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一年生

正当防衛でなんとかお願いします!

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「なにすんだ!こらぁ……?」

突然伸びてきた腕の主に怒声をあげようとした兄ちゃんだが、言葉を失った。
自分の腕を掴んだ相手が少女だとは思わなかったのもあるだろうが、見とれていたというのが大部分だと思う。

凛々しい瞳で睨みつけるフレアは、スポーティーな上下一体型の水着で、黒の布地に青いラインがフレアの引き締まったスタイルをより強調しているように見える。

「私の連れに何か用か?」

「こんなところで暴れたらダメですよ!」

「そうだそうだ」

「ああいうのがホント迷惑なのよねぇ!」

「マリーちゃん、前来たときに何かあったのかな?」

リーナは桃色のフリルが可愛らしいビキニ。
腰回りを彩るパレオからのぞく太ももはむっちりとしており、ついつまんでみたくなってしまう。

つまんだ瞬間吹き飛ばされそうですが?

うむ、だからやめておこう。

サリアの水着はシンプルの一言で終わる。
黒いワンピース。
学校指定の水着で使われていそうだ。
よくそんなの売っていたな……
幼い顔立ちに良く似合っているのだが、たゆんとしたわがままボディを抑えつけるのには大変だと思う。

そしてマリーちゃんはスカート付きの花がプリントされたお子様水着。
水玉の浮き輪を腰にはめて抱えている。
意外に年相応と思ったが、若さでアピールと言っていたことを思いだして納得した。

最後のクリス先輩は一番露出度が高い。
水色と白のボーダー柄水着で、その圧倒的なバスト、引き締まったウエスト、程よいヒップを惜しげもなく見せつけている。
その実力は余裕でお姉さんたちとも張り合えるほどだ。

「な、なに?君たちこいつらの連れなの?こんなガキよりも俺らの相手しない?」

フレアが手を離した途端、コロッと態度を変える兄ちゃん。

「そうそう」

「俺らの方がよっぽどカッコいいでしょ?」

うわぁ……と引きつった顔のお姉さんたちを全く意に介さず、フレアたちを口説き始めた。

「お断りだ」
「消えて下さい」
「邪魔」
「ばーかばーか!」
「えーと……ごめんなさい?でいいのかな?」

あっけなく一蹴されてしまう。

「お、大人しくしてりゃあコケにしやがって!」

「俺らが教育してやるよ!」

「こっち来い!」

手を出しそうな三人組に向かって、俺とルースは声を張り上げる。

「やめろ!」

「それ以上はいけない!」

俺たちは勇気を振り絞って男たちに注意した。
別に目の前の兄ちゃんたちが恐いわけでは無い。

「なんだ?ビビってんのか?」

「自分たちの連れの女が連れて行かれそうなのに、だせぇ奴らだ」

「そのまま震えて見てな、ガキども」

ぷっちん。

何かが切れる音が聞こえた気がした。

「俺、しーらない」

「僕もしーらない」

「はぁ?何言って……ぐへぇ!?」

フレアのハイキックがにやける兄ちゃんの顔面を捉えた。

「暴力未遂に侮辱行為。もはや見過ごすわけにはいかん」

「悪漢よ、神の裁きを受けなさい」

「人裁!?ぐほぉぉぉ……」

リーナの右拳が、兄ちゃんそのニの鍛え上げたであろう筋肉の腹を楽々撃ちぬき、黒い肉体が崩れ落ちていく。

「お兄ちゃんを罵倒した人とおんなじ……ユルサナイ……」

「こ、こわっ!ぎゃぁぁぁ!?」

瞳の色を失ったサリアが飛び上がり、兄ちゃんその三の鼻へと膝をぶちかます。
あえなく兄ちゃんその三はそのまま仰向けに倒れていった。

「はぁ……言わんこっちゃない」

「ねぇ君!お連れの女の子たち可愛いのに強いじゃない!このぉ大人しそうな顔して、やるじゃないの♪」

「それで誰が好みなのかしらぁ?」

「えへへ、いやぁ……」

成り行きを見ていたお姉さんたちに頬をツンツンされて、俺はあっさりとデレデレしてしまった。

「さて……詳しい話を聞こうじゃないか……」

「そうですねぇ……」

「しつけは大事……」

「そうあくまでも教育というものだよね……」

「ルースお兄ちゃん……私のこと捨てるのね!?」

先ほどまで兄ちゃんズに向かっていた視線が俺たちへと注がれる。

「ちょっと待て!話を聞いてくれ!これにはいろいろと事情が!」

「そうだよ!」

「それじゃあ私たちはこの辺で失礼するわ」

「頑張ってね~」

「バイバイ、可愛い少年君たち」

さっさと俺たちから離れていくお姉さんたち。

「重要参考人がぁぁぁ!?」

「待って!せめて誤解を解いてから!」

「問答無用!」

「話を聞いてくれるんじゃなかったのか!?」

フレアの言葉に俺が反論して騒いでいると、

「そこ!暴れているというのは君たちだね!」

どうやら警備員さんが来てくれたようだ。

「た、助けてください!」

「僕たち何も悪いことはしてないんです!」

俺たちは警備員のおじさんたちにしがみつき、助けを求めた。

「お、落ち着き給え!」

「もう……いやだ……」

「は、腹が……」

「鼻が……いでぇよぉ……」

「いったい何があったんだ……?」

警備員のおじさんたちは、ぴくぴくと身体を震わせて倒れている兄ちゃんズと、怒り狂うフレアたちを交互に見合わせ唖然と呟く。

その後、お姉さんたちが兄ちゃんズの乱暴な行いを警備員の人たちに説明してくれて、俺たちは事なきを得た。

「ふぅ……やっと解放されたな……」

「まあ、仕方ないよ。手を出そうとしたのは相手が先だとはいえ、怪我させちゃったから」

兄ちゃんズは鍛えているだけあって身体の方は重傷ではなかったが、女の子に一撃でのされてしまったことに憔悴していた。

結局、やり過ぎということで口頭での注意を受けたのだが……

「その、すまなかった……」

「ちょっと怒り過ぎちゃいました……」

「反省……」

「お姉さんのボクが止めなくちゃいけないのに……」

「ごめんなさい……」

せっかく遊びに来たというのに、みんなの表情が沈んでしまった。

「別にいいさ。厄介事に巻き込まれたのは俺たちだし」

「そうそう」

「あと……みんな、水着が良く似合っていて、可愛いと思う……」

「う、うん……」

なんとなく気恥ずかしくなった俺とルース。
そんな様子を見て、女の子たちの沈んだ表情が明るさを取り戻していく。

「誰が一番よく似合っている!?」

「非常に気になります!」

「わたしも自信あり」

「ボクも負けないよ!」

「ルースお兄ちゃんは私が一番だよね!」

勢いよく俺とルースへと迫ってきた。

「ルース!逃げるぞ!」

「そうだね!」

俺たちは湖のほとりへと駆け出す。

「待て!」

「逃がしませんよ!」

「逃がさない」

「かけっこなら負けないよ!」

「クリスお姉ちゃん!おんぶして!」

逃げだした俺たちを、満面の笑顔で追いかけてくるフレアたち。

これから今日という一日を楽しむことにしようと思う。
さぁ、仕切り直しだ。
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