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一章 出会いは突然に、霧のよう

2話 観光は突然に始まる

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「あっ、あの・・・」

何か聞きたげだ。
「ん、何かな?」
「ほんとに助かりました
お、お名前はなんて?」
「あ、僕の名前は、ギブホネイパソス」
「パソス・・・ 」
「君は何ていう名前なんだい?」
特段聞きたい訳ではなかったが、流れ上聞いてしまった。

「私の名前は、グランドマタナルリス」
見た目年齢16~18歳の彼女、
彼女の名前はグランドマタナルリスと言うらしい。

「そうか、ルリス、兎に角ああいうこともたまにはあるから、あまり落ち込むなよ
僕からアドバイスできるとすれば、話しかけるにしても人の顔を見て判断した方がいいよ」

「顔?」

「あ、そうだ
人の顔を見ればなんとなくは分かることがある、急いでいるのか、余裕がありそうなのか、観光案内されたそうな人なのか」

まじまじと彼女は私を見ていた。
大したことは言ってないが、
意外と言葉が刺さったのだろうか、

「うんうん」

そんなにうんうんすぐ洗脳されそうな。
「だから、そいう人に絞ったほうが多分効率もいいし、今回みたいなことは起こりにくいはずだ」
「そうですよね、勉強になりました
今度からそうします」

素直な性格なのか、いいことではあるだろう。
少し騙されたりしないかとか心配になるが。

「でも私にそれできますかね」
「まぁすべてうまくやろうとしなくていいんじゃないか、意識するだけでもいいと思うよ」
僕はなにを教えているんだ、
出会ったばかりの少女にと思ったが。

「私頑張ります」

真っ直ぐな目で僕を見ていた。
そして、どうやら気持ちも落ち着いてきたみたいだ。

「あのどこから来られたんですか?」
「僕は、ルーキルという町から来たんだ」
「ルーキルて結構遠いところでしたよね?」
「アルベルクシミスには観光で?」
「いや、どちらかというと、仕事かな
古い文献を読みたくてね、一応何度か仕事で来たことはあるんだよ」

ネットに情報が上がる現代でも手に入らない情報がある、大変だが足を使って手に入れる必要があることもある。

「そうなんですね、たしかにとても古いものがこの町は多いですからね」
なんだかんだ他愛のない会話が続いた。

「君はその仕事をして長いのか?」
「ここ2,3年ですかね」
2,3年…
「そうか、まだまだ大変なことはあるだろうけど頑張ってな」
励みになるか分からない言葉を彼女に渡した、僕なりの励ましの精一杯。

「じゃ、そろそろ気持ちも落ち着いただろう、そろそろ行くよ」
「ありがとうございました
ほんとに助かりました
私なかなかいつも助けてくれる人いなくて、ほんとに嬉しかったです」

普段協力する人間もいなくこの性格だといささか心配だが、まぁあまり長く関わっても。
「いやいや、気にしなくいいよ、それじゃ」
彼女は少しもじもじした雰囲気だった。
「あ、あの!良かったらお礼させてください
私観光案内します
お仕事でも少しだけならいいですよね」
「いや、いいよお礼なんて…」
彼女の顔を見てると何故かまた泣き出しそうな雰囲気で。
「……」

「あ、と思ったけど、やっぱり今日はどうせ仕事もしないし、案内してもらおうかな」
「はい、ぜひ!案内させてください
あ、でも何度か来たんだったらもうほとんど見たことあるんですかね、
私マニアックなとこも知ってますけど」
「あ、いや何度か来たんだが、実は殆ど観光ぽいことはしてなくてね、どこ見てもそこそこ新鮮さはあるよ」
「なるほど」

やっと泣きやんだのに泣かせたくない、というのも無くはないが、単に彼女の悲しい顔を見たくなかったということも多少ある。
そしてこの流れを明確に説明しにくい、
なんとなく流れでそうなった。
がなってしまった手前取り消せない。
まぁ仕方ないか。

と言っても今日はまぁほんとに、ここにつくことが目的だったわけだし、
あとは自由時間だから、こいう日もいいだろう。

なんなら少しはぶらぶらしようかとも考えていたし、ほんの少しだが。
、一石二鳥みたいな感じだ。
と色々正しい道であるかのように考えてゆく。
でも別に正しくなくてもいいじゃないか。

しかしあまりない経験だな。
こいう出会いと縁というか。
貴重な経験なのかもしれない。
「まぁじゃ行くか、どこから案内してくれるのかな?」
「えっとまず、アデペルトにいきましょう!やっぱ観光といえば一番人気の場所ですから」
なんだかさっきより顔が明るくなった。
何はともあれ、これで良かったわけだ。
実際何回か来たことはあるが観光なんて殆どしてないのだから、いい経験だ。
「じゃそれで」
そうして二人座っていたベンチから移動を始めた。

駅を出て、
彼女がこっちだ指差す方へ歩き出す。
途中他愛もない会話をしつつ、
僕たちは観光名所のアデペルトへ向かった。
車で数時間かけないと辿り着けないほど遠くもない場所にあった。
アルベルクシミスはそもそも大きい町ではない。
町中を走るローカル電車で回るだけでも一通りなら見れるぐらいだ。
それでも一応人口200~300万人は住んでいるから、結構な密集地で、人が暮らす、人気な街ではあるだろう。
僕たちはローカル電車に乗って移動をした。
僕たちの居るホームから、
乗り換えられるローカル電車である。
因みにだがアデペルトへは歩こうと思えば、
歩けるかなと言う距離みたいだ、彼女いわく。
「私、アデペルトはこの街の中でも結構好きなんですよ、とてもキレイていうわけじゃないけど、なんだか元気をもらえて、是非見てほしいです」
「そうなのか、確か女性の銅像があるんだったか」
「そうなんです、それがとても神々しいというか、なんだかすべてが落ちついて勇気が湧くというか」
女性の銅像。
確か1000年程前にできたものとか言う話だったか。
この街ができたときに未知の病が流行った際、それの駆除一番に積極的に取り組んだ一人だとか言う昔話。
英雄のような存在なのだろう。
それを称えて当時の人が作ったとか。
「それは楽しみだ」
「はい、もうすぐでつきますよ!あそこを右に曲った先です」
二駅先で降り、
着いた駅から、
最初の大通りを数メートル歩いて、
右に曲がった後、今まで出てこなかった
みあげ屋が道に多くあった。
「このあたりはすごい賑わってるんだね」
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