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一年生

リーナさんが怒っています……

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「どりゃぁぁぁ!」

パシッ!
ズザザザッ!

ポンポンと投げられていくファーナの兜をダイビングキャッチする。
そのおかげで制服が土まみれになってしまったが、なんとか取り戻すことができた。

あ、ありがとうございます……

大丈夫か?

視界がグルグルですが、なんとか……

ていうか、ファーナの視界は兜から得ていたんだな。

そうですよ……うっ気持ち悪い……

「あーあ……ケシムのせいで終わっちゃった」

「そういうエンツが変なところに投げたからじゃないか!」

「はぁ……男子ってすぐケンカするんだから」

まったく悪びれることなく口げんかを始めた三人に、

「こら三人とも、まずはカイさんに謝りましょうね?」

ゴゴゴゴゴゴゴ……しゃがみ込みながらも圧倒的な威圧感を放つリーナは笑顔で怒っていた。

「えっ……あの……」
「あわわ……」
「ふぇ……」

その様子は子どもから見ても相当怖いのだろう、泣きそうである。
だって俺たちもビビってるんだから。

(こ、こわぁぁぁ!?)

(リーナって怒るとあんなに恐いんだ……)

(ふっ……私たちの間では常識だぞ?まだ仲が良くなかった私とサリアを問答無用で風呂へと連れていく強さがあるからな)

(リーナを怒らせたらダメ……これゼッタイ)

俺は制服の土を払いながら、リーナと子どもたちの様子を見ていた。

「召喚獣は私たち召喚師にとって大事なお友達なんです。みんなはお友達のこと、大事じゃありませんか?」

「だいじ……」
「うん……」
「ご、ごめんなさい……」

「私にではなく、カイさんに伝えてあげてください。着ている服を汚してでも守りたいお友達だったのですから」

三人は、気まずそうに目を合わせると俺の方へやってきた。

ふんっ、謝っても簡単には許さんからな!

……マスターにはもう少し寛容さを身につけてほしいものです。

「にいちゃん、ごめん……」
「お友達にいたずらして……」
「もうゼッタイにしないから……」

そう言うと、俺の制服のズボンの土を払ってくれる。

許そう。

マスターは簡単ですね。

ファーナは鬼なのか!?
こんなに真摯に謝ってくれる子どもたちを許す気など無いと!?

私は初めから怒ってませんが!?
ただ、マスターが簡単に……

「ヨロイさんもごめんね?」

サーシャがファーナの足元から見上げながら、謝っている。

いいですよぉ……?

ファーナだって簡単じゃないか!

マスターは鬼なのですか!?
こんなに真摯に謝ってくれる子どもたちを許す気など無いとおっしゃる!?

それさっき俺が言ったやつ!

「まあ、今度から気をつけてくれたらいい。ファーナも構わないって言ってるしな」

「ほんと?」

「ああ。ファーナ、サーシャちゃんを抱っこしてあげて」

かしこまりました。

「わぁぁぁ!騎士様に抱っこされるなんてお話しのお姫様みたい!」

目をキラキラと輝かせながら、周りを見渡すサーシャ。

うぅ……初めて子どもに喜ばれました……

ファーナも嬉しそうだ。

「あっズルいぞ!」

「僕もしてもらいたい!」

「二人は私の召喚獣に乗せてあげる。来てください、ラキシス」

リーナの言葉により、白い馬体のラキシスが召喚されると、

「か、かっけぇ!」

「乗せてくれるんですか!?」

エンツとケシムは大興奮だ。

「もちろん、ラキシスしゃがんであげて?」

すっ……

リーナの言葉通りに二人の前でしゃがみ込んだ。

「うっ……」

「ちょっと怖い感じもあるね……」

まあ、ラキシスを初めて見たらそうなるよな。

「仕方ないなぁ。よいしょ」

「リーナお姉ちゃん!?」

リーナが先にラキシスに跨り、

「ほら、二人ともおいで」

二人を誘った。

「「うん!」」

恐怖がなくなった二人が乗り込むと、ラキシスは立ち上がった。

「うわぁぁぁ!たかぁい!」

「それにふかふかだ!」

「私のお友達はすごいでしょ?」

「「とってもすごい!」」

二人ともいいな!
私も抱っこしてほしい!
僕も乗せて!

「じゅ、順番だからもう少し待ってね?」

「あの、よろしければ私たちも召喚してもいいですか?」

「えっ……しかしみなさんはご見学では?」

「僕たちも見せてあげたいなと思いまして、大事な友達を」

「おねがい」

「はい!よろしくお願いいたします!」

ダリア先生とフレアたちが話し合った結果、

「さあ来い!フェザー!」

「おいで!リフィル!」

「お兄ちゃん、カモン」

三人も次々と召喚していく。

「「「うわぁぁぁ!」」」

フェザーとリフィルは男の子に、ロゼルは女の子に大人気だ。

「ふん!残念だが一番人気はファーナだからな!」

ええ!もちろんです!

「いーえ!私のラキシスが一番です!」

「何を言うか!フェザーに決まっている!」

「リフィルだって負けてないよ!」

「お兄ちゃん、デレデレしないの」

なんだか大騒ぎになってしまった。

「おやおや、みなさん楽しそうですね」

「あっ、園長先生。はい、とってもいい笑顔です」

園長とダリアは、はしゃぐ子どもたちの様子を優しい眼差しで見つめるのだった。



「兄ちゃんたちまた来てよな!」

「約束だからね!」

「来ないと許さないんだから!」

約束の時間が過ぎ、帰り際にそう子どもたちにお願いされたのだが、

「むぅ……」

難しい話だ。

仕事として来ている以上、プライベートで遊びに来るのはあまり褒められることではない。
他の生徒の依頼を潰してしまうことにもなるからだ。
そんな悩みをしていると、

「また来てください。今度はみなさんを指名させていただきますので」

園長先生がにこやかにそう言ってくれた。

「いいんですか?」

「ええ、報酬はそこまで多くは支払えませんので、みなさんがよろしければですが……」

俺はリーナの方を見る。
するとリーナは微笑んで、

「園長先生、喜んで受けさせていただきます。こちらこそよろしくお願いいたします」

「ありがとうございます。みなさん、お兄さんたちがまた来てくれますからいい子で待っていましょうね?」

「「「はぁい!!!」」

二時間という短い時間ではあったが、充実した時間を過ごした保育園から出て行く。
背中からはばいばーいという子どもたちの声が聞こえてきた。

「……また、行きましょうね?カイさん」

「ああ、そうだな」

俺たちは名残惜しい気持ちになりながらも、初めての依頼を完了させて学園へと戻っていく。
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