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第243話 魔法少女の杖は相変わらず高い
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コクリと頷く雪音さん。
「私と結婚を前提にしたお付き合いを申し込んできたのは、五郎さんですよね?」
「そうですね」
「でしたら、自分が死んだ時のことを何て口にしないでください」
雪音さんが俯いてしまう。
俺は、その可能性があると示唆しただけだが……。
「申し訳ない。以後、気を付ける」
口に出してはいけない言葉もある。
そういうことだろう。
「五郎さん。私は、どんなことがあっても五郎さんには生きていて欲しいです。だって、私も桜ちゃんも、五郎さんが居なくなったら、とても悲しいです。そういう言葉は、思っても口にしては駄目です」
「そうですね」
軽挙だった。
今後は、気を付けよう。
「分かってくださればいいです」
ジーッと俺を見上げるようにして見てくる雪音さん。
こっちの真意を計ろうとしているのだろう。
「雪音さん?」
「何でもありません!」
「はい……」
少ししてから、御店は、俺一人になる。
そして――、とても暇だ。
「はぁ、今日も暇だな――」
店の外に出て駐車場で背伸びをしながら10月の――、虫の声を聴きながら気分をリフレッシュさせる。
虫の声に耳を傾ければ、鈴虫の泣き声や、コオロギなどの秋の夜の虫の鳴き声が聞こえてくる。
俺は店の駐車場に積まれているパレットに腰を下ろして目を閉じる。
結城村は、人口200人の小さな村。
そして、月山雑貨店の周辺には店どころか家すらない。
おかげで空の星々は、振ってくると思えるくらいに綺麗に見る事が出来た。
「わんっ!」
しばらく外にいると、フーちゃんの吠える声が聞こえてくる。
「おじちゃん! そろそろ夕飯だって!」
「ナイルさんは?」
「ナイルのおじちゃんは、和美ちゃんのところで食べてくるって電話があったって」
「そうか」
それなら、仕方ないな。
店に入り壁掛けの時計を確認すると時刻は午後21時を少し回っている。
閉店の時間だ。
「それじゃ、閉店するから少し待っていてくれ」
「はーい!」
「わんっ!」
いつも通り閉店作業をしたあと、桜とフーちゃんと一緒に母屋に戻る。
母屋の玄関の戸を開けて土間から家に上がったあと――、
「ゴロウ様」
「どうかしましたか? メディーナさん」
膨大な紙幣を保管している居間の前を通ったところで、警備をしていたメディーナさんが話しかけてきた。
「出過ぎた事かと思いますが――」
「何でしょうか?」
「こちらのお金について、保管場所として良い所があります」
「それは、以前に話していた地下室を作るという?」
「いえ」
メディーナさんが頭を左右に振る。
そうなると、どこに保管するというのか……。
「異世界で保管すると言うのはどうでしょうか?」
「異世界で……」
たしかに、その発想はなかった。
今まで商品の売買には気を付けていたし、金の取引についても同様だったが、貴重品の管理などは、日本の方が安全だと思っていた。
だが、たしかにメディーナさんの言う通り、日本の紙幣については、特に異世界の人から見ても、凄いとかそういう感じではない。
つまり、殆ど価値が無いという事だ。
紙幣に価値を付与しているのは、あくまでも日本政府。
その日本政府との関わり合いがない異世界において日本の紙幣なんて紙屑同然だろう。
メディーナさんが提案してきた内容については、全面的に支持できる内容だ。
それに、日本で保管していて何かあった時に、言い逃れも出来ないからな。
「そうですね。それで、行きましょう。――ですが、すぐに保管できる場所なんて見つかるんですか?」
「ノーマン様の御屋敷があります」
「たしかに……」
そこは辺境伯に話を通せば置いてくれそうだ。
それに居間が莫大な紙幣により、使い物になっていないから家内での圧迫感も凄いし、警備の為にナイルさんかメディーナさんのどちらかを母屋に常駐させているのも人材の無駄だからな。
「それでは、メディーナさん。今日、異世界に行きます。そこで辺境伯邸へと報告をお願いできますか?」
「分かりました。それでは夕食後に、異世界に向かったあとは、ノーマン様とゴロウ様との話し合いの場をと、ノーマン様に報告しに行って参ります」
「宜しくお願いします」
「お話は終わったの? それじゃ、フーちゃん」
俺とメディーナさんとのやり取りを聞いていた雪音さんが、話が終わったのを確認すると共にフーちゃんを呼ぶ。
「わんっ!」
「今日は、ローストポークのご飯とのセットよ」
「わんっ!」
今日のフーちゃんのご飯は、ご飯は白米というよりおじやに近い。
「今日は、いつもと違うんですね」
「はい。出汁だけで今日はフーちゃんのご飯を作ってみました」
「へー」
たしかに、何時ものご飯とは全く違う。
おじやだからなのか、深皿が使われていて、多種多様な小さなミルポワされた緑葉野菜、そして張られていた出汁汁に、おじやの上に乗せられたローストポーク。
「フーちゃんのご飯が、すごいの!」
お皿の中を見た桜も、初めてのフーちゃんのご飯に目を輝かせている。
「桜も食べられるの!?」
「これは出汁だけだから……。桜ちゃんが食べても味は感じないかな?」
「そーなの?」
「そうなのよ」
「はい、フーちゃん。お手!」
「わんっ!」
「おかわり」
「わんっ!」
俺の時と違って、フーちゃんは、とても雪音さんに命令に従っている。
「ほーら。お手」
「ガルルルルルッ」
「フーちゃん、お手なの!」
「わふっ!」
「…………」
俺の扱いだけ酷いな!
たしか犬ってのは、家庭内でのヒエラルキーに敏感だと聞いた事がある。
一体、俺の順位は、月山家では何番になっているんだ?
「はぁー」
「どうかしましたか?」
「いえ。なんでも――」
さすがに仔犬に下に見られているから落ち込んでいるとは言えない俺は、誤魔化す。
「はい。食べていいわよ」
雪音さんの許可と共にガツガツと食べ始めるフーちゃん。
「それじゃ、雪音さん。夕飯の準備を手伝います」
「五郎さん、それではお皿の用意をして頂けますか?」
「分かりました」
「桜も手伝うのー!」
夕食の用意をしたあと、メディーナさんを交えて4人で食事を摂る。
「それにしても、この納豆というのは不思議な味と歯ごたえですね。ゴロウ様」
「メディーナさんは、納豆が食べられるんですね」
「はい。同じようなモノが、私が生まれ育った村でもありましたから」
「なるほど……」
夕食は、ほっけの焼いたもの。
納豆とお豆腐に大根の味噌汁と言ったもの。
「日本食というのは、美味しいですね。雪音様は、領主様の御夫人だというのに料理が得意なのも意外です」
「そ、そうですか?」
「はい」
料理を褒められた雪音さんが照れたような仕草をする。
「おじちゃん! テレビ見てもいい?」
「――ん? ご飯を食べ終わったらいいぞ」
「はーい」
桜は、せっせと夕食を食べたあと、お皿を台所へもっていき戻ってきたあと、テレビのリモコンを手にして電源を入れるとテレビがつく。
するとCMが流れた。
「『魔法少女さくら☆マジック』の杖を限定販売! 君は、魔法少女になれる! 今ならノーマル魔法少女の杖が48000円のところ! 限定商品! レアな黄金色ということで55000円!」
そんなCMが流れる。
そして、そんなCMを桜がキラキラした目で見ている。
「さあ、君も魔法少女になって宇宙からの侵略者を殲滅するのだ!」
「ぶふっ」
俺は思わずお茶を吹き出す。
どんな設定の作品なんだ……。
最近のアニメには、まったくついていけないな。
「おじちゃん、どうしたの?」
「そ、そのあれだ……」
ここは、何て聞けばいいのか。
「もしかして――」
桜が期待に溢れた瞳で俺を見てくる。
「もしかして! おじちゃんも興味あるの!?」
「興味って、魔法少女マジック&さくらのことか?」
「違うの! 『魔法少女さくら☆マジック』なの!」
殆ど同じようなモノなのでは……?
「私と結婚を前提にしたお付き合いを申し込んできたのは、五郎さんですよね?」
「そうですね」
「でしたら、自分が死んだ時のことを何て口にしないでください」
雪音さんが俯いてしまう。
俺は、その可能性があると示唆しただけだが……。
「申し訳ない。以後、気を付ける」
口に出してはいけない言葉もある。
そういうことだろう。
「五郎さん。私は、どんなことがあっても五郎さんには生きていて欲しいです。だって、私も桜ちゃんも、五郎さんが居なくなったら、とても悲しいです。そういう言葉は、思っても口にしては駄目です」
「そうですね」
軽挙だった。
今後は、気を付けよう。
「分かってくださればいいです」
ジーッと俺を見上げるようにして見てくる雪音さん。
こっちの真意を計ろうとしているのだろう。
「雪音さん?」
「何でもありません!」
「はい……」
少ししてから、御店は、俺一人になる。
そして――、とても暇だ。
「はぁ、今日も暇だな――」
店の外に出て駐車場で背伸びをしながら10月の――、虫の声を聴きながら気分をリフレッシュさせる。
虫の声に耳を傾ければ、鈴虫の泣き声や、コオロギなどの秋の夜の虫の鳴き声が聞こえてくる。
俺は店の駐車場に積まれているパレットに腰を下ろして目を閉じる。
結城村は、人口200人の小さな村。
そして、月山雑貨店の周辺には店どころか家すらない。
おかげで空の星々は、振ってくると思えるくらいに綺麗に見る事が出来た。
「わんっ!」
しばらく外にいると、フーちゃんの吠える声が聞こえてくる。
「おじちゃん! そろそろ夕飯だって!」
「ナイルさんは?」
「ナイルのおじちゃんは、和美ちゃんのところで食べてくるって電話があったって」
「そうか」
それなら、仕方ないな。
店に入り壁掛けの時計を確認すると時刻は午後21時を少し回っている。
閉店の時間だ。
「それじゃ、閉店するから少し待っていてくれ」
「はーい!」
「わんっ!」
いつも通り閉店作業をしたあと、桜とフーちゃんと一緒に母屋に戻る。
母屋の玄関の戸を開けて土間から家に上がったあと――、
「ゴロウ様」
「どうかしましたか? メディーナさん」
膨大な紙幣を保管している居間の前を通ったところで、警備をしていたメディーナさんが話しかけてきた。
「出過ぎた事かと思いますが――」
「何でしょうか?」
「こちらのお金について、保管場所として良い所があります」
「それは、以前に話していた地下室を作るという?」
「いえ」
メディーナさんが頭を左右に振る。
そうなると、どこに保管するというのか……。
「異世界で保管すると言うのはどうでしょうか?」
「異世界で……」
たしかに、その発想はなかった。
今まで商品の売買には気を付けていたし、金の取引についても同様だったが、貴重品の管理などは、日本の方が安全だと思っていた。
だが、たしかにメディーナさんの言う通り、日本の紙幣については、特に異世界の人から見ても、凄いとかそういう感じではない。
つまり、殆ど価値が無いという事だ。
紙幣に価値を付与しているのは、あくまでも日本政府。
その日本政府との関わり合いがない異世界において日本の紙幣なんて紙屑同然だろう。
メディーナさんが提案してきた内容については、全面的に支持できる内容だ。
それに、日本で保管していて何かあった時に、言い逃れも出来ないからな。
「そうですね。それで、行きましょう。――ですが、すぐに保管できる場所なんて見つかるんですか?」
「ノーマン様の御屋敷があります」
「たしかに……」
そこは辺境伯に話を通せば置いてくれそうだ。
それに居間が莫大な紙幣により、使い物になっていないから家内での圧迫感も凄いし、警備の為にナイルさんかメディーナさんのどちらかを母屋に常駐させているのも人材の無駄だからな。
「それでは、メディーナさん。今日、異世界に行きます。そこで辺境伯邸へと報告をお願いできますか?」
