148 / 158
一年生
虚実です!
しおりを挟む
アリシアは召喚したペガサスに騎乗すると、前回と同じく上空へと舞い上がった。
ルースもアリシアの動きに対応するように、グリフィンに騎乗して空へと追いかけていく。
どうやら空中戦の展開になりそうだ。
「緊張感漂う空中戦場!最初に動いたのはアリシア選手だ!」
アリシアは剣を構えるとペガサスの腹を軽く蹴り、ルースへと突進を開始した。
だが速さはない。
「炎の矢!」
複数の炎がルースの周囲を円のように囲って現れると、向かってくるアリシアへ一直線に放った。
そしてそれに呼応するかのごとく、グリフィンが翼を羽ばたかせて風を起こすと炎の矢は吹き荒れる風を受け、その速度を上げていく。
「……」
向かってくる炎の矢に対して、アリシアは剣を無造作に振るう。
その瞬間、全ての炎の矢たちが吹き飛ばされてしまう。
俺は目の前で起こった現象に見覚えがあった。
「あははは!それぇ!」
クリス先輩が笑いながら振るった剣が俺の炎の矢を霧散させたのと似ている。
消し飛ばすのと吹き飛ばすのでは相当な力量差があるとは思うが、それでも比べる相手が規格外なだけだ。
剣の腕はフレアと同等か?
どうやらそのようですね。
下半身が安定しない騎乗している状態であの振りはなかなかできることではありませんので。
「雷槍撃!」
派手に初撃を散らされたルースだったが、冷静に二の矢を放つ。
ルースが放った雷の槍は、剣を振るった後のアリシアの隙を狙って高速で飛行していく。
だが、アリシアは焦るそぶりすら見せずにその槍をかわす。
その場で羽ばたいていたペガサスが翼を止め、その馬体を落とすようにして避けたのだ。
俺はそんな見事な動きを見た結果、はっきりと分かったことがある。
あんなかわし方ができるのは命令型じゃない。
ファーナたちと同じ自律型だ。
しかしアルグランド学園では一年生は命令型のまま召喚獣の扱い方を教わるはず。
実際、次席のダクドも命令型だった。
なぜ彼女は自律型で闘えているのだろう?
「あっと!?アリシア選手!これは早いですね!」
そんな疑問を解決する暇もないまま、戦場は激しく動き出そうとしている。
一回戦や先ほどまでの動きとは全然違う!!
ペガサスは落ちようとする馬体を一瞬で上昇に転じさせると、あっという間にルースとの距離を縮めていく。
彼女、なかなかの戦上手ですね。
虚の使い方が見事です。
きょ?
はい。
相手に誤った判断をさせることや驚かせるといったことを虚と表現します。
その逆は実と言い、これは自身の力を大いに発揮させることを言います。
そして戦闘というものは虚実を織り交ぜることで自身の力は存分に、相手の力は最小限にさせることが勝利へと導いていくのです。
……なるほど?
わかっていませんね?
も、もう少し簡単にならない?
マスター!後ろでフレアさんのパンツが見えそうです!
なにぃ!?
俺はファーナの言葉を聞いて急いで振り返った。
「急になんだ?」
だが、フレアの足はしっかりと閉じていて見える気配は全くない。
「パンツが……あれ?」
「……下らんことを言っていないでしっかりと応援せんか!」
「ぐはぁ!?」
俺はフレアから渾身の手刀を頭頂部に頂いた。
これが虚です。
要するに相手を騙し、かく乱させることですね。
おわかりいただけましたか?
身に染みてわかりました……
そして実というのは……まさに今の彼女の姿です。
俺が視線を戦場へと向けると、アリシアの噓偽りのない剣の一撃がグリフィンの腹を捉えようとしていた。
だが、
「ルース選手!下から突き上げるような急襲を見事にかわしました!」
「見事!戦場を冷静に見ておる!空中戦は下からの攻撃があることを忘れてはならないということをよく理解しているな!流石わしの孫じゃ……だといわざるを得ません」
「ヴィオラさんも冷静になっていただいてほしいものですね」
ルースもちょっとやそっとのことで慌てるようなやつじゃない。
予想外のことが起きてもすぐに修正し、対応してくる。
なにせマスターとお友達なのですから、生半可なことじゃ驚きませんよね。
そうだ……ん?どういう意味だ?
