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第二話 出会い
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「はあ、まったく……」
帰るために昇降口へ向かったりそれぞれの部活へ向かったりする生徒達とすれ違いながら保健室に向かいつつ俺はため息をつく。行くとは決めたものの、結局ちゃんとした説明もなしに向かわされている事には少しだけ呆れていた。けれど、それと同時に少しだけワクワクはしていた。
「雨夜か……一体どんな奴なんだろ」
週に一度程度とはいえ、クラスメート達が顔も知らない相手と勉強をしたり一緒に昼食を食べれたりするというのは悪い気はしなかった。もっとも、雨夜がそれを望むかはわからないが。
そんな事を考えていた時、俺の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
「……そういえば、どうしてみんな顔を知らないんだろ」
思えば不思議な話だ。入学式の時から顔も知らない相手、それもそれが女子となれば男子達は興味を持つはずで、保健室に顔を見に行くくらいはしているはずだ。
けれど、見たという話は聞かないし、行ってみたという話もクラス内で聞いた記憶はない。もっとも、俺自身があまりクラスメートと関わらないからというのもあるので、実際には行ってる奴もいるのかもしれないが。
「色々疑問はあるけど……まあとりあえず会ってみればわかるよな」
そう結論付け、俺はそのまま保健室に向けて歩いていく。数分後、保健室に着いた俺は“四回”ノックをした。
この四回のノックというのは理由がある。前にノックの回数にも意味があり、二回がトイレでの確認で三回は友人や恋人に対しての在室確認、四回が初めての相手や礼儀が必要な相手と聞いた事があり、それからは回数も気にするようになったのだ。
ノックの後、保健室の中から「どうぞ」と声をかけられ、俺はドアに手を掛けてそのまま引き開けた。
「失礼します」
ドアを開けて軽く一礼をしてから入っていくと、中にいた秋保健美先生がクスクス笑う。
「もう、保健室くらいそんな畏まって入ってこなくても良いのに。さっきの四回ノックだって別に就職面接でも無いんだし、気軽に入ってきて良いのよ?」
「性分なもので」
「だいぶ生きづらい性格してるわね、貴方。それで怪我とか病気でもしたの? 見た感じ、そんな風には見えないけれど……」
「いえ、ウチの担任の運上先生からここにいる雨夜美樹に会ってきてくれと言われたので来ました。なんでも俺にしか頼めないことがあるとかで」
それを聞いた秋保先生は納得顔でため息をつく。
「そういう事ね。わかったわ、ちょっと具合悪くして眠ってたところだったの。いま起こすわね」
「あ、はい」
秋保先生は椅子から立ち上がると、カーテンが引かれていたベッドに近づき、中へと入った。
「雨夜さん、ごめんなさい。ちょっと起きてくれる?」
「ん、んぅ……?」
雨夜の物らしき眠そうな声が聞こえる。声はとても可愛らしく、響きは少し幼さを感じさせるところはあったものの、鈴を転がしたような綺麗な物であり、その後にベッドからは軽い物音が聞こえた。そして秋保先生がカーテンを開けて出てくる。
「いま出てくると思うからちょっと待っててね。やっぱり寝起きだからか少し頭がボーッとしてるみたいなの」
「わかりました」
そうして待っていた時、カーテンが開いた。すると、一人の女子生徒が姿を現し、何がなんだかといった顔で目を擦っていた。
「秋保先生……一体なに、が……」
雨夜が初めましてである俺の姿を見て固まる。これが俺と雨夜の最初の出会いだった。
帰るために昇降口へ向かったりそれぞれの部活へ向かったりする生徒達とすれ違いながら保健室に向かいつつ俺はため息をつく。行くとは決めたものの、結局ちゃんとした説明もなしに向かわされている事には少しだけ呆れていた。けれど、それと同時に少しだけワクワクはしていた。
「雨夜か……一体どんな奴なんだろ」
週に一度程度とはいえ、クラスメート達が顔も知らない相手と勉強をしたり一緒に昼食を食べれたりするというのは悪い気はしなかった。もっとも、雨夜がそれを望むかはわからないが。
そんな事を考えていた時、俺の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
「……そういえば、どうしてみんな顔を知らないんだろ」
思えば不思議な話だ。入学式の時から顔も知らない相手、それもそれが女子となれば男子達は興味を持つはずで、保健室に顔を見に行くくらいはしているはずだ。
けれど、見たという話は聞かないし、行ってみたという話もクラス内で聞いた記憶はない。もっとも、俺自身があまりクラスメートと関わらないからというのもあるので、実際には行ってる奴もいるのかもしれないが。
「色々疑問はあるけど……まあとりあえず会ってみればわかるよな」
そう結論付け、俺はそのまま保健室に向けて歩いていく。数分後、保健室に着いた俺は“四回”ノックをした。
この四回のノックというのは理由がある。前にノックの回数にも意味があり、二回がトイレでの確認で三回は友人や恋人に対しての在室確認、四回が初めての相手や礼儀が必要な相手と聞いた事があり、それからは回数も気にするようになったのだ。
ノックの後、保健室の中から「どうぞ」と声をかけられ、俺はドアに手を掛けてそのまま引き開けた。
「失礼します」
ドアを開けて軽く一礼をしてから入っていくと、中にいた秋保健美先生がクスクス笑う。
「もう、保健室くらいそんな畏まって入ってこなくても良いのに。さっきの四回ノックだって別に就職面接でも無いんだし、気軽に入ってきて良いのよ?」
「性分なもので」
「だいぶ生きづらい性格してるわね、貴方。それで怪我とか病気でもしたの? 見た感じ、そんな風には見えないけれど……」
「いえ、ウチの担任の運上先生からここにいる雨夜美樹に会ってきてくれと言われたので来ました。なんでも俺にしか頼めないことがあるとかで」
それを聞いた秋保先生は納得顔でため息をつく。
「そういう事ね。わかったわ、ちょっと具合悪くして眠ってたところだったの。いま起こすわね」
「あ、はい」
秋保先生は椅子から立ち上がると、カーテンが引かれていたベッドに近づき、中へと入った。
「雨夜さん、ごめんなさい。ちょっと起きてくれる?」
「ん、んぅ……?」
雨夜の物らしき眠そうな声が聞こえる。声はとても可愛らしく、響きは少し幼さを感じさせるところはあったものの、鈴を転がしたような綺麗な物であり、その後にベッドからは軽い物音が聞こえた。そして秋保先生がカーテンを開けて出てくる。
「いま出てくると思うからちょっと待っててね。やっぱり寝起きだからか少し頭がボーッとしてるみたいなの」
「わかりました」
そうして待っていた時、カーテンが開いた。すると、一人の女子生徒が姿を現し、何がなんだかといった顔で目を擦っていた。
「秋保先生……一体なに、が……」
雨夜が初めましてである俺の姿を見て固まる。これが俺と雨夜の最初の出会いだった。
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