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一年生
ご両親襲来です!
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「勝者、カイ選手!」
わぁぁぁぁぁぁぁ!!!
大観衆の歓声を受け、俺は三回戦も難なく勝ち上がれたので一息をつく。
相手もここまで勝ち上がっていたものの、強さを感じることはなかった。
同じ一年でも俺のクラスメイトたちの方が強い。
だが、アリシアとの決勝戦は今までの相手とは違い、難しいものになるだろう。
「カイ君、お疲れ様でした。良い試合だったと思います」
「ありがとうございます」
リング脇のベンチに戻るとルナ先生が出迎えてくれる。
やはり褒められるということは嬉しいものだ。
自然と表情がにやけてしまう。
「王都に到着してからハードなスケジュールでしたが、グランプリも残すは明日のみとなります。そして本日はレオン君とクリスさんの試合を観戦して終了です。その後は自由時間とします。短い時間ではありますがゆっくりと王都観光を楽しんでください」
初日は数多くの試合があったが、今となっては三試合のみだ。
最後のクリス先輩戦もお昼ごろには終わるだろう。
明日のアリシア戦のこともあるが、今から考え込んでも仕方ない。
今日だけは王都を楽しめる時間があるのだから、観光くらいしてみたいものだ。
「それでは上の観戦席に移動しましょう」
その後、移動を終えた俺たちはレオン先輩とクリス先輩の試合を続けて観戦した。
レオン先輩、クリス先輩ともに勝ち上がり、ルードリア学園は全ての学年で決勝戦に残ることになる。
これは創立以来初めてのことらしい。
そのおかげで先生方は嬉しそうだ。
きっと生徒たちの活躍が嬉しい……
「給料アップが……現実的になってきたぞ!?」
ガレフ先生は満面の笑みを浮かべ、大きな声でそう言った。
「なぜ反省しないのですかねぇ……」
「まったくです。生徒の前だということを忘れているのでしょうか?」
本当に懲りない人だ。
ルナ先生やサフィール先生を含め、俺たち生徒一同は冷たい目でガレフ先生に視線を送る。
「あっ……いや……こほん。お前たちは俺の誇りだ!」
その言葉は圧倒的に遅かった。
「おバカな人は放っておき、みなさんは観客の方々が退場するまでゆっくり過ごして下さい」
「「「はい」」」
「俺が悪かった!申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」
必死になって何度も頭を下げるガレフ先生を見て、俺たちは笑いあう。
それから雑談をしている間に、闘技場内の人出は少なくなっていくのだった。
「それでは私たちも退場しましょう。みなさんついてきてください」
俺たちは狭い観客席の通路を一列になって、ルナ先生の後を追う。
その後、通路に出ると三列になり、歩みを進めて闘技場内から外に出た。
昨日よりも早い時間に終了したので、太陽も高く暖かい。
これから一旦ホテルに戻り、そこで解散予定だ。
俺たちがすっかりと慣れた帰り道を歩いていると、
「お父さん!カイが来たわよ!」
とんでもなく聞き覚えのある声が前の方から聞こえてきた。
こ、この声は!?
俺が戸惑いながら、前を確認するととても見知った人物である二人がこちらに近づいてくる。
「親父に母さん!?」
親父はいつもと変わらない眼鏡をかけ、暗い茶色の髪を綺麗に整えている。
一見すると厳格そうにも見えるが、内面はそうでもない。
母さんは少し髪が伸びた様だ。
明るめの茶色の髪はまっすぐに流れており、白のスーツといった服装や雰囲気は大人びているが、背は小さく童顔。
自身の母親ながら年齢不詳な人である。
マスターのご両親ですと!?
身だしなみを整えないといけません!
何を整えるんだ、何を。
「な、なに!?」
「心の準備ができていませんが!?」
「緊張する」
「カイさんのご両親ですか?私もご挨拶させていただきましょう」
「わ、わかりました」
先導のルナ先生が止まり、俺は前に出る。
「久しぶりね!ちょっと見ない間に背が伸びたんじゃない?」
「そうかな?それよりもなんで二人がここに……」
母さんは俺の前で歩みを止めて笑顔で話しかけてきたのだが、親父は歩みを止めなかった。
そして俺の横を通り過ぎていく。
「ん?」
俺が振り返ると、
「初めまして。カイの父であるコウセ・グランと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「は、初めまして。カイ君の担任をさせていただいております、ルナ・ユーシアです」
ルナ先生にちょっかいをかけていた。
突然話しかけるものだからルナ先生も困惑しているじゃないか。
「息子をほったらかして何をしとるんじゃい!」
俺はルナ先生と親父の間に割り込む。
「やかましい!あほな息子よりも美人に声をかけるのは当然だろうが!」
なんという言い分だ。
わが父ながら情けない……
いえ、そっくりだと思いますよ?
誰に?
マスターにですが?
……うそん。
「カイにそっくりだな」
「さすがですね」
「間違いない」
あれぇ?どうしてそんな感想になるのかな?
フレアたちまでファーナと同じ感想を漏らす。
そのことに俺は納得がいかん。
日頃の行いのせいですよ。
マスターは女の子が好きでしょう?
うむ!
一緒ではないですか。
なぜだ。
俺は素直に思っただけなのに、理不尽な指摘を受けてしまった。
わぁぁぁぁぁぁぁ!!!
