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144話 魔法構築と世界の革新
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ミネルバとよしのんの2人を送り出してから自宅に戻り、リビングの定位置で座布団を枕にして寝転がる。
一先ずウィッシュタニアへのワープゲートも確保できたし、2人が帰還すればアイヴィナーゼへの直通パスも手に入る。
後はクラウディア王女を国へ送り届ければ一先ず安泰……な訳が無いな。
バラドリンドとウィッシュタニアの人間に勇者よしのんがこの家に居るのがバレているのだ、隠れ家の1つや2つ用意しておくべきだろう。
とりあえずアイヴィナーゼ辺りに家を借りるかな。
この人数が住める場所となると、どうしても悪目立ちしかねない。
ならここは初心者合宿に行った村に拠点を移すか。
あそこなら合宿で使ったコテージもあるし、頼めば借りられるかもしれない。
それにアレッシオの実家でもあるし、彼に頼めば何とかなりそうだし。
のほほん顔のぽっちゃりドワーフ神官の顔を思い浮かべていると、トトとメリティエがやって来て俺に抱き着いた。
「なートシオー」
「どうしたトト?」
「メリーと外に遊びに行きたいんだけど良い?」
「退屈で死にそうだ。ダメだというなら娯楽を提供しろ」
2人が体を密着させて甘える仕草でおねだりする。
「まるぺけ(三目並べ)とかリバーシ(オセロ)は?」
「あれは性に合わん」
「勝てないからつまんない」
「ユニスは手加減を知るべきだ」
「なー?」
「ははは、面目ない……」
2人に攻められ苦笑いを浮かべるユニス。
真面目なユニスは真面目が過ぎ、手加減出来ない質の様だ。
ちなみにまるぺけやオセロも過去の勇者がこの世界で広めた物らしく、少し値は張るがトランプやチェスも存在する。
異世界知識チートに夢見ていたシンくんの出る幕ってホントに無いな……。
「んー、まぁ2度目だし別に構わないか。無茶したり危ない事はやらない様にね?」
「わかったー!」
「任せろ」
元気に喜ぶトトにすんごい決め顔で親指を立てて頷くメリティエ。
だがなぜだろう、全然安心して任せられない。
この2人が揃うと歯止めが利かなくなるのが怖いんだよなぁ。
「じゃぁお小遣いあげるから2人で遊んできていいよ。ただし、生き物なんか買ってこないようにね? あと、夕飯が入らなくなるような暴食も禁止」
「おー」
「わかっている」
2人に銀貨を5枚ずつ渡すと、子供のように目を輝かせて玄関へ向かう。
忘れてるみたいだけど、俺が預かってるゴルゴーンで得た2人の資産だけでもすごい事になってるんやで……。
アイテム欄を開いて確認すると、おかしな量の金銀が確認できる。
物価を暴落させない範囲でどう換金するべきか非常に悩ましい。
「……やはり心配なので私も一緒に行きましょう」
「そうしてくれると助かるよ」
またもユニスが2人のお守を買って出てくれた。
ミネルバの時と言い、ユニスは面倒見がいいので非常に助かる。
あ、そうだ。
「序に皆の分のプリンも買って来てくれる?」
「いつもの店でよろしいので?」
「うん、お願いね」
双頭の黒犬の首にチェーンを取り付けるユニスへ金貨を渡し、3人と一頭を見送った。
さてと、魔法に関する実験はできないが、思考するだけはしておこう。
今回の事で痛感させられたのは、俺の魔力の低さとMP容量の少なさだ。
クラウ・ソラスやゲイ・ボルグを最大出力で放っているとは言え、一発撃つ度に倒れていてはお話にならない。
魔法を打つ度にMP酔いなんて起こしてるようでは、戦力としては使えない。
しかも魔法構築の精度が低いせいか、最大出力で放って漸くあの火力。
正直アニメやゲームに登場する主人公達の事を考えると、今の戦闘力ではド底辺にランクインしかねない。
自分で言うのもなんだけど、強さが微妙過ぎるんだよなぁ。
近接戦闘ではモーディーンさんの足元にも及ばず、魔法の精度ではイルミナさんに劣り、純粋な火力ではアーヴィンに負ける……。
いっそのこと近接だなんだと煩わされないくらいの、それこそワンパンで山よりでかい怪物をぶっ飛ばせるくらいの力は欲しい。
発想が頭の悪い子供みたいだが、冗談抜きにしてどんな化け物が現れても一撃で粉砕できる高威力魔法と、軍隊相手にも有効な程の広い効果範囲を持つ超広域魔法は必要だ。
この2つがあれば戦術的にも戦略的にも大きな武器となる。
恐らくクラウ・ソラスは前者の最有力候補なので、このまま威力と精度を伸ばしていく方向で良いだろう。
だが問題は後者だな。
今までは迷宮に籠っていたせいもあって必要としなかったが、世情の動向次第では戦争に首を突っ込まざるを得なくなるため、今後を見据えても必要不可欠だ。
最上位職の広域魔法は迷宮の中では回避不能な広さを持つ。
しかし、街一つ飲み込めるかと言えばまず不可能。
最大広範囲魔法がなんであるか試してみたい所ではあるが、魔法の使用を禁止されているため今は出来ないので現状確認している魔法で見繕う。
とりあえずは光属性広域魔法のバーニングレイをベースに、威力の強化と超広域範囲の魔法を編み出すか。
単純に核レベルの広域高火力……はどう考えても不可能だな。
レベルを上げて行けばMPの最大値も上がるが、今の俺のベースはLv154。
それなりに上がっているが、それでも全然足りやしない。
魔力の強化と燃費問題、超広域魔法の習得を最優先課題と位置付けよう。
そう結論付けると、その3つの構想に取り掛かった。
まず魔力だが、魔力に至ってはボーナスステータスが99以上振れないので完全に頭打ち状態である。
「イルミナさん、レベル以外での魔力強化方法ってありませんか?」。
「魔力は魔法を使い続けておれば自然と上がるものじゃ。体を鍛えるのに棒切れ振り回すのと同じじゃな」
「あ、そういう感じなんですね」
「MPも魔力が上がればそれに比例して伸びていきおる。……じゃが何遍も言うように、今日は魔法禁止じゃからな。日に何度もMPを失っては病気になるでな」
「はい」
釘を刺されてしまう。
たしか病気などに対する抵抗力を上げるのに、身体にマナを循環させているんだっけか。
魔法の使用が解禁されたら練習しよう。
「マナ操作でマナを操るまでならば大目に見てやらんでもないがのう」
「良いんですか?」
「ただし、決してMPを付こうてはならんえ」
「はい、気をつけます」
イルミナさんが良いって言うのなら良いのだろう。
次にチャットルームで大福さんからは近接強化系スキルの魔法化案、レンさんからは超広域魔法の案を頂く。
てことは、近接の強化系スキルと言うと〈マキシマイズパワー〉や〈バトルオーラ〉みたいなやつか。
マナロードにもマキシマイズマジックがあるし、バトルオーラはボーナススキルの〈マナコート〉を独自に生み出し全身に纏うイメージで弄ればいいかな?
広域魔法に関しては、なかなかえげつない案が提示され、構想のめどが立った。
チャット後は大気のマナを集約し、集めたマナで形状変化や属性変化の練習を行っていると、自然とコツが掴めて来た。
マナ集約に至っては、マナ消失を超える範囲のマナを一瞬でかき集められる程に。
なぜそんな短時間で上達したかと言うと、集める時のイメージを変えたからだ。
今までは掃除機で空気を吸い込むようなイメージで集めていたのだが、これだと吸い込む速度が家庭用掃除機のイメージしか出せず、速度が全然上がらなかった。
で、もう面倒くさくなって爆縮のイメージで、範囲を設定して一気に圧縮集約する方法をとった。
そしたらまぁ思いのほか上手く行ってしまい、周囲にマナがある限りは無尽蔵に魔法が打てる状態になってしまう。
これなら瞬間的に出せる火力に上乗せできそうだ。
けど、継続戦闘や咄嗟の時には使えないな。
続いて魔法構築の練習をしているフィローラ達がお手本として既存のジョブから発動させたブリザードランスを、横からマナ感知で分析しマナ操作で触れてスキャンする。
こうして解析した魔法を完コピしてジョブに頼らず再構築し、マナをどう変化させれば魔法として発現するのかを理解すると、爆縮マナ収束で集めたマナを用いて再現してみせた。
なるほど、ブリザードランスとはこういうものか!
それを見ていたイルミナさんが目を丸くする。
「昼前まで手こずっておったかと思いきや、短期間でこうも完璧に魔法を構築しやるとは……。末恐ろしいとはこの事じゃな」
「とても追い付ける気がしません……」
「トシオさんはしゅごいでふね……」
イルミナさんに続き、セシルとフィローラも感心する。
「いや、それを言ったらリシアの方がすごいだろ」
「私なんて、トシオ様に比べたらまだまだです」
リシアが謙遜しながらも俺を持ち上げる。
だがこれを鵜呑みにしてはならない。
なぜなら彼女はマナロードでもないにも拘らず、少し教えたらすぐにマナ感知とマナ操作を習得し、プリースト系とシャーマン系魔法を1から構築して再現してしまったのだから。
流石にマジックキャスター系の魔法までは無理なようだが。
けど、リシアならその内やりかねないんだよなぁ。
いやいや、リシアの事だ、実はもう使えるが、俺を立てるために敢えて出来ないフリをしている可能性もある。
もしそうなら、リシアの思い遣りを無下にしない様に今だけでも自慢げに胸を張っておくか。
いや、そんな無駄な気遣いこそ、リシアの本意じゃないだろう。
ならここは素直にリシアの気遣いその物を労わせてもらうかな。
リシアの頭を撫でて褒め称え、彼女の髪や耳を触らせて頂く。
〝リシアを褒めるふりをして髪が触りたい〟だけだなんて当然バレてるんだろうが、まぁそこはほら、恋女房なためお互いウィンウィンだと信じたい。
それとローザも自分で火や水が出せるようになったので「台所仕事が捗りますわ~♪」と完全に専業主婦の視点で魔法を使い始めた。
これで掃除や洗いも魔法でし始めたりしたら、一気に作業の効率化に繋がるな。
食器洗いとか面倒だしなぁ。
ここは生活魔法を開発するところかな。
食器洗い機の動きを思い出しながら構想を練っていく。
食器をプロテクションで覆い、極小までに威力を押さえたウォーターブラストで汚れを洗浄。
これを魔道具に落とし込んむとすれば、耐水加工した木箱に水属性結晶を用いて水圧洗浄がベターであろうか。
セシルに紙と鉛筆を借りて落書きを始める。
「トシオさん、それはなんです~?」
「食器洗い乾燥機。あと迷宮に行かなくなる時のことも考えて洗濯機も」
ローザの問いに応えながら、序に洗濯機も描く。
大きな木桶に水流で洗い物を回転させる洗濯機のつもりだ。
「描いていることは分かりますが、なかなか先進的な絵ですね」
「そこは普通に下手だって言ってくれて良いからね?」
覗き込むリシアが無理に褒めるも、あからさまなお世辞に苦笑いで注意しておく。
「これに〈魔核〉をつければ完成ですね」
「あぁ、魔核か。確か貴族とかお金持ちの家は照明なんかに使ってるんだっけ?」
リシアの魔核発言に、以前教えてもらったことを思い出す。
確かスライムから大量に頂いたな。
収納袋様からスライム産の魔核を数個取り出しテーブルに転がす。
「洗濯機かえ……この規模の魔道具となると、精々20回も使えば魔核内の魔力が尽きてしまうえ。食器洗い機ならば70回くらいかのう?」
イルミナさんが魔道具の消費魔力を予想し、その見積もりに燃費わるいなぁと内心で思う。
洗濯なんて一般家庭なら1日1回は行うだろう。
なら20日で魔核を交換しなければならない洗濯機なんて、一般家庭で使うにはどうなのだろうか?
交換費用が問題だな。
「ちなみに魔核っていくらくらいするの?」
「相場にもよりますが、大体1つ300カパーで取引されていたはずです」
「うえっ、20日で銀貨3枚も消えるのか、それはちょっとシャレにならないな」
リシアの言葉に思わず呻く。
年間銀貨54~55枚、一般家庭には決して安い出費ではない。
流石金持ちご用達アイテムなだけはある。
充電電池みたいに魔核内の魔力が回復出来たらいいのにな……。
試しに覚えたての魔道具化とマナ操作を用い、マナが自動的に魔核に吸収されるよ流れを作ってみた。
こうしてほんの気軽な気持ちで行った魔道具化により、充電電池ならぬ充電魔核があっさりと爆誕してしまった。
回復してるのは魔力だし、充魔力魔核と言うべきか?
言い辛いし〈マナバッテリー〉で良いか。
「なんと、その発想には至らなんだ……!?」
マナの流れを見ていたイルミナさんが、目から鱗とばかりに驚嘆する。
魔核は魔力が扱えない人にこそ必要なアイテムだが、価格的に一般人が欲しがる様なものでもない。
魔核を必要とする人間は金にモノを言わせるので、魔核そのものに利便性を求めない。
魔力を扱える人は魔道具を自身の魔力で動かすため、魔核そのものを必要としない。
そしてなにより、この世界の人は充電電池や充電バッテリーを知らないため、この発想にたどり着けなかったのも仕方のない。
どんな人間でも永続的に魔道具が扱えるようになる魔道具。
下手をしたら世界を一変しかねない革新的な物体が、たった今生まれたのだと自覚する。
もし〈マナバッテリー〉が世界中に広まった場合、何かしらのデメリットが発生したりするだろうか?
世界に広まったと仮定して、起こりえる問題とはなんだ?
世界中のマナが枯渇――はダンジョンコアの規模縮小版だし、これ程マナであふれている世界では、世界中の人が持ったとしてもそれが問題になるとは思えない。
だが、兵器転用される可能性は否定できないな。
風属性魔法を用いたライフル銃とかでが出回りでもすれば、それこそ一般人が簡単に兵士となり得る。
犯罪者やサイコパスが銃を持つとどうなるかなんて、元の世界で嫌というほど見て来たのだ。
それだけは避けなければ……。
魔道具師初級程度の俺が思い付きであっさり出来てしまうような物体である。
この世界の人達がその発想に気付けば一気に広まるのは想像に難くない。
皆の暮らしが楽になる事は良い事だが、それで世界の諸々のバランスが崩れるのは本意ではなく、この世界の平和維持的な観点からあまり迂闊なことはしたくない。
取り扱いに何かしらの制限が付けられたら良いんだが、そのやり方が分からない。
まぁしばらくは身内だけで使うとしよう。
生活水準の引き上げよりも、世界の安寧を選んだ。
一先ずウィッシュタニアへのワープゲートも確保できたし、2人が帰還すればアイヴィナーゼへの直通パスも手に入る。
後はクラウディア王女を国へ送り届ければ一先ず安泰……な訳が無いな。
バラドリンドとウィッシュタニアの人間に勇者よしのんがこの家に居るのがバレているのだ、隠れ家の1つや2つ用意しておくべきだろう。
とりあえずアイヴィナーゼ辺りに家を借りるかな。
この人数が住める場所となると、どうしても悪目立ちしかねない。
ならここは初心者合宿に行った村に拠点を移すか。
あそこなら合宿で使ったコテージもあるし、頼めば借りられるかもしれない。
それにアレッシオの実家でもあるし、彼に頼めば何とかなりそうだし。
のほほん顔のぽっちゃりドワーフ神官の顔を思い浮かべていると、トトとメリティエがやって来て俺に抱き着いた。
「なートシオー」
「どうしたトト?」
「メリーと外に遊びに行きたいんだけど良い?」
「退屈で死にそうだ。ダメだというなら娯楽を提供しろ」
2人が体を密着させて甘える仕草でおねだりする。
「まるぺけ(三目並べ)とかリバーシ(オセロ)は?」
「あれは性に合わん」
「勝てないからつまんない」
「ユニスは手加減を知るべきだ」
「なー?」
「ははは、面目ない……」
2人に攻められ苦笑いを浮かべるユニス。
真面目なユニスは真面目が過ぎ、手加減出来ない質の様だ。
ちなみにまるぺけやオセロも過去の勇者がこの世界で広めた物らしく、少し値は張るがトランプやチェスも存在する。
異世界知識チートに夢見ていたシンくんの出る幕ってホントに無いな……。
「んー、まぁ2度目だし別に構わないか。無茶したり危ない事はやらない様にね?」
「わかったー!」
「任せろ」
元気に喜ぶトトにすんごい決め顔で親指を立てて頷くメリティエ。
だがなぜだろう、全然安心して任せられない。
この2人が揃うと歯止めが利かなくなるのが怖いんだよなぁ。
「じゃぁお小遣いあげるから2人で遊んできていいよ。ただし、生き物なんか買ってこないようにね? あと、夕飯が入らなくなるような暴食も禁止」
「おー」
「わかっている」
2人に銀貨を5枚ずつ渡すと、子供のように目を輝かせて玄関へ向かう。
忘れてるみたいだけど、俺が預かってるゴルゴーンで得た2人の資産だけでもすごい事になってるんやで……。
アイテム欄を開いて確認すると、おかしな量の金銀が確認できる。
物価を暴落させない範囲でどう換金するべきか非常に悩ましい。
「……やはり心配なので私も一緒に行きましょう」
「そうしてくれると助かるよ」
またもユニスが2人のお守を買って出てくれた。
ミネルバの時と言い、ユニスは面倒見がいいので非常に助かる。
あ、そうだ。
「序に皆の分のプリンも買って来てくれる?」
「いつもの店でよろしいので?」
「うん、お願いね」
双頭の黒犬の首にチェーンを取り付けるユニスへ金貨を渡し、3人と一頭を見送った。
さてと、魔法に関する実験はできないが、思考するだけはしておこう。
今回の事で痛感させられたのは、俺の魔力の低さとMP容量の少なさだ。
クラウ・ソラスやゲイ・ボルグを最大出力で放っているとは言え、一発撃つ度に倒れていてはお話にならない。
魔法を打つ度にMP酔いなんて起こしてるようでは、戦力としては使えない。
しかも魔法構築の精度が低いせいか、最大出力で放って漸くあの火力。
正直アニメやゲームに登場する主人公達の事を考えると、今の戦闘力ではド底辺にランクインしかねない。
自分で言うのもなんだけど、強さが微妙過ぎるんだよなぁ。
近接戦闘ではモーディーンさんの足元にも及ばず、魔法の精度ではイルミナさんに劣り、純粋な火力ではアーヴィンに負ける……。
いっそのこと近接だなんだと煩わされないくらいの、それこそワンパンで山よりでかい怪物をぶっ飛ばせるくらいの力は欲しい。
発想が頭の悪い子供みたいだが、冗談抜きにしてどんな化け物が現れても一撃で粉砕できる高威力魔法と、軍隊相手にも有効な程の広い効果範囲を持つ超広域魔法は必要だ。
この2つがあれば戦術的にも戦略的にも大きな武器となる。
恐らくクラウ・ソラスは前者の最有力候補なので、このまま威力と精度を伸ばしていく方向で良いだろう。
だが問題は後者だな。
今までは迷宮に籠っていたせいもあって必要としなかったが、世情の動向次第では戦争に首を突っ込まざるを得なくなるため、今後を見据えても必要不可欠だ。
最上位職の広域魔法は迷宮の中では回避不能な広さを持つ。
しかし、街一つ飲み込めるかと言えばまず不可能。
最大広範囲魔法がなんであるか試してみたい所ではあるが、魔法の使用を禁止されているため今は出来ないので現状確認している魔法で見繕う。
とりあえずは光属性広域魔法のバーニングレイをベースに、威力の強化と超広域範囲の魔法を編み出すか。
単純に核レベルの広域高火力……はどう考えても不可能だな。
レベルを上げて行けばMPの最大値も上がるが、今の俺のベースはLv154。
それなりに上がっているが、それでも全然足りやしない。
魔力の強化と燃費問題、超広域魔法の習得を最優先課題と位置付けよう。
そう結論付けると、その3つの構想に取り掛かった。
まず魔力だが、魔力に至ってはボーナスステータスが99以上振れないので完全に頭打ち状態である。
「イルミナさん、レベル以外での魔力強化方法ってありませんか?」。
「魔力は魔法を使い続けておれば自然と上がるものじゃ。体を鍛えるのに棒切れ振り回すのと同じじゃな」
「あ、そういう感じなんですね」
「MPも魔力が上がればそれに比例して伸びていきおる。……じゃが何遍も言うように、今日は魔法禁止じゃからな。日に何度もMPを失っては病気になるでな」
「はい」
釘を刺されてしまう。
たしか病気などに対する抵抗力を上げるのに、身体にマナを循環させているんだっけか。
魔法の使用が解禁されたら練習しよう。
「マナ操作でマナを操るまでならば大目に見てやらんでもないがのう」
「良いんですか?」
「ただし、決してMPを付こうてはならんえ」
「はい、気をつけます」
イルミナさんが良いって言うのなら良いのだろう。
次にチャットルームで大福さんからは近接強化系スキルの魔法化案、レンさんからは超広域魔法の案を頂く。
てことは、近接の強化系スキルと言うと〈マキシマイズパワー〉や〈バトルオーラ〉みたいなやつか。
マナロードにもマキシマイズマジックがあるし、バトルオーラはボーナススキルの〈マナコート〉を独自に生み出し全身に纏うイメージで弄ればいいかな?
広域魔法に関しては、なかなかえげつない案が提示され、構想のめどが立った。
チャット後は大気のマナを集約し、集めたマナで形状変化や属性変化の練習を行っていると、自然とコツが掴めて来た。
マナ集約に至っては、マナ消失を超える範囲のマナを一瞬でかき集められる程に。
なぜそんな短時間で上達したかと言うと、集める時のイメージを変えたからだ。
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これなら瞬間的に出せる火力に上乗せできそうだ。
けど、継続戦闘や咄嗟の時には使えないな。
続いて魔法構築の練習をしているフィローラ達がお手本として既存のジョブから発動させたブリザードランスを、横からマナ感知で分析しマナ操作で触れてスキャンする。
こうして解析した魔法を完コピしてジョブに頼らず再構築し、マナをどう変化させれば魔法として発現するのかを理解すると、爆縮マナ収束で集めたマナを用いて再現してみせた。
なるほど、ブリザードランスとはこういうものか!
それを見ていたイルミナさんが目を丸くする。
「昼前まで手こずっておったかと思いきや、短期間でこうも完璧に魔法を構築しやるとは……。末恐ろしいとはこの事じゃな」
「とても追い付ける気がしません……」
「トシオさんはしゅごいでふね……」
イルミナさんに続き、セシルとフィローラも感心する。
「いや、それを言ったらリシアの方がすごいだろ」
「私なんて、トシオ様に比べたらまだまだです」
リシアが謙遜しながらも俺を持ち上げる。
だがこれを鵜呑みにしてはならない。
なぜなら彼女はマナロードでもないにも拘らず、少し教えたらすぐにマナ感知とマナ操作を習得し、プリースト系とシャーマン系魔法を1から構築して再現してしまったのだから。
流石にマジックキャスター系の魔法までは無理なようだが。
けど、リシアならその内やりかねないんだよなぁ。
いやいや、リシアの事だ、実はもう使えるが、俺を立てるために敢えて出来ないフリをしている可能性もある。
もしそうなら、リシアの思い遣りを無下にしない様に今だけでも自慢げに胸を張っておくか。
いや、そんな無駄な気遣いこそ、リシアの本意じゃないだろう。
ならここは素直にリシアの気遣いその物を労わせてもらうかな。
リシアの頭を撫でて褒め称え、彼女の髪や耳を触らせて頂く。
〝リシアを褒めるふりをして髪が触りたい〟だけだなんて当然バレてるんだろうが、まぁそこはほら、恋女房なためお互いウィンウィンだと信じたい。
それとローザも自分で火や水が出せるようになったので「台所仕事が捗りますわ~♪」と完全に専業主婦の視点で魔法を使い始めた。
これで掃除や洗いも魔法でし始めたりしたら、一気に作業の効率化に繋がるな。
食器洗いとか面倒だしなぁ。
ここは生活魔法を開発するところかな。
食器洗い機の動きを思い出しながら構想を練っていく。
食器をプロテクションで覆い、極小までに威力を押さえたウォーターブラストで汚れを洗浄。
これを魔道具に落とし込んむとすれば、耐水加工した木箱に水属性結晶を用いて水圧洗浄がベターであろうか。
セシルに紙と鉛筆を借りて落書きを始める。
「トシオさん、それはなんです~?」
「食器洗い乾燥機。あと迷宮に行かなくなる時のことも考えて洗濯機も」
ローザの問いに応えながら、序に洗濯機も描く。
大きな木桶に水流で洗い物を回転させる洗濯機のつもりだ。
「描いていることは分かりますが、なかなか先進的な絵ですね」
「そこは普通に下手だって言ってくれて良いからね?」
覗き込むリシアが無理に褒めるも、あからさまなお世辞に苦笑いで注意しておく。
「これに〈魔核〉をつければ完成ですね」
「あぁ、魔核か。確か貴族とかお金持ちの家は照明なんかに使ってるんだっけ?」
リシアの魔核発言に、以前教えてもらったことを思い出す。
確かスライムから大量に頂いたな。
収納袋様からスライム産の魔核を数個取り出しテーブルに転がす。
「洗濯機かえ……この規模の魔道具となると、精々20回も使えば魔核内の魔力が尽きてしまうえ。食器洗い機ならば70回くらいかのう?」
イルミナさんが魔道具の消費魔力を予想し、その見積もりに燃費わるいなぁと内心で思う。
洗濯なんて一般家庭なら1日1回は行うだろう。
なら20日で魔核を交換しなければならない洗濯機なんて、一般家庭で使うにはどうなのだろうか?
交換費用が問題だな。
「ちなみに魔核っていくらくらいするの?」
「相場にもよりますが、大体1つ300カパーで取引されていたはずです」
「うえっ、20日で銀貨3枚も消えるのか、それはちょっとシャレにならないな」
リシアの言葉に思わず呻く。
年間銀貨54~55枚、一般家庭には決して安い出費ではない。
流石金持ちご用達アイテムなだけはある。
充電電池みたいに魔核内の魔力が回復出来たらいいのにな……。
試しに覚えたての魔道具化とマナ操作を用い、マナが自動的に魔核に吸収されるよ流れを作ってみた。
こうしてほんの気軽な気持ちで行った魔道具化により、充電電池ならぬ充電魔核があっさりと爆誕してしまった。
回復してるのは魔力だし、充魔力魔核と言うべきか?
言い辛いし〈マナバッテリー〉で良いか。
「なんと、その発想には至らなんだ……!?」
マナの流れを見ていたイルミナさんが、目から鱗とばかりに驚嘆する。
魔核は魔力が扱えない人にこそ必要なアイテムだが、価格的に一般人が欲しがる様なものでもない。
魔核を必要とする人間は金にモノを言わせるので、魔核そのものに利便性を求めない。
魔力を扱える人は魔道具を自身の魔力で動かすため、魔核そのものを必要としない。
そしてなにより、この世界の人は充電電池や充電バッテリーを知らないため、この発想にたどり着けなかったのも仕方のない。
どんな人間でも永続的に魔道具が扱えるようになる魔道具。
下手をしたら世界を一変しかねない革新的な物体が、たった今生まれたのだと自覚する。
もし〈マナバッテリー〉が世界中に広まった場合、何かしらのデメリットが発生したりするだろうか?
世界に広まったと仮定して、起こりえる問題とはなんだ?
世界中のマナが枯渇――はダンジョンコアの規模縮小版だし、これ程マナであふれている世界では、世界中の人が持ったとしてもそれが問題になるとは思えない。
だが、兵器転用される可能性は否定できないな。
風属性魔法を用いたライフル銃とかでが出回りでもすれば、それこそ一般人が簡単に兵士となり得る。
犯罪者やサイコパスが銃を持つとどうなるかなんて、元の世界で嫌というほど見て来たのだ。
それだけは避けなければ……。
魔道具師初級程度の俺が思い付きであっさり出来てしまうような物体である。
この世界の人達がその発想に気付けば一気に広まるのは想像に難くない。
皆の暮らしが楽になる事は良い事だが、それで世界の諸々のバランスが崩れるのは本意ではなく、この世界の平和維持的な観点からあまり迂闊なことはしたくない。
取り扱いに何かしらの制限が付けられたら良いんだが、そのやり方が分からない。
まぁしばらくは身内だけで使うとしよう。
生活水準の引き上げよりも、世界の安寧を選んだ。
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その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
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アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
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自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
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※小説家になろうさんで投稿始めました
【完結】あなたに知られたくなかった
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積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
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