好きな人は兄のライバル〜魔導師団団長編〜【本編完結】

22.魅惑の香

　　

　リーディアは、村を通りかかり違和感を覚えた。何かがいつもと違うと･･･。

　いつもは、リーディアが来ると、子ども達が気づいて駆け寄ってくるはずだ。しかし、子ども達の姿はない。
　それどころか、静かすぎる。人の姿が一切ない。

　
　何やら嫌な予感がして、緊張が走る。

　あたりを見回し、地面に引きずられた様な、細い跡をいくつかみつけた。
　そして、まわりには花びらがちらばっている。


　その花びらは森に続いているようだ。
人か、魔物か。何の仕業にせよ、調べなくては、わからない。


　自分一人で対処はできなくても、現状を調べ、情報を持ち帰らなければと、村人達がいないこともきがかりで気が焦る。


　森の奥へ進むと日あたりがよくなっている場所に花畑があった。

　あの花は何かでみた覚えがある･･･。だが思いだせない。
　
　少し気が焦り、花畑へと一歩踏みだした時


「待てッ！！」
　

　彼の、シリウスの声が聞こえた。


　声と同時に花から花粉の様な粉が吹き出した。慌てて鼻を塞いだが、リーディアは吸い込んでしまう。
　
　吸い込んだ事で、身体が痺れ立っている事が出来なくなり、膝を着いた。倒れ込む前にシリウスがリーディアを受けとめ、魔法で結界を作る。


　その直後、結界で覆われた周りが火の海となり、花畑は焼ききられた。副団長のエミリオが業火の魔法を使ったのだった。
　

　シリウスはリーディアを火から守り、身体を支えてくれた。


「なぜ、こんな所にいる。この魔物は物理攻撃がきかない、我々がくるほどの討伐対象だ。下手をしたら餌食になっていた。こいつらの厄介さをしらんのかッ」


　シリウスは相変わらずの、鋭い視線でリーディアを睨んでくる。しかし、リーディアを助けてくれたようだった。


「まぁ、こいつらは、いつかの残党ですからね。我々が見落とした責任もあるのですから、だめですよ、一方的に責めてわ」
　シリウスの叱咤を止め、副団長のエミリオがフォローする。
　

　リーディアは言葉を発しようとするが、痺れて上手くはなせない。しかし、痺れだけでなく、身体が火照る感覚がでてきた。


　エミリオが、リーディアの様子を確かめようと、顔を覗き込んできた。
　リーディアの表情をみて、頬を赤らめる。

　
　シリウスはエミリオを見て、リーディアの状態を瞬時に把握した。リーディアの顔を自分にもたれかせ、周りに見えないようにした。


「エミリオ、その顔をなんとかしておけ。彼女はなんとかするから、お前は残党が残っていないか、念入りに確認しておけ、あとはまかせる」
　シリウスはエミリオにも鋭い視線を向けて、後始末を指示した。


「わっわかりました。ちゃんと丁重に介抱してあげて下さいよ」
　エミリオは団員達に指示をだすため、2人の側を離れた。