大観衆の歓声を受け、俺は三回戦も難なく勝ち上がれたので一息をつく。
相手もここまで勝ち上がっていたものの、強さを感じることはなかった。
同じ一年でも俺のクラスメイトたちの方が強い。
だが、アリシアとの決勝戦は今までの相手とは違い、難しいものになるだろう。
「カイ君、お疲れ様でした。良い試合だったと思います」
「ありがとうございます」
リング脇のベンチに戻るとルナ先生が出迎えてくれる。
やはり褒められるということは嬉しいものだ。
自然と表情がにやけてしまう。
「王都に到着してからハードなスケジュールでしたが、グランプリも残すは明日のみとなります。そして本日はレオン君とクリスさんの試合を観戦して終了です。その後は自由時間とします。短い時間ではありますがゆっくりと王都観光を楽しんでください」
初日は数多くの試合があったが、今となっては三試合のみだ。
最後のクリス先輩戦もお昼ごろには終わるだろう。
明日のアリシア戦のこともあるが、今から考え込んでも仕方ない。
今日だけは王都を楽しめる時間があるのだから、観光くらいしてみたいものだ。
「それでは上の観戦席に移動しましょう」
その後、移動を終えた俺たちはレオン先輩とクリス先輩の試合を続けて観戦した。
レオン先輩、クリス先輩ともに勝ち上がり、ルードリア学園は全ての学年で決勝戦に残ることになる。
これは創立以来初めてのことらしい。
そのおかげで先生方は嬉しそうだ。
きっと生徒たちの活躍が嬉しい……
「給料アップが……現実的になってきたぞ!?」
ガレフ先生は満面の笑みを浮かべ、大きな声でそう言った。
「なぜ反省しないのですかねぇ……」
「まったくです。生徒の前だということを忘れているのでしょうか?」
本当に懲りない人だ。
ルナ先生やサフィール先生を含め、俺たち生徒一同は冷たい目でガレフ先生に視線を送る。
「あっ……いや……こほん。お前たちは俺の誇りだ!」
その言葉は圧倒的に遅かった。
「おバカな人は放っておき、みなさんは観客の方々が退場するまでゆっくり過ごして下さい」
「「「はい」」」
「俺が悪かった!申し訳ございませんでしたぁぁぁ!」
必死になって何度も頭を下げるガレフ先生を見て、俺たちは笑いあう。
それから雑談をしている間に、闘技場内の人出は少なくなっていくのだった。
「それでは私たちも退場しましょう。みなさんついてきてください」
俺たちは狭い観客席の通路を一列になって、ルナ先生の後を追う。
その後、通路に出ると三列になり、歩みを進めて闘技場内から外に出た。
昨日よりも早い時間に終了したので、太陽も高く暖かい。
これから一旦ホテルに戻り、そこで解散予定だ。
俺たちがすっかりと慣れた帰り道を歩いていると、
「お父さん!カイが来たわよ!」
とんでもなく聞き覚えのある声が前の方から聞こえてきた。
こ、この声は!?
俺が戸惑いながら、前を確認するととても見知った人物である二人がこちらに近づいてくる。
「親父に母さん!?」
親父はいつもと変わらない眼鏡をかけ、暗い茶色の髪を綺麗に整えている。
一見すると厳格そうにも見えるが、内面はそうでもない。
母さんは少し髪が伸びた様だ。
明るめの茶色の髪はまっすぐに流れており、白のスーツといった服装や雰囲気は大人びているが、背は小さく童顔。
自身の母親ながら年齢不詳な人である。
マスターのご両親ですと!?
身だしなみを整えないといけません!
何を整えるんだ、何を。
「な、なに!?」
「心の準備ができていませんが!?」
「緊張する」
「カイさんのご両親ですか?私もご挨拶させていただきましょう」
「わ、わかりました」
先導のルナ先生が止まり、俺は前に出る。
「久しぶりね!ちょっと見ない間に背が伸びたんじゃない?」
「そうかな?それよりもなんで二人がここに……」
母さんは俺の前で歩みを止めて笑顔で話しかけてきたのだが、親父は歩みを止めなかった。
そして俺の横を通り過ぎていく。
「ん?」
俺が振り返ると、
「初めまして。カイの父であるコウセ・グランと申します。お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「は、初めまして。カイ君の担任をさせていただいております、ルナ・ユーシアです」
ルナ先生にちょっかいをかけていた。
突然話しかけるものだからルナ先生も困惑しているじゃないか。
「息子をほったらかして何をしとるんじゃい!」
俺はルナ先生と親父の間に割り込む。
「やかましい!あほな息子よりも美人に声をかけるのは当然だろうが!」
なんという言い分だ。
わが父ながら情けない……
いえ、そっくりだと思いますよ?
誰に?
マスターにですが?
……うそん。
「カイにそっくりだな」
「さすがですね」
「間違いない」
あれぇ?どうしてそんな感想になるのかな?
フレアたちまでファーナと同じ感想を漏らす。
そのことに俺は納得がいかん。
日頃の行いのせいですよ。
マスターは女の子が好きでしょう?
うむ!
一緒ではないですか。
なぜだ。
俺は素直に思っただけなのに、理不尽な指摘を受けてしまった。
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