俺は頷きかけたが、遠回しにバカにされたような気がする。
マスターに振り回され過ぎて慣れたのでしょう?
大変ですからね、マスターのお相手するのは。
なぁに言ってんだ?この大回転お姫様は?
誰が大回転姫ですか!?
訓練だと言って剣をブンブン振り回したついでに俺たちを振り回すのがファーナだろう!?
そりゃあ並大抵のことじゃあ冷静になるわ!
なんですってぇぇぇ!?
この時までは俺たちにもこんなやり取りができるくらいの余裕があった。
「……ルース・ファクトの戦闘力を上方修正します」
だが、ここからの戦闘はそんな余裕は無くなるのだった。
ルースもアリシアの動きに対応するように、グリフィンに騎乗して空へと追いかけていく。
どうやら空中戦の展開になりそうだ。
「緊張感漂う空中戦場!最初に動いたのはアリシア選手だ!」
アリシアは剣を構えるとペガサスの腹を軽く蹴り、ルースへと突進を開始した。
だが速さはない。
「炎の矢!」
複数の炎がルースの周囲を円のように囲って現れると、向かってくるアリシアへ一直線に放った。
そしてそれに呼応するかのごとく、グリフィンが翼を羽ばたかせて風を起こすと炎の矢は吹き荒れる風を受け、その速度を上げていく。
「……」
向かってくる炎の矢に対して、アリシアは剣を無造作に振るう。
その瞬間、全ての炎の矢たちが吹き飛ばされてしまう。
俺は目の前で起こった現象に見覚えがあった。
「あははは!それぇ!」
クリス先輩が笑いながら振るった剣が俺の炎の矢を霧散させたのと似ている。
消し飛ばすのと吹き飛ばすのでは相当な力量差があるとは思うが、それでも比べる相手が規格外なだけだ。
剣の腕はフレアと同等か?
どうやらそのようですね。
下半身が安定しない騎乗している状態であの振りはなかなかできることではありませんので。
「雷槍撃!」
派手に初撃を散らされたルースだったが、冷静に二の矢を放つ。
ルースが放った雷の槍は、剣を振るった後のアリシアの隙を狙って高速で飛行していく。
だが、アリシアは焦るそぶりすら見せずにその槍をかわす。
その場で羽ばたいていたペガサスが翼を止め、その馬体を落とすようにして避けたのだ。
俺はそんな見事な動きを見た結果、はっきりと分かったことがある。
あんなかわし方ができるのは命令型じゃない。
ファーナたちと同じ自律型だ。
しかしアルグランド学園では一年生は命令型のまま召喚獣の扱い方を教わるはず。
実際、次席のダクドも命令型だった。
なぜ彼女は自律型で闘えているのだろう?
「あっと!?アリシア選手!これは早いですね!」
そんな疑問を解決する暇もないまま、戦場は激しく動き出そうとしている。
一回戦や先ほどまでの動きとは全然違う!!
ペガサスは落ちようとする馬体を一瞬で上昇に転じさせると、あっという間にルースとの距離を縮めていく。
彼女、なかなかの戦上手ですね。
虚の使い方が見事です。
きょ?
はい。
相手に誤った判断をさせることや驚かせるといったことを虚と表現します。
その逆は実と言い、これは自身の力を大いに発揮させることを言います。
そして戦闘というものは虚実を織り交ぜることで自身の力は存分に、相手の力は最小限にさせることが勝利へと導いていくのです。
……なるほど?
わかっていませんね?
も、もう少し簡単にならない?
マスター!後ろでフレアさんのパンツが見えそうです!
なにぃ!?
俺はファーナの言葉を聞いて急いで振り返った。
「急になんだ?」
だが、フレアの足はしっかりと閉じていて見える気配は全くない。
「パンツが……あれ?」
「……下らんことを言っていないでしっかりと応援せんか!」
「ぐはぁ!?」
俺はフレアから渾身の手刀を頭頂部に頂いた。
これが虚です。
要するに相手を騙し、かく乱させることですね。
おわかりいただけましたか?
身に染みてわかりました……
そして実というのは……まさに今の彼女の姿です。
俺が視線を戦場へと向けると、アリシアの噓偽りのない剣の一撃がグリフィンの腹を捉えようとしていた。
だが、
「ルース選手!下から突き上げるような急襲を見事にかわしました!」
「見事!戦場を冷静に見ておる!空中戦は下からの攻撃があることを忘れてはならないということをよく理解しているな!流石わしの孫じゃ……だといわざるを得ません」
「ヴィオラさんも冷静になっていただいてほしいものですね」
ルースもちょっとやそっとのことで慌てるようなやつじゃない。
予想外のことが起きてもすぐに修正し、対応してくる。
なにせマスターとお友達なのですから、生半可なことじゃ驚きませんよね。
そうだ……ん?どういう意味だ?
俺は頷きかけたが、遠回しにバカにされたような気がする。
マスターに振り回され過ぎて慣れたのでしょう?
大変ですからね、マスターのお相手するのは。
なぁに言ってんだ?この大回転お姫様は?
誰が大回転姫ですか!?
訓練だと言って剣をブンブン振り回したついでに俺たちを振り回すのがファーナだろう!?
そりゃあ並大抵のことじゃあ冷静になるわ!
なんですってぇぇぇ!?
この時までは俺たちにもこんなやり取りができるくらいの余裕があった。
「……ルース・ファクトの戦闘力を上方修正します」
だが、ここからの戦闘はそんな余裕は無くなるのだった。
0
お気に入りに追加
487
あなたにおすすめの小説
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
素敵な婚約者を婚約破棄しようとする馬鹿な王子は正気に帰った
光月 翠
恋愛
気がついたら俺はピンクブロンドの髪の毛のいかにもヒロインそうなこの肩を持ちながら、めっちゃ性格もよくて綺麗で完璧な自分の婚約者に婚約破棄を言おうとしていた。いや、馬鹿だろう。あいつがいじめをするわけがない。なぜ俺はこんなことをしているのか…どうにかしなければ!!
婚約破棄した王太子、男爵令嬢にあっけなく振られる
下菊みこと
恋愛
王太子にヒロイン扱いされる女性が、王太子に悪役令嬢扱いされる女性に懐いてるお話。
王太子は勘違いナルシスト野郎。きっちり破滅。
ざまぁというか当然の流れかも。
小説家になろう様でも投稿しています。
公爵さま、私が本物です!
水川サキ
恋愛
将来結婚しよう、と約束したナスカ伯爵家の令嬢フローラとアストリウス公爵家の若き当主セオドア。
しかし、父である伯爵は後妻の娘であるマギーを公爵家に嫁がせたいあまり、フローラと入れ替えさせる。
フローラはマギーとなり、呪術師によって自分の本当の名を口にできなくなる。
マギーとなったフローラは使用人の姿で屋根裏部屋に閉じ込められ、フローラになったマギーは美しいドレス姿で公爵家に嫁ぐ。
フローラは胸中で必死に訴える。
「お願い、気づいて! 公爵さま、私が本物のフローラです!」
※設定ゆるゆるご都合主義
異世界に転生して婚約破棄を目指していましたが記憶を失って王子に溺愛されています。
みさちぃ
恋愛
爆発に巻き込まれ人生終わったと思ったら異世界に来てました。
どうも読んでいた小説の悪役令嬢になっているのですが!
しかしその悪役令嬢、婚約破棄されて隣国辺境伯と結婚しました!ってハッピーエンドじゃない?
その結末いだきましょうか?
頑張って悪役令嬢を演じて王太子殿下から婚約破棄をしてもらいましょうか。
この世界で再び爆発に巻き込まれて気づいたら大変なことにことになりました。
毎日7時、19時に1部分づつあがります。(1部分はだいたい2500字前後になります。)
全75部分(20話+エピローグ、後日談2話で完結する予定です。
*なろう様で先行して掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる