上 下
98 / 158
一年生

久しぶりに揃ってお風呂です!

しおりを挟む
さぁ!お風呂の時間です!
久しぶりにサリアちゃんの髪を洗いたいですね!
むふふ……少し見ないうちにいろいろと成長しているかもしれません……

お風呂セットを用意しながら、リーナの顔はにやけている。
彼女はギリギリまで休暇を実家である孤児院で過ごしていた。
そのためフレアとサリアで入る風呂は久しぶりのことだ。
それと忘れていけないのがもう一人。

コンコン!

「リーナちゃん!お風呂行くよー!」

ノックとともに大きな声が聞こえてきた。

「クリス先輩?お風呂前で待ち合わせでしたよね?」

風呂の準備は途中のままで、部屋のドア開くとクリスがいた。

「だって一人で待つのって寂しいから来ちゃった!」

「もう……お姉さんなんだから我慢してくださいね?」

まるで小さな子供をあやすようにクリスをたしなめる。

「まぁまぁいいじゃないの!準備できてる!?」

「すみません。もう少しだけ待ってもらえますか?」

「わかった!それじゃボクはフレアちゃんやクリスちゃんに声をかけてくるよ!」

たぶん二人にも聞こえていると思います……

そう思いつつ、室内へと戻ったリーナは準備を終えると外へと出て行く。
するとすでにフレア、サリア、クリスの三人がリーナのことを通路で待っていた。

「みなさんお待たせしました」

「気にしなくていい。私もさきほど出て来たばかりだからな」

「リーナとお風呂嬉しい。フレアのわたしの髪の洗い方はまだまだだから」

「そんなに言うなら自分で洗え!」

「人に洗ってもらうの気持ちいいからやだ」

「はいはい!ケンカしてないでお風呂にいくよ!」

クリスは珍しく上級生らしいところを見せ、場を落ち着かせると先頭を切って歩き出した。

「わかった」

「サリア!話の続きは風呂場でだからな!」

「しつこい」

それにサリアとフレアが続いていく。

(ふふふ、少し離れていただけなのにこの騒がしさが懐かしいです)

リーナの孤児院でも騒がしいことはあるが、みんなのお姉さんではなく、リーナ個人として気負わずにいられるのは学園でしかないものだ。

「あっ!置いてかないでください!」

リーナが感慨深く思っていると、いつの間にか置いていかれそうになっていた。

サァァァ……

リーナはサリアの髪へお湯を優しく流す。

「ふぅ……やっぱりリーナがいちばん……」

サリアは気持ちよさそうに目を閉じて、リーナの胸に頭を預けていた。

「うふふ、ありがとうございます」

「リーナがいない間はさんざん私に洗わせていたくせに……」

「あはは、残念だね!結構楽しそうにしてたのにリーナちゃんにとられちゃったね!」

「べ、別に楽しかったわけではありません!」

楽しい会話をしながら髪や身体を洗った後、ゆっくりと湯船の中へと浸かっていく。

「「「「ふぅ……」」」」

浴場内に乙女たちの艶やかなため息がこぼれた。

「そういえば学生グランプリのことを聞いたのですが、三年生の代表はクリス先輩で決まりですか?」

「うん。だーれも挑んでこないからそうなると思う」

フレアの質問に不機嫌そうにクリスが答える。

「そういう君たちはどうなの?二人しか出場できないけど誰が代表になるのかな?」

「私です」
「私ですね」
「わたし」

三人の答えは同じで、タイミングも一緒だったが、湯船の気持ちよさが勝っているようだ。
まったりとした表情で視線を合わせていた。
本来ならバチバチと火花が散っているのだろうが、そんな気配はまったくない。

「あららら、熾烈な争いになりそうだね。カイ君にルース君もいるし」

「はい、ですが負けません。私も力をつけていますから」

「ふふふ……成長しているのがフレアさんだけだとでも思っているのですか?」

「わたしも一番を目指してるから」

ライバル関係な三人を羨ましく思ったクリスは、笑顔で会話に入っていく。

「三人ともボクと模擬戦やろうよ!すごく楽しそう!」

「それは……」

「ちょっと……」

「お断り」

「なんでさ!?」

クリスの提案は全員に拒否されてしまった。

「代表戦もありますので……その代わり剣でのお相手なら喜んでお相手させていただきます」

「私も防御魔法の強化を図りたいので、攻撃役をお願いしたいです」

「わたしの避け練習手伝って。クリスの攻撃避けれたら怖いものなし」

「みんな……うん!わかった!全力でやっちゃうよ!」

後輩から頼りにされたクリスは嬉しそうに意気込んだ。

「ほ、ほどほどでお願いします……」

「全力はちょっと……」

「腕八分目くらいでよろしく」

「うっ……わかったよ……」

落とされた後に上げられ、また落とされてしまい少しションボリするクリスだったが、

「ですがご協力を申し出いただきありがとうございます」

「とっても嬉しいです!」

「サンキュー」

「……みんな好きぃ!」

クリスは可愛い後輩たちをひとまとめにすると、喜びを露わにして抱き着いた。
その結果、ムニュムニュと柔らかいものが押しつぶされるように身体へと当たる。

(なぜこうも差がでるのだろうな……)

柔らかい感触を周囲から押しつけられたせいで、フレアの顔がちょっとだけ悲しそうだった……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

チートも何も貰えなかったので、知力と努力だけで生き抜きたいと思います

あーる
ファンタジー
何の準備も無しに突然異世界に送り込まれてしまった山西シュウ。 チートスキルを貰えないどころか、異世界の言語さえも分からないところからのスタート。 さらに、次々と強大な敵が彼に襲い掛かる! 仕方ない、自前の知力の高さ一つで成り上がってやろうじゃないか!

死んで全ての凶運を使い果たした俺は異世界では強運しか残ってなかったみたいです。〜最強スキルと強運で異世界を無双します!〜

猫パンチ
ファンタジー
主人公、音峰 蓮(おとみね れん)はとてつもなく不幸な男だった。 ある日、とんでもない死に方をしたレンは気づくと神の世界にいた。 そこには創造神がいて、レンの余りの不運な死に方に同情し、異世界転生を提案する。 それを大いに喜び、快諾したレンは創造神にスキルをもらうことになる。 ただし、スキルは選べず運のみが頼り。 しかし、死んだ時に凶運を使い果たしたレンは強運の力で次々と最強スキルを引いてしまう。 それは創造神ですら引くほどのスキルだらけで・・・ そして、レンは最強スキルと強運で異世界を無双してゆく・・・。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

処理中です...