102 / 105
第102話 聖女なんて知りませんけど?(2)
しおりを挟む
翌朝、宿でメルサさんが作ってくれた日本食を食べて市場で掘り出しモノがあればと思い外出しようと扉の取っ手に手をかけたところで、『――ドンドンドン!』と強い力で扉が叩かれた。
まだ朝方だというのに……。
大きめの音だったのでメルサさんも、すぐに表へと通じる扉――、私が立っている方へと小走りで向かってきた。
「メルサさん、お客さんみたいですね」
「そうなのかしら?」
私の言葉にメルサさんは浮かない表情を見せる。
その間にも扉は何度も叩かれ、音に気が付いたのかアネットさんやユーリエさん達も上の階から降りてきた。
「どうしたんだ? うるさいな」
「エミはん、おはようさん」
「お二人とも、おはようございます。何だか、お客様みたいなのですが……」
「ユーリエ」
「分かっとる」
二人は、すぐに階段を上がっていくと武器を手に戻ってくると何を思ったのか臨戦態勢に。
「エミは、後ろに隠れていろ。扉をノックだけして名乗らないのはおかしいからな」
「は、はい」
アネットさんに促されるようにして、私はアネットさんとユーリエさんの後ろに移動する。
「いま開けますね」
開錠し扉を開けるメルサさん。
扉の向こうには、白い甲冑を着た女性達が立っていて――、私以外の全員が困惑しているを感じてしまう。
それもそのはずで、女性だけで構成された騎士団というのは、滅多に見る事はできないから。
セルトラ王国近衛騎士団所属、百合乙女部隊。
普段は、主に妃や王女の男性が立ち入る事を禁止されている場所の警備を任されている人達。
「朝早くから失礼します。こちらにエミという女性が泊っていると聞きましたが、いまは宿泊中でしょうか?」
「エミさんですか?」
いまだに何が起きたのか分からず固まっているメルサさんは再度聞き返していた。
「そうなります」
「えっと……」
困った様子で、こちらを見てくるメルサさん。
それに釣られるかのように女性騎士も私達の方を見てくる。
すると、ツカツカと甲冑を鳴らしながら私の前まで来て膝をつくと、私を見上げてきた。
「アマーリエ・フォン・オイレンブルグ様。ようやく――、ようやく、御姿を拝見する事が……発見することが出来ました……」
「えっと……どなたでしょうか?」
「私です! アマーリエ様のお部屋前を警護しておりましたステラです! ステラ・フォン・テリアルです!」
そこまで言われて、ようやくテリアル子爵令嬢の方だと思い出す。
でも……。
「えっと、人違いなのでは?」
「何をおっしゃいますか! 私が、アマーリエ様を見間違うはずがございません!」
まだ朝方だというのに……。
大きめの音だったのでメルサさんも、すぐに表へと通じる扉――、私が立っている方へと小走りで向かってきた。
「メルサさん、お客さんみたいですね」
「そうなのかしら?」
私の言葉にメルサさんは浮かない表情を見せる。
その間にも扉は何度も叩かれ、音に気が付いたのかアネットさんやユーリエさん達も上の階から降りてきた。
「どうしたんだ? うるさいな」
「エミはん、おはようさん」
「お二人とも、おはようございます。何だか、お客様みたいなのですが……」
「ユーリエ」
「分かっとる」
二人は、すぐに階段を上がっていくと武器を手に戻ってくると何を思ったのか臨戦態勢に。
「エミは、後ろに隠れていろ。扉をノックだけして名乗らないのはおかしいからな」
「は、はい」
アネットさんに促されるようにして、私はアネットさんとユーリエさんの後ろに移動する。
「いま開けますね」
開錠し扉を開けるメルサさん。
扉の向こうには、白い甲冑を着た女性達が立っていて――、私以外の全員が困惑しているを感じてしまう。
それもそのはずで、女性だけで構成された騎士団というのは、滅多に見る事はできないから。
セルトラ王国近衛騎士団所属、百合乙女部隊。
普段は、主に妃や王女の男性が立ち入る事を禁止されている場所の警備を任されている人達。
「朝早くから失礼します。こちらにエミという女性が泊っていると聞きましたが、いまは宿泊中でしょうか?」
「エミさんですか?」
いまだに何が起きたのか分からず固まっているメルサさんは再度聞き返していた。
「そうなります」
「えっと……」
困った様子で、こちらを見てくるメルサさん。
それに釣られるかのように女性騎士も私達の方を見てくる。
すると、ツカツカと甲冑を鳴らしながら私の前まで来て膝をつくと、私を見上げてきた。
「アマーリエ・フォン・オイレンブルグ様。ようやく――、ようやく、御姿を拝見する事が……発見することが出来ました……」
「えっと……どなたでしょうか?」
「私です! アマーリエ様のお部屋前を警護しておりましたステラです! ステラ・フォン・テリアルです!」
そこまで言われて、ようやくテリアル子爵令嬢の方だと思い出す。
でも……。
「えっと、人違いなのでは?」
「何をおっしゃいますか! 私が、アマーリエ様を見間違うはずがございません!」
130
お気に入りに追加
680
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。
なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。
そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。
そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。
クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
【完結】経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女イデアよ、もう祈らなくとも良くなった」
ブラークメリル王国の新米国王ロブリーは、節約と経費削減に力を入れる国王である。
どこの国でも、聖女が作る結界の加護によって危険なモンスターから国を守ってきた。
国として大事な機能も経費削減のために不要だと決断したのである。
そのとばっちりを受けたのが聖女イデア。
国のために、毎日限界まで聖なる力を放出してきた。
本来は何人もの聖女がひとつの国の結界を作るのに、たった一人で国全体を守っていたほどだ。
しかも、食事だけで生きていくのが精一杯なくらい少ない給料で。
だがその生活もロブリーの政策のためにリストラされ、社畜生活は解放される。
と、思っていたら、今度はイデア自身が他国から高値で取引されていたことを知り、渋々その国へ御者アメリと共に移動する。
目的のホワイトラブリー王国へ到着し、クラフト国王に聖女だと話すが、意図が通じず戸惑いを隠せないイデアとアメリ。
しかし、実はそもそもの取引が……。
幸いにも、ホワイトラブリー王国での生活が認められ、イデアはこの国で聖なる力を発揮していく。
今までの過労が嘘だったかのように、楽しく無理なく力を発揮できていて仕事に誇りを持ち始めるイデア。
しかも、周りにも聖なる力の影響は凄まじかったようで、ホワイトラブリー王国は激的な変化が起こる。
一方、聖女のいなくなったブラークメリル王国では、結界もなくなった上、無茶苦茶な経費削減政策が次々と起こって……?
※政策などに関してはご都合主義な部分があります。
勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。
八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。
パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。
攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。
ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。
一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。
これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。
※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。
※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。
※表紙はAIイラストを使用。
奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる