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一年生

お祈りします!

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出たのか出なかったのかよくわからないトイレを済ませ、

記憶喪失ですか?
お名前わかります?

カイだよ!
緊張してて覚えてないから仕方ないだろ!?

手は洗いました?

……たぶん。

今すぐ手を洗ってきてください。

はい……

もう一回トイレに手を洗いに行くことになった。

「あれ?またどこかに行くの?もうすぐらしいよ?」

「ちょっと手を洗ってくるわ」

「さっきも洗ったけど、また?」

「ああ、すぐに戻ってくるよ」

どうやらちゃんと洗っていたようだ。
ただ、それとは別に緊張して汗をかいてしまったので洗いに行こうと思う。

そして俺は再び控室の外へと出た。
先ほどのことだというのに、もはや記憶の底にあるトイレへの道筋を思い出しながら歩いていく。
俺がうろ覚えの道を歩き、角に来たとき急に人が飛び込んできた。

ドン!

「いってえな!」

「す、すいません!」

出会いがしらに誰かとぶつかってしまう。

「あん?お前どこの学園の何年だ?」

二人の連れと一緒の頭の悪そうな……やんちゃな学生が俺を睨んできた。
改心したチンピラ先輩と同じような感じなやつだ。
茶色いのツンツン頭で目つきが悪い。

頭悪そうなやからですね。

俺がソフトに思ったというのにストレートに思うんじゃない。

思うくらいはいいでしょう。

「ルードリア学園の一年だけど?」

俺がそう伝えると、

「あははは!あの王国のすみっこにあるド田舎学園のやつか!」

「ダクド……笑っちゃ悪いって……」

「ぶふっ……」

ダクドと呼ばれた野郎は大げさに笑い、その連れは笑いをこらえるようにしているが明らかにバカにしている。

「そういうそっちはどこ学だよ」

「聞いて驚け!俺たちはアルグランド学園だ!しかも俺は一年の次席だぞ!」

これがルナ先生が言ってたアルグランド学園のやつか。
確かに腹が立つ。

「ふん、こっちは首席だが?」

取り巻きは少し驚いた顔を見せたが、ダクドは嘲笑を見せる。

「何言ってんだ?ド田舎学園の首席ごときがアルグランド学園の次席様と比べものになるわけがないだろうが!」

殴っていいですか?

ものすごく許可を出したいところだが、問題事は避けよう。
幸運を祈っておくだけにしておけ。

ええ、祈りましょう。

「しかしまあお前みたいなやつが首席なんてな。よっぽどろくでもないやつしかいなんだろ?恥かく前に田舎に帰っておけ!」

ギリギリギリ……

怒りのあまり歯を食いしばっていると、

「カイ、そろそろ時間だぞ?」

「どうかしましたか?」

「遅い」

後ろからフレアたちがやってきた。

「……ちょっと他の学園のやつと話していたんだ」

俺は簡単な状況を説明する。
これ以上ややこしくするのはまずいからな。

「「「……」」」

俺がフレアたちからダクドたちに目を戻すと、呆然とフレアたち三人を見ていた。

ははぁぁぁん……こいつら見とれているな?

アルグランド学園に女子がいるかはわからないが、いたとしてもここまでの美少女ではないだろう。

「ほぉ……アルグランド学園の生徒たちか」

「は、初めまして」

「よろ」

ルナ先生からの苦言を受けていたので、フレアたちのやつらへの第一印象はあまり良くないようだ。

「へ、へぇ……まぁまぁ可愛い子いるじゃん。俺はダクド、アルグランド学園の次席だ」

「お、俺はジハン!」

「自分はジューゼって言います!」

ダクドはフレアに、ジハンといった坊主頭はリーナに、ジューゼといった長髪はサリアへと近づいていきやがった。

「……フレアだ」

不機嫌そうに言い放つ。

「リーナです……」

フレアの後ろに隠れるようにしながら返す。

「サリア」

まるで興味がないように呟いた。

「挨拶も終わったし、それじゃあな。みんな探してもらって悪い」

「気にするな」

「うふふ、そうですよ」

「いこ」

俺の言葉で三人が笑顔を見せてくれる。
その笑顔で怒り心頭だった俺の心は、かなりスッキリとした。
だが……まだ晴れないものはある。

「おい!お前の名はなんだ!」

「カイ、カイ・グランだ。覚えなくていいからな」

「ふざけんな!絶対に俺に当たるまで負けるんじゃねぇぞ!」

「それは奇遇だな、俺も同じ気持ちだ」

「実力の差っていうものをいやってほど見せてやる!覚えとけ!」

そういうと取り巻きとともに去って行った。

俺のクラスメイトをバカにしたお前を許しはしない。
俺と当たることを神様に祈ってやるよ。
なぁ?ファーナ?

ええ、もちろんです。

「相変わらずよく揉めごとを起こすやつだな」

「まあカイ君ですから……」

「仕方ないよね」

あれ?俺ってトラブルメーカーと思われてる?

その通りでは?

神様……俺は清く正しく生きていますよね……?

ぱぁん!

「あいたぁ!?」

「す、すいません!なぜか身体が勝手に動きまして!」

俺が心の中で祈っていると、リーナにいきなりビンタされた。

ふふふ、お怒りのようですね。

ほっぺも心も痛い……

俺は頬を押さえて、肩を落としたのだった……
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