「分かりました。それでは夕食後に、異世界に向かったあとは、ノーマン様とゴロウ様との話し合いの場をと、ノーマン様に報告しに行って参ります」
「宜しくお願いします」
「お話は終わったの? それじゃ、フーちゃん」
俺とメディーナさんとのやり取りを聞いていた雪音さんが、話が終わったのを確認すると共にフーちゃんを呼ぶ。
「わんっ!」
「今日は、ローストポークのご飯とのセットよ」
「わんっ!」
今日のフーちゃんのご飯は、ご飯は白米というよりおじやに近い。
「今日は、いつもと違うんですね」
「はい。出汁だけで今日はフーちゃんのご飯を作ってみました」
「へー」
たしかに、何時ものご飯とは全く違う。
おじやだからなのか、深皿が使われていて、多種多様な小さなミルポワされた緑葉野菜、そして張られていた出汁汁に、おじやの上に乗せられたローストポーク。
「フーちゃんのご飯が、すごいの!」
お皿の中を見た桜も、初めてのフーちゃんのご飯に目を輝かせている。
「桜も食べられるの!?」
「これは出汁だけだから……。桜ちゃんが食べても味は感じないかな?」
「そーなの?」
「そうなのよ」
「はい、フーちゃん。お手!」
「わんっ!」
「おかわり」
「わんっ!」
俺の時と違って、フーちゃんは、とても雪音さんに命令に従っている。
「ほーら。お手」
「ガルルルルルッ」
「フーちゃん、お手なの!」
「わふっ!」
「…………」
俺の扱いだけ酷いな!
たしか犬ってのは、家庭内でのヒエラルキーに敏感だと聞いた事がある。
一体、俺の順位は、月山家では何番になっているんだ?
「はぁー」
「どうかしましたか?」
「いえ。なんでも――」
さすがに仔犬に下に見られているから落ち込んでいるとは言えない俺は、誤魔化す。
「はい。食べていいわよ」
雪音さんの許可と共にガツガツと食べ始めるフーちゃん。
「それじゃ、雪音さん。夕飯の準備を手伝います」
「五郎さん、それではお皿の用意をして頂けますか?」
「分かりました」
「桜も手伝うのー!」
夕食の用意をしたあと、メディーナさんを交えて4人で食事を摂る。
「それにしても、この納豆というのは不思議な味と歯ごたえですね。ゴロウ様」
「メディーナさんは、納豆が食べられるんですね」
「はい。同じようなモノが、私が生まれ育った村でもありましたから」
「なるほど……」
夕食は、ほっけの焼いたもの。
納豆とお豆腐に大根の味噌汁と言ったもの。
「日本食というのは、美味しいですね。雪音様は、領主様の御夫人だというのに料理が得意なのも意外です」
「そ、そうですか?」
「はい」
料理を褒められた雪音さんが照れたような仕草をする。
「おじちゃん! テレビ見てもいい?」
「――ん? ご飯を食べ終わったらいいぞ」
「はーい」
桜は、せっせと夕食を食べたあと、お皿を台所へもっていき戻ってきたあと、テレビのリモコンを手にして電源を入れるとテレビがつく。
するとCMが流れた。
「『魔法少女さくら☆マジック』の杖を限定販売! 君は、魔法少女になれる! 今ならノーマル魔法少女の杖が48000円のところ! 限定商品! レアな黄金色ということで55000円!」
そんなCMが流れる。
そして、そんなCMを桜がキラキラした目で見ている。
「さあ、君も魔法少女になって宇宙からの侵略者を殲滅するのだ!」
「ぶふっ」
俺は思わずお茶を吹き出す。
どんな設定の作品なんだ……。
最近のアニメには、まったくついていけないな。
「おじちゃん、どうしたの?」
「そ、そのあれだ……」
ここは、何て聞けばいいのか。
「もしかして――」
桜が期待に溢れた瞳で俺を見てくる。
「もしかして! おじちゃんも興味あるの!?」
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