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一年生

さよならレリアント

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馬車がレリアントへ到着したときには、辺りはすっかりと夕闇に包まれそうになっていた。
そして俺とルース以外は疲れがピークに達したようで、口数少ないまま歩きフレア家へと到着する。

「お帰りなさい。あら、どうやらお疲れのようね。ゆっくりとお風呂に入ってきなさい」

シャルネさんに出迎えられ、女子一同は室内の浴場へと向かっていった。
俺とルースはシャルネさんに今日あったとことを話した後、お土産のお菓子を渡すと喜んで受け取ってくれたのでこちらとしても一安心だ。

「母上……私たちはもう寝ますので、お休みなさい……」

「はい、お休みなさい」

風呂から上がったフレアたちは、シャルネさんに挨拶をすると重い足取りで部屋へと向かっていく。

「それじゃあ俺たちもお風呂をいただいてから、休ませていただきます」

「お風呂だけど、昨日は入れなかったからあなたたちにも露天風呂に浸かっていってもらいたいわ。それとも女の子たちの残り湯の方がいいかしら?」

「……露天風呂を使わせていただきます!」

少し名残惜しい気もするが、残り湯の方がいいですとは口が裂けても言えない。

当たり前です。

「はい、ごゆっくりね」

笑われてしまった。
内心を見透かされたのだろうか……

「ふぃぃぃ……極楽極楽……」

「外でのお風呂なんて初めてだけど、とっても気持ちいいね……」

俺とルースは全身で露天風呂につかり、その心地良さを堪能していく。
それから少しして、身体を外へと出す。
すると、お湯で温まった身体を風が冷ましてくれる。
それはなんとも気持ちがいいものだった。

「フハハハハハ!どうだ堪能しているかな!?お邪魔するよ!」

仕事を終えたクレドさんが入浴しにくるという騒がしさもあったが、声の大きさにも大分と慣れたものだ。

(というか……デカいな)

(うん……とっても)

俺とルースはクレドさんのたくましい身体を見て、二人でこそこそと感想を言い合う。

な、何が大きいのですか!?

もうファーナちゃんってば、分かってるくせにぃ……
ほらほら、見てもいいんだぞ?

いえ!断固として遠慮しておきます!

ファーナは気になるくせに視覚情報の共有を遮断している。
これが逆の立場なら間違いなく女子風呂の中を見渡すのだが、真面目なことだ。

「シャルネから少し話は聞いたが、娘たちが大活躍だったそうだな?」

「ええ、それはもう大活躍でしたよ」

「僕たちはその活躍にずっと見とれていたもんね」

俺たちはシャルネさんに話したことを、再び話すことになる。
その話を聞いたクレドさんは、嬉しそうに頬を緩ませて喜んでいた。

「それでは俺たちはお先に失礼します」

「お話しできて僕たちも楽しかったです」

「うむ、話を聞かせてくれてありがとう。二人ともゆっくりと休んでくれ」

「ありがとうございます」

クレドさんを残して、俺たちは露天風呂を後にする。
そしてもう一度シャルネさんに挨拶をしてから部屋へと戻った。

「ふぁぁぁ……」

「あははは、眠そうだね」

「そういうルースは眠くないのか?」

「すごく眠たい……」

「だよな」

部屋に着いた直後、いつもなら全く眠くない時間だというのに眠気が襲ってくる。
その睡魔にまったく抗うことができずに俺たちはベッドに潜り込む。

「お休み……」

「うん、お休み……」

短い言葉を発した後、俺たちは眠りへと落ちていった。


そして迎えた翌朝、今日はフレア家に滞在する最終日だ。

「おはよう……」

「おはようございますぅ……」

「まだ眠たい……」

「おっはよう!」

しかしクリス先輩以外は体力の回復が追い付いていない。
そのため、俺たちはまったりと過ごさせてもらうことにした。

これは私の時代に流行った装飾ですね!
懐かしいものです……

クレドさんに許可をもらって武器庫を見学したり、

「また私が道化師のカードを持ったまま、ゲームが終わってしまったではないか!?」

「お姉ちゃんって顔に出過ぎなんだよね。だからどれを引いたらダメなのかすぐにわかっちゃう」

「ははは、意外な弱点だな」

「ふふふ……まだまだだね!フレアちゃん!」

カードゲームをしたりした。

勝ち誇るクリス先輩だが、フレアとビリ争いをしていたのはあなたですよ?
ちなみに最強はサリアだ。
まったく表情は変わらないし、野生の勘なのか当たりのカードを選ぶことが多かった。

そして食事の時間となればシャルネさんの料理を味わう。
だが、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまった。


「短い間でしたが、本当にお世話になりました。とても楽しかったです」

「またいつでも来るといい!待っているぞ!」

「ふふふ、私も楽しみにしているからね?」

早朝だというのに、フレア家は総出で馬車乗り場へと見送りに来てくれた。

「また、みんな来てくれるよね……?」

「うん、約束するよ」

「えへへ、約束だからね?」

ルースが返事をするとマリーちゃんは少し涙ぐんでいたが、笑って見送ってくれる。
フレアに似て強い子だ。

「また、新学期で会おう」

「はい!フレアさんもお元気で!」

「またね」

「クレドさん、またお手合わせしてくださいね!」

「こちらも精進しておく!君も励むがいい!」

名残惜しいが、そろそろ乗車時間だ。

「また必ず来させていただきます。その日までお元気で!」

俺たちは馬車へと乗り込み、窓から手を振り続ける。
そしてフレアたちも手を振り返してくれた。

ガタン、ゴトン……

ゆっくりと馬車が動き始める。
だんだんと小さくなっていくフレアたち一家の姿が完全に見えなくなるまで、そう時間はかからなかった。

「いいご家族でしたね……」

「ああ……」

「またいこうね?」

「もちろんだよ」

「ボクも誘ってね!?今度は一緒に行きたいから!」

俺たちは楽しく過ごさせてもらったレリアントの街を、笑顔で後にした。
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