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27.顔合わせ

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 やっぱり、あれから兄に説教をされた。
 
 説教の内容としては、危機感のなさについて、知識の不足について、そして・・・シリウスが、婚約者の兄だから、あまり口論をさせるなと言う内容があった。


 リーディアは、彼らの口論なんていつものことではないのか、仲が悪いのは兄のせいであり、兄が自分だけのせいにすることを不満に思った。

 リーディアだって、シリウスが自分に対して皮肉を言ったりする原因が、兄だという事を言ったことはないし、言う気はなかった。


 リーディアの思いが報われない原因は、大半が兄にあると思っている。2人が犬猿の仲でなければ、シリウスの妹と婚約しなければ、リーディアの恋は実っていたのではないか。つい、もしもを考えてしまう。

 シリウスへの思いを知らない兄に対し、そんな思いから、口答えをしてしまった。

 兄は、怒りはしなかったが、いいかえした事で、黙ってしてしまった。沈黙にいたたまれなくて、それから・・・兄とはまともに会話をしていない。


 それから、学園でレティシアと話をしたが、シリウスとの事は、助けて貰った事くらいしか話していない。気恥ずかしいのもあるが、言える内容ではなかったことも、理由である。
 
 レティシアが、兄と婚約したからシリウスとの可能性がなくなったとは、思わないのだが、兄に対しては思ってしまう事を不思議に感じた。


 兄と話をしなくなって数日後、父から辺境伯との、婚約の打診をされた。一応お断りしようとしたが、顔合わせだけでもと言われた。
 父からのお願いなので顔合わせだけは了解し、あちらのことを知るため、あちらの領地で行われることとなった。
 それには父も兄も同行してくれている。


 馬車の中で、兄は何やら言いたそうだったが、あえて話しかけはしなかった。
 父は、辺境伯とは手合わせをした事があるようで、素晴らしさを語っていた。だが、あまり興味は湧かなかった。

 実際に辺境伯のライナス様とお会いし、見た目は金髪で肌は日に焼けて男らしくて、顔も整っていているが、やはり興味は湧かなかった。
 
 自分のタイプは、男らしい人ではないのだなと、つくづく思う。


 2人で散歩に行かされ、彼は私に婚約を考えてほしいと言った。返事が出来ずに俯いてしまうと、思う人でもいるのか聞かれた。

 それにも返事ができないでいると、彼は魔物の対処と、跡取りさえ産んでくれれば、愛人を持とうが、何をしようがいいと言った。
 しかしそれは私とは向き合う気が、彼にとってないのだと、冷めた関係しか築けない夫婦になるのは明白だった。


 例え、私に思う人がいたとしても、結婚をするなら、愛ある生活をしたいと思う。それなりの努力をして、歩み寄りたいと。
 だがライナス様は、結婚に愛などは求めていないようだ。彼の言葉を聞くかぎり、彼が必要なのは、戦えて跡取りを産む妻。自分は彼にとって都合がいいだけの道具にすぎないのだなと感じた。

 「君の父上は、私を評価してくれているし、この条件は君とっても良いのではないか。すぐに返事をくれとは言わない。君が学園を卒業するまでには、返事がほしいと思っている」


 父は馬車の中で、ライナス様を高く評価されていて、私の為に選んでくれたのだとわかっている。
 
 けれど、ライナス様には一言自分の意思は伝えておきたいと思い、顔をあげた。
 

「私のお慕いしている方は、決して愛人になどにはなりません。私の思いは報われる事がないと思っています」
 しっかりと、ライナスの目をみて、自分の好きな人は愛人になど、収まる方ではないと伝える。
  

「それは、相手には君の思いは伝えていないと言うことだな。報われなくとも、思いを伝えてから、私に嫁いできても構わない。辺境に来るのだ。噂も気にすることもないだろう」
 ライナス様は、はっきりと物をいう人のようだ。私にさっさと告白して、振られてこい。振られた女でも嫁にもらってやる。振られた噂など、辺境には届かないとおっしゃっている。


 少し、いや・・・だいぶむかっとした。そのように言う人に嫁いでこようなど思うわけがないではないか。

「私は愛がない結婚自体望みません。戦える女性でないといけないのが理由なら他にも女性はおります。道具扱いな言い方をされると、信頼すら築けませんし、そんな方と一緒に戦うと危険だと思います」


「女性は辺境になど来たがらない。戦える女性も条件が合うものは少ない。君が愛を望むなら、私はその努力しよう。君はとても魅力的だから愛は育めるだろう」

 ライナスは目を細め、リーディアを見た。その視線に鳥肌が立つ、父の元に足早に戻るのだった。
 
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