妖狐と風花の物語

ほろ苦

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19 靖と玲

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話は少しさかのぼる

風花を病院から家に送った時にも風花の周りに雑魚の妖怪が集まっている事がわかっていた
病院にいた時は何故だかわからなかったが、風花を車で送っている間もついてくるので狙いは風花だと確信した
しかし、襲ってくるとは限らない
ただ、集まってる?そんな事があるのか?
不可解に思いながらも風花を部屋に送ると、玲が心配で急いで病院に戻ろうと車を走らせた
すると目の前に妖狼が仁王立ちして立っている

「おいおい…」

靖は顔を引き攣らせながら車を降りると妖狼の口に赤い液体…
な…まさか人間を襲ったのか?
みるみると靖は険しい表情になり
ポケットに手を入れ上級護符を手に握る
唇をペロッと舐めて靖を見据える妖狼

「よー靖。」

「きさま…なんのつもりだ!?」

妖狼は靖がいきなり怒っているのでなんでだ?っと唖然としていた
すると靖は護符を2枚同時に投げ呪文を唱える
網のような形のモノが現れ妖狼を包む
が、それは妖狼の爪で見事に切り裂かれ瞬時に靖との間合いを詰める
靖は手に持っていた上級護符を妖狼の胸に張ろうとした瞬間手首を掴まれ壁に押し付けられた

ゴン!

「いきなりなんだぁ?あ?せっかくいいこと教えてやろうと思って来たのに」

「は…なせ!!」

靖は妖狼を睨みもがくが全く微動だにしない
妖狼の赤い液体がついた口元がニヤリと笑う

「まぁいい。よく聞け。風花の身体に主の血が入った事により、雑魚どもがその血欲しさに集まってるぞ、あいつこのままだと雑魚の餌になっちまうなー」

「なんだって!?」

どおりで雑魚の気配が多いと思ったら…
靖は血相を変えて妖狼を振りほどこうとするが、妖狼も離さない

「貴様も風花を狙ってきたのか!?人間を襲うなんて…」

「あ?俺はそんなことしなくても強いし」

「じゃーその口の血はなんだ!!」

そう言われ妖狼は指で口元の赤い液体をとり、それを見つめる
そして問答無用に靖の口に押し込んだ

「むが!!!?」

靖は顔を歪め噛みついてやろうと思ったが、何故か妖狼の指からケチャップの味がする

「……」

一瞬固まっていると、妖狼がにやりと笑い靖の口の中を指でかき回す

「んーーー!!」

「最近、コンビニのアメリカンドックにハマっててなぁー」

クククっと笑い噛まれる前に靖の口から指と強く握っていた腕を離す
靖は口元をぬぐいながら赤面して妖狼を睨みつけ急いで車に乗り、風花の家に戻った
悪い予感は的中して、風花の家のガラスが割れる音がして急いで風花の部屋に入ると
餓鬼が風花を襲っていた
持っていた上級護符を投げつけ一瞬で消滅させたが次から次へと雑魚の妖怪の気配が増えていく
このまま風花を置いて行っては危険だと判断し、幼馴染のヒカルの家に連れていくことにした

ヒカルの屋敷に風花を連れて行ったが、ヒカルが留守だったので好都合だった
ヒカルよりも執事のレオンさんの方が安心できる
靖は風花を預けて玲のいる病院へ向かった
病室に着くと、玲はまだ目を覚ましていない
身体には点滴と包帯が何か所か巻かれている
痛々しい玲の姿に胸が締め付けられる
あの時、無理にでも自分が行っていれば…
靖は玲の顔を覗き込み右手で頬を優しく撫でる
そっと顔を近づかせ唇を近づける

「…」

があと1センチの所で止まり苦い顔をした
スッと玲から離れ病室の椅子に腰をかける病室の窓から外を見た

「めんどくせーな…」

靖は小さな声でつぶやき飲み物を買いに病室を出た

「…ほんと、めんどくさいね…」

病室のベットで寝ている玲は少しだけ目を開けて更に小さくつぶやく
主様に飛ばされた時にメガネも吹っ飛んでいったので裸眼で視界はぼやけ、身体はギシギシと痛いし怠い
目が覚めたのは数分前だったが、靖の気配がして寝ているふりをしていたのだ

兄さんが帰ってきてから起きたらいいや…

もう一度目をつむり、体の痛みを忘れるために何かほかの事を考える様にした
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