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四、八

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 その晩は珍しく三人がそろい、夕飯に花御堂の作った“地球の普通のラーメン”を食べていた。これは宇宙喫茶のメニューの一つ。厨房のリアル宇宙人の数が欠ける時があるため、こいつは調理も指導してもらっているのだ。食費が浮くので練習の成果を食べさせられるのは構わない。猫の頭の形をしたかまぼこが可愛いし、魚介スープも普通にうまい。

「あのさ、ちょっと気になったんだけど。本当に心を読んだ?」

 俺は先ほどの件の真相を川中島に尋ねた。

「呼んではいない。私は当てただけだ」
「え、当てずっぽう?」
「事務局へ行く途中でサンシンと会った。昨日マツアキラが待ち伏せしていて自分そっちのけでオーギガヤツにチラシを一方的に渡して去っていったと言うから、マツアキラはオーギガヤツ目当てかと思っただけだ」
「じゃあ何か? 読心術じゃなくて単なるサンシンの言いふらしなん?」
「そうだ」

 川中島はズルズルと普通の麺を吸引して汁を飛ばす。

「なんやねんそれ」

 ペテン師め。

「じゃあもしサンシンと会ってなかったら、どうするつもりだったんだよ?」
「その時は飛んでやろうと思った」
「究極奥義は最後の最後に出すべきですからね。これ鉄則」

 花御堂も眼鏡を曇らせながら言った。俺は呆れて物が言えなかった。




 就寝前に雨が降り始めた。強めの雨で、屋根を打ちつけていた。これも松旭の呪いだろうか、なんて思ったりもした。

 実は俺に気があったと人前でバラされて、彼女も気の毒な人だ。あんなに恥ずかしい思いをさせられて。かつて部活で笑い者になった身としては共感できる。
 部員が二人ともいい子そうだったのが救いだろう。何せ彼女が会長をしている小さなサークルだ。所属しているだけで確定事項ではないか。なんて、他の女のことを考えていたら大きな稲光だ。松先輩のメデューサの眼光か。

 やや間があって雷鳴が響く。家に直撃したら丸ごと地上に落ちるのではないかと不安になった。その時は裏口から出てあとは知らんふりを決め込むしかないだろう。

 ラジオでも聞き流しながら気を紛らわすことにした。ありがたいことに電波は優秀だ。クラシック番組でヴィヴァルディの『春』が都合よく流れた。

 曲に合わせてまた外が光った。その一瞬、目に映ったのは雲の中で波打つ長蛇の影。

 今のは一体……。
 俺はベッドから抜け出してしっかり確かめようと待っていたが、雷は見当外れなところにしか雨夜を照らさない。

 自称天使とリアル宇宙人がいる。ならば、いてもおかしくはない。

 絶対にあれは、龍だった。
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