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一年生

静かな夕食です

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フレアとルースの激闘の翌日の早朝。

「……まったく寝た気がせん」

実際ほとんど寝てませんからね。

二人の容態が心配でなかなか眠れないまま、休日の朝を迎えた。
昨日の段階では面会することもできずに、ルナ先生から話を聞いただけだ。

「二人とも命に別条はありませんし、後遺症が残る怪我でもありませんので安心してください。これくらいの怪我なら問題なく回復できますよ。学園の医療班は優秀ですから」

そう言われたものの、不安は募ってしまう。
その後、夕食の時間なったのだが、食堂のテーブルには俺とリーナだけとなっていた。
サリアは食欲がないとのことで、部屋から出てこないそうだ。
周りのクラスメイトたちも口数少なく食事を済ませ、俺とリーナも黙々と食事をとる。
いつも賑やかなテーブルが、静かで寂しく思えて仕方ない時間となってしまった。

俺は眠い目を擦りつつベッドに座り、昨日のことを思い出す。

傍にいつものメンバーがいるっていうのは、当たり前のことじゃないんだなぁ……

何気なく過ごしていた日々やたわいない会話、それらが特別であるということを俺は思い知った。

何を弱気なことを言っているのですか。
先生もおっしゃっていたでしょう?
問題なく回復すると。
それを待てばよいだけのことです。

それはそうなんだけど、やっぱり心配になるって。

まったく……ほら身体を動かしに行きますよ。
不安な時は素振りをすればいいんです。
少しは楽になりますから。

そうするか……

俺は運動着に着替えると、寮の外へと出る。

「さ、さむぅ……」

あまりの寒さについひとり言を呟いてしまう。
朝はすっかりと肌寒い季節になっていた。

「ふん!」

俺は寒さを我慢しながら、朝食の時間までひたすらに木剣を振るう。
不安という敵を目標として。

「おはようございます……」

「おはよう……」

その後、朝食の時間となったので食堂へと向かうと、目の下にクマをつくったリーナとサリアがテーブルに座っていた。

「おはよう……二人とも元気がないな……」

「そういうカイさんも元気がないですよ……?」

「カイも寝てないでしょ……」

「まあな……」

「「「はぁ……」」」

三人同時にため息をつくと、すっかりと重々しい空気になってしまった。

「なぜそんなにため息をついているのだ?」

「そりゃぁ……?」

あれ?この声は?

後ろから声をかけられたのだが、とても聞き覚えのあるものだ。
俺はすぐに振り返ると、声の主が笑っていた。

「フレアにルース!」

「三人とも酷い顔……っておい!?」

リーナとサリアは駆け出してフレアへと抱き着く。

「心配したんですよ……」

「とっても心配した……」

「ふふふ、ありがとう……二人とも」

三人の微笑ましい光景を見ながら、俺はルースへと声をかける。

「ずいぶんと早い復活だな。体調はもう大丈夫なのか?」

「うん、僕たちもびっくりしたんだけど寝てるうちに治ったみたい。治癒効果を高める魔法でもかけてくれたのかな?」

「まったく……ギリギリまで無茶し過ぎなんだよ」

「仕方ないでしょ?僕はカイと闘いたかったんだから」

可愛いらしい挑戦者はにこりと微笑む。

「簡単にはやられたりしないぜ?」

「こっちこそ」

俺とルースは互いに笑い合い、

「お帰り」

「うん、ただいま」

無事に帰ってきた友人に、ありふれた言葉ではあるが、特別な思い込めて伝えた。

「回復記念にフレアのソーセージをもらう」

「おい!普通逆だろう!?」

「もぐもぐ」

サリアがフレアの皿からソーセージを奪い、悪びれることなく口にした。

「わ、私の分をあげますから……」

リーナが苦笑しつつ、ソーセージを自分の皿からフレアの皿へと移す。

「むっ……すまんな……」

「フレアはくいしん坊」

「貴様に言われたくないわ!」

昨日とは違い、騒がしい食事となる。

「「あははは!」」

そんな様子を見た俺とルースは、心から笑うのだった。
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