それからキーボードのツカサ。ギターのタケ。そして同じくギターのハクトーさん」
訛りの抜けきれていないぎこちないメンバー紹介をすると、誰かが「エンジェル伝説ハクトー」と言い出して観客から笑いが起きた。トールははにかむ。俺の顔はたちまち火照った。
「初めてのライブハウスで、えー緊張しております。ちょっと予定を変更することになりまして、一曲しか披露できません、ご了承ください」
「一曲で十分だぞー」
冷やかされてもトールは柔和に笑顔を絶やさない。ステージに立つ以上、彼は彼で予測はしていて覚悟していたのだろうか。それにしても、なぜ一曲しか歌えなくなったのだろうか。裏で問題でも起きたのだろうか。
「そこでぼくらは、ハクトーさんがメンバーに加わって初めてセッションした思い出の曲、堀内孝雄さんの“君のひとみは10000ボルト”をやらせていただきます」
「自分の曲をやんねぇのかよー」
「黙れ。呪うぞ」
松先輩が声を押し殺して隣の男を脅し萎縮させる。空恐ろしいくらいに目に物言わす彼女の蛇のにらみの方が毒々しいかもしれない。
すると、川中島はおもむろにまた右手を上げた。
「私はこの曲が好きだぞ。華がある。トールとツカサとタケが私のために選んだ曲だ」
奴がしゃべりだした途端、しんとなった。奴の分のマイクはなかった。それなのに明徴に声が届いたのはフロアの構造上によるものだと思う。
「私は三人の演奏が好きだぞ。初めて会った頃に比べると、タケもうまくなった」
苦笑するタケ。
「私は三人が好きだからな。だから私がいなくなってもちゃんと曲を聞いてくれるファンがたくさんできるように私は協力する。私は天使だからな」
ニッと口角を吊り上げた。神聖さが感じられない不敵な笑みだった。「よっ、ハクトーさん!」とサンシンの合いの手が響いた。川中島は上げていた片手をタケに向けた。タケもうなずき、アコギのボディーをタン、タンと叩く。そして彼、トール、キーボード村谷はスッと息を吸った。
三人はアカペラでいきなりサビを歌った。タケが高音、キーボード村谷が低音でハモらせた。
サビの終わりに本来の前奏は始まった。川中島がサイドギターだった。タケのロックテイストのギターに折り重なるようにして、キーボード村谷のポップなキーボードに身を任せるようにして。それでいて奴が二人をまとめ上げ、トールを後押ししているように思えた。
奥の人まで聞こえるようにトールはAメロを歌う。まあまあできたアレンジだった。タケは左右にリーゼントごと体を揺らしてリズムを取り、時に「へい!」と盛り上げた。
トールの力んだ歌声に触発され、一部の観客がつられてサビを口ずさんでいく。曲のタイトルを何度も歌う。タケのハイトーンボイス自体はクリスタルキングの田中昌之を彷彿とさせたが、トリオでハモるとTHE ALFEEが脳裏によぎるのだ。東京のおっさんが応援しているのもわかる気がした。
終盤に近づくにつれ、トールの目が潤沢に光る。チャラそうな外見の男の、感性豊かな涙にやられて「トール!」と知らない女が感極まる。これだから、バンドは女にモテると思われるのだろうか。
三人は『君のひとみは10000ボルト』を歌い上げた。トールは頭を下げる。
「聞いてくれて、ほんまにありがとうございました……っ! おおきにです!」
鼻をすする音をマイクが拾った。タケもキーボード村谷も満足そうだった。「よし、ずらかろう」とトールが仲間に振り向いた。
「アンコール!」
サンシンの万歳に俺は戦慄した。嘘であってほしかった。トールとタケとキーボード村谷は豆鉄砲を食らったかのような顔をして、川中島はまた不敵な笑みを浮かべている。
「お、おいサンシン」
「アンコール! アンコール!」
俺は口を塞ごうとしたが馬鹿力にはかなわず、サンシンはアンコールを求め続けた。
「アンコール! アンコール!」
おっさんの声だ。
「もう一曲歌っちゃいましょう!」
花御堂も同伴だ。仕事から抜け出してきたらしい。事情があって一曲しか歌えないというのに。前座でアンコールなんて、俺は聞いたことがない。
「アンコール。アンコール」
俺は寒気が止まらなかった。これは元宇宙人の洗脳に違いない。“アンコール”という宇宙の呪文によって毒電波を頭皮から発し、人間に手拍子をやるよう命令しているのだ。トールらは湧き上がってきたアンコールに呆然としている。
「おい、オーギガヤツ。アンコールしないか」
また川中島が人前で俺を呼ぶ。
「ほら、あなたも」
松先輩が俺にアンコールを促した。俺は舌打ちする。手拍子を始めてやる。毒電波の影響を受ける前に自分の意思でやるのだ。ああ、かわいそうに。みんな被害者だ。あとでなんであんなことをしてしまったのだろうって後悔するのだ。
「オリジナル、あるんだろー?」
「歌えよ! 聞いてやるから!」
次々と誰かが言う。集団心理が働きだして、冷やかしすらアンコールの強要を助長させた。帰りたかった。
「どうする?」
トールが鼻を手の甲でこすり、嬉しそうに仲間に確認した。ああ、これはもうだめだ。ステージ上にまで感染してしまった。
「ここはやるだろ?」
キーボード村谷がウインクした。メンバー同士の相談が終わり、トールはジーパンの後ろポケットからハーモニカを取り出した。
「では、季節にはまだ早いですが。聞いてください。“君の頭にはヒマワリが咲いている”」
笑う観客。キーボード村谷は落ち着いたテンポで、優しくしっとりとしたメロディーを流す。トールは息を整え、静かに口を開けた。
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